6:その違和感について
「お前、宮咲さんとどういう関係なんだ⁉︎」
昼休み。中取は俺の前に詰め寄って聞く。
はぁー。またその話題か。もういいってその話。朝来てからずっとこれだよ。休み時間になるたびに毎回聞かれる。
落ち着く時は朝登校してる時とその後例の場所で話していた時ぐらいだ。どっちにも夢花はいたから一人の時ないな、俺。
「ただの友達だ」
「ほんとかよ?じゃあ昨日の相談ってなんだったんだよ?」
別になんだっていいじゃないか。ほんとは何もないんだけどさ。なんて言えるはずもないし。
「相談事なんて他人に勝手に話すようなものでもないだろ」
「ぐぬぬ・・・・・・」
どうやら今は引いてくれるらしく中取は一歩下がる。
今日もここでは食べれそうにないな。夢花はまた来るだろうし。
夢花も今日はめちゃくちゃ質問攻めにされてそうだな。なんてったって当事者だし。
また連れ出すのは注目集めそうだから、いやそれ以前に何もしなくても集まるんだけど、今日は先に俺が動いておくか。また質問されるのもやだし。
「また宮咲さんとご飯か?」
俺が席を立つと睨みつけながら中取は尋ねる。
「またお前みたいなこと聞かれるの嫌だから移動するだけだよ」
「おい。それだと俺はまた一人で食べることになるんだぞ」
あー、それはどうしようか。
夢花に聞いてみて同席させるか?ま、勝手に俺が今日も来るだろって思ってるだけだけどな。約束なんてしてないし。
でも、今日は遠慮しとくかな。
「クラス戻って誰か誘えば?」
「しゃあないな」
中取が少し足取り重く歩いていく。
俺も行くとしますか。
あれ、みんなの視線がまた一点に集まってる。夢花が来ちゃったのか?
視線の先を追うとそこには一人の女子生徒が一際大きな存在感を放っていた。
みんなの注目を集めるほどの美人。夢花と並び立つほどの。ほとんどの生徒はその女子生徒に目を奪われている。
なるほど。この人が入学式の日に聞いたもう一人の美人。これほどの人は滅多にいないから間違いないだろう。
その美人女子生徒は周りに笑顔を振り撒きながら歩いてくる。
なんでこっちにきてる?なんか嫌な予感がする。違う、俺が自意識過剰なだけだ。他に用があるはずだ。
その相手は俺の目の前で足を止めた。
「あなたが清原さん?」
ービシッ‼︎
いっった!今『ズキッ』超えて『ビシッ』っていったぞおい!
なんだ?一瞬でものすごい痛みがきた。まだその余韻が続いてる。
入学式の日になってたのと同じような痛み。それだけはわかる。しかし、なぜ今このタイミングでまた。
「どうかしましたか?」
俺が頭を押さえていると相手は心配そうに尋ねてきた。
「あ、いや大丈夫です」
俺が答えると相手は万人受けしそうな笑顔に表情を変えた。
「それで、俺に何か用ですか?えっと・・・・・・」
名前なんだっけ?陽から始まってた気がするけど。ここ最近驚きの連続だったからよく覚えてないや。
あれ、なんか今一瞬表情に違和感があったけど、気のせいか。
「陽波真矢と言います」
「はい。陽波さん。それで何か御用ですか?」
不思議だな。このレベルの美人相手なのに全然緊張しない。代わりに頭が痛いけど。
思い返してみれば夢花と初めて会った時も緊張はしなかったな。今考えればそれだけじゃなかった気もするような、しないような。
ま、夢花に関しては初対面で言ったことがあれだったからな。
それに今回はたぶん夢花という美少女と話す機会ができて耐性みたいなのができたんだろ。つまり、夢花のおかげってことだな。緊張なんてしてもしなくても今回は大して変わらない気もするけど。
「いえ、特に用はありません。ただ、話してみたいと思っていたところに一人でいたものですから」
一人でいるって言ってもほんとについさっきまで中取といたし、わざわざこの人は教室の中まで覗いてくるんだな。何か別の用でもあったのか?
注目されるの疲れたから今は話しかけるのは避けてもらえると助かるんだけどな。
「それじゃ、行ってもいいかな?」
あれ、また違和感が。・・・・・・気のせいか。
うう、周りの視線が痛い。俺だってなんでこんなことになってるのかよくわかってないんだよ。頼むからやめてくれよ。
「・・・・・・お時間とってすみません」
陽波さんは申し訳なさそうに会釈する。
「あ、清原。前の件どうなった?」
俺が歩き始めようとすると岩田が近づいて話しかけてきた。
前の件。ああ、今度の日曜の話か。すっかり忘れてたな。自分からその話するのちょっと気が引けるからあんまり考えないようにしてたんだけど。誘って理由がおそらくあれだったし。
全然行けるんだけどどうしようか。ていうか後でもいいのに、今俺がいなくなる前に話しかけてきたってことは。
「今度みんなに遊びに行くってやつだよ」
岩田が自ら説明を始める。言い終わると顔の向きを変えた。
「あ、そうだ。今度の日曜なんだけど陽波さんもよかったらどう?」
やっぱりか。傷つく人なら傷つくぞ。
それにしてもこのタイミングしかないとはいえ、それはちょっと不自然じゃないか。
「え、私がいいんですか?」
「もちろん!」
「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな」
行けるんだな。違うクラスなのに。
おい、そこの男子生徒ガッツポーズしてるんだ?岩田もなんか満足そう顔してるし。あとで岩田は褒め称えられるんだろうな。
え?ちょっと陽波さんもチラッと見るのやめて。
「あ、ああ、清原は?」
思い出したみたいに俺に尋ねるなよ。傷つくぞ。やっぱり俺の方がおまけか。
どうしたものかな。これ俺が断っても気にしないだろうな。
「そうだな。俺は・・・・・・」
その瞬間教室内の空気が変わった。陽波さんが来た時と同じように一気に明るくなるようなそんな感覚。
夢花がこっちに向かって歩いてきていた。淡々と歩いて距離を縮める。
何かいつもと雰囲気が違う。夢花自身はどこか重さのようなものを感じる。
俺の横に来ると夢花は俺の服の袖を握る。
「行こ」
どうしてそんな縋りつくような声で言う?どうして袖を持つ手は僅かに震えている?
理由が全く想像つかない。
昨日、あれだけ見られても気にしてなかったし、岩田と話した時は特に何もなかった。ということは、ここに来るまでに何かあったか、もしくは陽波さんと何かあるのか。
「わかった」
俺は夢花に導かれるまま前に進む。
返事はしてないけど、まぁいいだろう。勝手に解釈してくれ。とにかく今は夢花を放って置けない。




