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初対面の美少女が告白してきた  作者: 粗茶の品
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5:距離感について


 教室内の全員が立ち上がり礼をすると教師は教室から出ていく。途端に周囲は明るさをまし、生徒は続々と動き出した。

 今は四限の授業が終わり、これから昼食の時間。

 みんなは一昨日と昨日でできたグループで食べたりするんだろうな。残念なことに俺はまだどこにも所属できていない。

 故に一緒に食べるような約束をしている人はこの教室にはいない。かと言って、クラスの人とあまりコミュニケーションが取れていない俺には、自分から誘いに行くのはちょっとハードルが高い。

 ま、最悪一人で食べるからいいんだけど。

 この学校、俺と同じ中学の人少ないんだよな。だから友達が多くも少なくもない、どちらかといえばおそらく少ないに分類される俺の知り合いはほとんどいない。

 このまま友達を作らなかったらこれからしんどいこともありそうだけど、機会はまたあるだろ。考えれば考えるほど友達の作り方ってよくわからないし。

 ふと窓の外を見ると空の灰色は朝よりも多くなっている。

 このままだとほんとに降るかもな。あっちの見てた天気予報の方が正しかったってことかな?


「よ、清原。元気してる?」


 名前を呼ばれて反対を向くと中取が訪れていた。


「元気だけど」


「一緒に飯食ってもいいか?」


 いや聞かれても、もうお前俺の前の席に座ってるじゃん。一緒に食べる気満々じゃん。


「クラスメイトに一緒に食べるやついないのか?」


「うるさいな。そういうお前だっていないだろ」


 はは、そうだな。いなかったな、一緒に食べるやつ。

 ・・・・・・一緒に食べる人。うーん、このクラスにはいないだろうな。別のクラスはどうだろ?まさか、まさかだよな。

 視線をずらして斜め前に見える男子を見ると急に顔の向きが扉の方を向いた。周りの生徒も続々と同じ方向に視線を向ける。中取も気になったのか周囲と顔を同じように動かした。


「あ、あれって」


 中取が少し驚いたような声を出す。俺も横目で誰がいるのかを確認した。

 やっぱりか。

 その人影は大衆の視線を連れてながらゆっくりと移動する。俺の席の横に着くと少し四角みを帯びた袋を机の上に置いた。


「どうかした?宮咲さん」


「・・・・・・」


 視線でむすっとしているのがわかる。

 もしかして苗字で読んでないからそんな視線送ってる?いや、俺ちゃんと二人の時だけって言ったよ。

 やめて、そんな目向けないで。見られてるから。ただでさえ注目集めてるのにさらに人目を呼ぶから。

 人の視線が痛いほどに向けられているのがわかる。


「・・・・・・別に。一緒に食べようと思っただけ」


「あ、あー。そういえば相談があるとか言ってたな。よし!ここじゃなんだから移動しよう。すまん、中取。また今度な」


「別にここでも・・・・・・」


「いいから、行こう」


 今は何も言わずについてきてくれ。どこに行くかは決まってないけど!

 俺が移動し始めると夢花はその後を何も言わずについてきた。その様子を見ているほとんどの顔が唖然としていたけど、今は気にしてられない。とりあえず早くここから離れよう。

 向かう場所は・・・・・・あそこでいいか。夢花が教えてくれたあの場所で。


「どうかしたの?こんなところに移動して」


 目的地に着くと夢花は不思議そうに尋ねてきた。

 今朝もゆっくり話そうと言って登校して最初に人目を避けるため訪れた場所。

 朝の説明するのも大変だった。なんとか一緒に教室に行ったのはあやふやにできたけど、流石にあれは無理だ。


「いや、あのままだと大変なことになってただろ」


「大変なことって?」


 なんだろう。夢花はもっと自分のこと見た方がいいと思うな。


「めっちゃ見られてたでしょ。あのままじゃゆっくり食べられないし、たぶん中に入って来たやつもいたと思うし。夢花さんはもっと可愛いこと自覚した方がいいと思うよ」


「可愛いだなんて、そんな」


 なんでそこだけピックアップしてるんだ。やっぱり自覚はないのか。

 何度見てもやっぱりすっごい美人だよな。そんなに詳しくないけど、可愛いと有名な芸能人と互角、下手したらそれ以上なんじゃないか?


