見ないことにしていたのは
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
ただいま~ってのも、おかしな話しだけど…。
私は自分の入院している病室に戻ろうと、扉前でちょうど母親が医者とが病室から出て来るところだった。
驚いたことに、母親は今にも倒れてしまいそうなほど憔悴していた。
2人のあとをつけて行くと、どうも医者の部屋らしいところに消えた。
もちろん覗き見は続けてる私だけど。
「先生、あの子は、蒼子は助かるのでしょうか?」
母親の必至な様子に、一瞬の沈黙が流れる。
「今はまだ何とも…ただお嬢さんが生きたい、そう思わないとこのまま意識不明ということも…」
医者の言葉に母親は急に泣き出した。
何度も私の名前を呼ぶ母親。
こんな母親を見たのは、初めてだった。
いや、前にも見たことがあ…る?
いつ?
私は記憶の引出しをひっくり返した。
あっ、そうか。あれは幼稚園に入ったばかりの頃…。
その日は確かスイミングスクールの日で、嬉しくて早く泳ぎたくて仲良しの女の子とプールサイドを走っていて、足を滑らせて、転んで頭を打ったんだ。
確か…3日間くらいの意識不明だった…。
気がついたときには、目の前に泣きじゃくる母親とホッとした顔の父親がいた。
あの時と同じ?
また母親は私のために泣いて、ずっとここにいたのだろうか?
医者は医者らしく、
「お母さんも1度家に戻って、ゆっくり休んだらどうですか?あなたの方がまいってしまいますよ。お嬢さんが入院してからずっとここにいるのですから…」
母親は激しく首を振り、
「いいえ、いいえ。あの子が苦しんでいるのに、寂しがっているのに、生きたいと思っていないのは、もしかしたら私のせいかもしれないのに、こんな時に自分の心配なんて…」
一層激しく泣き出す母親を見て、
この人がこんなこと思っていたなんて…。
だけど、次の瞬間聞こえるはずがないのに、私は叫んでいた。
『今更なに言ってんのよっ。誰のせいで私が寂しい思いしてると思ってるのよっ、誰のせいで人を信じる事が出来なくなったと思ってんのよっ。誰のせいで、誰のせいで…』
私は気づかずに泣いていた。
ホントは、誰かに愛されたかった、誰かを好きになりたかった。
だけど、どうすれば愛されるのか、好きになれるのか私にはわからなかった。
ホントは、素直になりたかった。自分に素直になりたかった。
ホントは、恭子を鬱陶しく思いながらも私の世話をやいてくれるのが嬉しかった。
こんな私に話し掛けてくれるのはあの子だけだったから…。
ホントは、初めから佑太が気になっていた。
笑顔が好きだった、だけど私はあの笑顔を曇らせることしか出来ないと思った。
だから気にしないフリをした。
ホントは、ホントは…。
私は今までに、いくつの嘘をついてきたのだろう。
いくつのホントを隠してきたのだろう。
他人にも、自分にも…。
フラフラと1人病室に戻ると、久しぶりに自分の姿を見た。
包帯はすでに取れていて、酸素マスクも外れていた。
ただ何年もかけて、伸ばした栗毛色の長い髪はすっかり短くなっていた。
顔に傷はなくて、綺麗なものだった。
本当にただ眠っているだけとしか思えない。
いつでもパチッと瞳を開きそうだった。
たぶん、幽体の私が生きたいと思えば、願えばきっと瞳は開くのだろう、と思う。
けど…。
今更私が目覚めたところで、誰が喜んでくれるんだろう?
ただのやっかいもののこの私を…。
私は、誰かを好きになりたい、素直になりたい、そう思えたのに、素直に生きたいとはどうしても思えなかった…。
コンコン。
病室のドアをノックする音が突然響いた。
私はビクッとして、ドアを振りかえった。
『驚かすなよ、かーさんだろ?』
って、かーさんがノックなんかするわけないじゃんっ。
1人ツッコミをしながら、
『あぁ、医者か看護婦か』
と勝手に納得した私だったが、静かに開いたドアから入ってきた人を見て、心底驚いた。
なんで~~~~!?!?!?
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




