7:その真意について
ついていった結果夢花の足が止まったのは恒例のあの場所だった。
ここに来るまで夢花は俯き、一切言葉を発さずに歩いていた。それほどまでに何かがあるのか。残念なことに俺にはそれが何か察することができない。
「どうかしたの?夢花さん」
夢花は黙ったままこっちに振り向いた。
今日はなぜか目が合わない。それにさっきから手に力が入ったままだ。
「そ、その、あの人とは、あまり関わらないでほしい・・・・・・」
「あの人っていうのは、陽波さんのこと?」
「・・・・・・うん」
陽波さんに関して何かあると思ったがそうきたか。
彼女と俺は今日出会ったばかりだ。でも、夢花は同じクラスでそういうわけではないだろう。少なくとも初日から二人は話題になっていたのだから、休んでもないだろうし、お互いのことは認識していたはず。
だから、夢花なりに思うところがあるのか?
今の夢花は、なんというか、とても切なく感じる。微かに震えた声が、手に加えられている力が、どことなく恐怖のようなものを感じさせた。夢花は怯えている、そんなふうに感じる。
「・・・・・・わかった」
「え?」
夢花は驚いたように顔を上げた。
関わらないでほしいといっても、陽波さんはまず違うクラスだし、関わること自体が少ないだろう。だから了承したって問題ないはずだ。周りには常に人がいそうな、話しかけるだけでも大変そうな人だしな。
それに、夢花を悲しませたくないって、安心させたいってそんな気持ちに駆られてしまった。
「理由は聞かないの?」
「別にいいよ。それとも聞いてほしいのか?」
「それは・・・・・・」
そりゃ、気になってはいる。でも、そんなこと関係ないほど俺の心は決まっていた。我ながら変なことだな。
ま、普通にしていれば関わることがなさそうな人だから、大して変わらないってだけだな。
「そんな気にしなくていいよ。約束は守るし。それよりご飯食べないか。お腹空いてさ」
「ふふっ、そうだね」
久々に笑ったな。久々なんて変だけど、それだけ思い詰めた顔をしていたからな。笑顔になってよかったよ。
二人いつもの場所に座って弁当を取り出す。
きっとこの約束は忘れることもないけど、気にすることもないだろう。ただ俺は普段通りにしていればいいのだから。普段って言っても学校生活始まったばかりなんだけどな。
ただ、一つ気がかりなのは、陽波さんが俺に興味を持って今日話しかけてきたってところだな。
ただの杞憂であればいいんだが。
放課後となったので帰りの支度を始める。
うん?なんか急に盛り上がり出したな。なんか塊ができてるし、一体どうしたんだ?
まぁ、いい。さっさと支度を済ませよう。筆箱、教科書、あとは・・・・・・ってそれぐらいか。
カバンを持って教室を出るべく立ち上がる。それとほぼ同時に教室内の視線は昼休みと同じような視線の動きを感じた。みんなの視線の先にいるのは陽波真矢。また淡々とこっちに近づいてきている。
俺より後ろで集団はできていたし、その中心にいるせいで人の壁と座っているせいで気づかなかった。盛り上がっていたのもこれか。
「こんにちは、清原さん」
「どうかしました?」
「・・・・・・いえ、私、楽しみにしているんですけど、今度の日曜日、清原さんもいらっしゃるのかと思いまして。ほら、昼休みは返事ができていなかったでしょう」
あー。忘れてたな、このこと。陽波さんは覚えてたのか。それでわざわざ聞きに来たと。
夢花との約束もあるし、一応断っておくか。ていうか聞きにこなければそのまま忘れ去られて、行かないっていちいち言わなくて済んだのに。それに、陽波さんが楽しみにしている情報別にいらなくない?
「あー、その日は予定があって無理そうなんだ」
あれ?また顔に違和感があったな。こうも定期的にあると気のせいじゃないような気がしてくるけど、俺何かした?
「そうですか。それは残念ですね。その予定って言うのは?」
「プライベートなことなのでちょっと」
「そうですかそれはすみません」
陽波さんはそのまま元の位置に帰っていく。
断っちまったな。まぁ、もうもう戻れないし仕方がない。
「あっ」
少し高い音がして、その方を向くところころと何かが足元に転がってきた。それをしゃがんで拾い上げる。
鉛筆?シャーペンとか、ボールペンじゃなくて鉛筆か。三Bと書いてある。
「君の?」
鉛筆を差し出しながら尋ねる。
転がってくる直前に声を出していたし、筆箱とノートを机の上に置いているし、この子ので間違いないだろう。
えっと、名前は確か、小山さん。下の名前は覚えてないや。
髪の長い女子で目元まで髪があるせいでよく顔が見えない。
「あ、ありがと」
おずおずと手を伸ばし鉛筆を受け取る。
「あ、あなたも、い、行かないんですか?」
「・・・・・・?」
「あ、あの。なんでもないです」
俺が何か言うよりも先に小山さんは顔を下にしてしまった。
行かないっていうのは日曜の親睦会のことだよな。あなたもってことは小山さんも行かないのか?まぁ、理由は人それぞれあるだろうし、詮索するものじゃないな。
荷物を持って教室を出る。
「拓斗」
廊下には夢花が立っていた。
今日はここで待っていたのか。まぁ、校舎の出口でも、教室前でも大して変わらないか。
人目を集めながらも二人並んで廊下を歩く。
「そういえば、日曜のはどうするの?」
学校の外に出ると夢花は急に下を向いて尋ねてきた。
「親睦会みたいなやつか」
「うん」
「覚えてたのか。・・・・・・断ったよ。約束もあるしな」
「よかったの?」
「別にいいよ。学校はまだ始まったばかりだ。クラスメイトと仲を深める機会はまたあるだろ」
「・・・・・・そうだね。ありがとう、約束守ってくれて」
「例を言われることじゃない」
ほんとに大したことはしてないし。約束したんだからそのあとどんなことがあっても俺にも必然的に責任は出てくる。
「それにしても陽波さんが来るの知ったんだな」
昼休みの時もさっきもギリギリ夢花には聞こえてなさそうな距離だった。一体どこで知ったのか。
「うん。さっき三組の出入り口で話してる人達がいたから」
そんな奴らがいたのか。まぁ、違うクラスの美人がわざわざ来るとなると噂も広がるし、盛り上がりもするか。
「ねぇ、日曜日ってほんとは空いてるよね」
なんでそんな自信満々な顔で聞けるんだ。そんな知ってるけど一応確認みたいな。まぁ、一応空いてるけどさ。
「そうだけど、どうかした?」
「そ、その、よかったら・・・・・・」
夢花は急にもじもじし出した。
なんだ唐突に。何かそんなに緊張すること言うつもりなのか?
「よかったら、私の家に来ない?」
「え?」
どゆこと⁉︎