「そんなに見られると恥ずかしい」


「あ、ごめん。悪気はない」


「全然いい。むしろ、もっと見て。私だけを見て」


 やばい。言われてるこっちも恥ずかしくなってきた。なんでそんなことすぐ言えるんだろう。


「まぁ、とりあえずご飯食べよう。そのために来たんだろ?」


「うん」


 あれ?ここって食べていいところなんだろうか?別に食べちゃいけない場所は言われてないけど。

 並んで階段に腰かけて食べ始める。


「拓斗は自分で作ってるの?」


「ああ、簡単なものだけな」


 弁当はご飯と簡単な料理が敷き詰められている。料理自体は手伝ったりしていたから、できないわけではない。かといって複雑なものはできないんだけど。


「すごい」


「夢花さんのは?」


「私も自分で作ってる。よかったら食べる?」


「遠慮するよ」


「そんなこと言わずに。あーん」


「え、ちょっ」


 夢花は卵焼きを箸で持って口に持ってくる。俺が近づきすぎないよう離れると伸びていた肘を少し曲げて卵焼きを元の位置に戻した。

 はぁ。そんな顔しないでくれよ。駄目だな、俺。ほんと、そんな顔に弱いな。

 今回はこれで勘弁してくれよ。


「え⁉︎」


 俺は自分の箸で夢花の弁当にある差し伸ばされた卵焼きを取った。目の前で一旦止めて覚悟を決めてから口へと持っていく。


「うん、美味しい」


 すごい美味しい。味付けもちょうど俺の好みの感じだ。夢花は料理がうまいんだな。


「美味しいよ」


「あ、ありがとう」


 夢花は恥ずかしいそうに顔を赤く染めて目を背ける。

 照れてるのか?あーんまでしようとしたのに食べられたら恥ずかしいのか。よくわからないけど、いざやってみるとってことかな。


「もっと食べて」


「これ以上はいいから、自分で食べなよ」


「しょうがない」


 しょうがないじゃないでしょ。自分のぶんあんまり減らしたらこのあとお腹すくかもしれないし、やっぱり自分で食べた方がいい。

 時々雑談を挟みながら箸を進めていく。

 誰かと食べるっていうのはいいものだな。なんだか美味しく感じた気がする。


「ごちそうさま」


「ごちそうさま」


 最後に手を合わせて弁当をしまう。夢花と食べ終わるタイミングはほぼ同じだった。同じようなペースで食べるタイプだったのか、それとも合わせてくれていたのか。どちらにせよ楽しく食事ができたと思う。

 食事が終わった後も少し会話を続ける。どう話に区切りをつけるのかがわからなかった。


「そろそろ戻る?」


「そうだな。結構時間も経っただろうし」


 ここには時計がないから詳しい時間はわからないが昼休みももうすぐ終わるだろう。この学校は昼休みが終わる五分前にチャイムが一度鳴るらしいがそれが鳴ってからでは少し遅いような気がする。


「じゃ、行くか」


 教室に向けて足を運び出す。


「あ、清原」


 教室の前まで着くと一人の男子生徒が話しかけてきた。えっと確か名前は岩田也彦(いわだなりひこ)。入学式の日に俺を心配してくれた親切なやつだ。


「えっと、どうかした?」


「そうそう、さっき三組で今度の休みにみんなでどこか行こうってなってさ。その、親睦会みたいな。清原も一緒にどうだと思って」


 さっきってことは俺が教室を出ていった後に決まったのだろう。その場にいなかったっていうのに誘ってくれるなんてほんと親切だな。よく見ると顔もかっこいいしこういう奴がモテるんだろうな。


「あ、もしよかったら宮咲さんも一緒にどう?」


 うん。岩田に対する好感度がちょっと下がった。

 もしかしてそれが目的だった?例えそうじゃなくても態度をちょっと考えた方がいいと思うよ。俺を誘った時より期待に満ちた顔してるからな、お前。


「拓斗はどうするの?」


 人前でも名前をしかも呼び捨てで呼ぶんだな。相手もびっくりしちゃってるよ。って今はそうじゃないな。


「それっていつ?」


「ああ、今度の日曜って話だけど」


 今日は木曜日。つまり明々後日か。日曜か。日曜なー。予定はそこまでないな。ここで抜けてるとちょっと仲間はずれ感出てきそうだし。

 でも、夢花目的で誘われてるかもしれないと思うとその誘いに乗るのなんかなー。考えすぎな気もするけど。


「予定ずらせるか聞いてみるからちょっと明日まで待ってもらえる?」


「・・・・・・そうか、わかった」


 そんな露骨にしょんぼりしないでよ。悲しくなるからさ。


「宮咲さんは?」


「一人だけ別のクラスが混じるのはちょっと」


「あ、そうだよね。ごめん」


 うんうん。さっき三組でって言ったもんな。普通なら別のクラスの人がいたらちょっと気まずい感じになるかもって思うよな。

 岩田は肩を落として教室の中に戻っていった。


「さて、どうしようかな」


「拓斗が行くなら行くんだけど」


 よかったよ、さっきその回答が出なくて。

 自分のせいとはいえ、参加するのちょっと気まずくなったな。まだちょっと先なことが唯一の救いか?

 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り響く。


「そろそろ時間か。それじゃ、また」


「うん。またあとでね」


 え、今「あとで」って言った?いちいち考えてたらキリがないな。

 とりあえず次の授業の準備しよ。




 六限まで授業が終わり、下駄箱へと向かう。

 今日から本格的に授業が始まったわけだが、初日ということでそこまで内容には取り掛からなかったな。教師の自己紹介とか、逆にこっちが自己紹介したりだとかそんなんが多かった。

 窓から外を見ると雨が降っている。夢花の予報は当たったらしい。

 今日は傘持って来てないから憂鬱だ。濡れることは覚悟しないと。

 下駄箱についたので靴を履き替え、校舎の入り口の近くに立つ。あたりを見ると、雨の中ダッシュしている人や折り畳み傘らしきものを差している人、普通の傘を指している人がいる。


「あ、拓斗」


「夢花さん。ほんとに降ったな」


「だからそう言った」


「いや、傘持って来てないからできるだけ降らないで欲しかったって話」


「私の入れてあげるから大丈夫」


 夢花は傘を差して一歩前に出る。そしてそのまま振り返った。

 今日は俺の担任がゆっくりとした人なのか忙しかったのかわからないが、最後の連絡が遅れて周りのクラスよりもだいぶ後に教室を出ることになった。だから、多少は人が少ないがそれでもいることにはいる。

 見られたらとてつもない噂が広がるだろう。もしかしたらありもしないことを言われるかもしれない。

 でも、相手の善意を無碍にするのはちょっと・・・・・・。覚悟を決めるしかないか。


「失礼します」


 夢花の横に行って傘の中に入る。

 とりあえず、校門を出るまでが勝負だ。校門を出たら、人が分かれるから多少は平気になるはず。


「あ、傘持つよ」


「大丈夫」


「でも、しんどくない?」


 身長は俺の方が高いからきっと傘はいつもより上に上げておかないといけない。

 それにこの傘じゃ、二人分は完全にカバーできないから渡してくれた方が夢花を濡らさずに済んで心持ち的に助かる。

 そのまま進んで校門を抜ける。

 やっぱり傘は俺の方に傾いている気がする。

 なんで俺は助けてもらっている側なのに、助けている側よりいい立場にいるんだ?


「やっぱりしんどいでしょ。傘貸して」


「平気だって」


「いいから」


 俺が少し強く言うと夢花は少し渋りながら傘を渡してきた。

 俺は手に持つとすかさず夢花の方にずらす。


「それじゃ、拓斗が濡れるよ」


 夢花は傾いていることに気がついたらしく、手を押してこっち持ってこようとする。


「俺は入れてもらってる方なんだから、夢花さんが広く使うべきだよ」


「でも、私は拓斗に使ってほしい」


「俺は夢花さんにちゃんと使ってほしい」


 やっぱり、根は思いやりのあるいい子なんだな。でも、ここは俺も譲る気はない。


「じゃ、じゃあ!」


 夢花は急に接近して腕にがっちりと掴んだ。ほぼ腕を組んでいる状態になっている。

 何してるんだこの子は⁉︎こんな急に。


「こ、こうすれば、被害は減らせる」


 そうだけどさ。ちょっと顔赤くするぐらいならやめたら?なんて言えるはずもないけど。

 周りに人はあんまりいないし、離してくれる気配もないから我慢するしかないか。

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