23:リベンジについて
そうだ、全部、全部思い出した。
今知ったじゃなくて、確かに今思い出した。
胸糞悪い記憶を鮮明に脳は振り返っていく。
俺はトラックに轢かれて死んだんだ。その先のことは知らない。最後にあるのは途方もない衝撃が体に加わったのだという事実だけ。もうその感覚がどんなだったのかは覚えてない。
なんでこんなことを忘れてたんだ?いや、俺が死んだのは今より先のことだ。だから知っていることの方がおかしいのか。
でも、声に出したらダメだ。あいつらに聞こえてしまう。今はとりあえずここを移動しよう。ここに俺がいたと悟らせないよう、できるだけ離れたところへ。
足跡を立てないようにその場を離れ人の多い道を歩いていく。
「ははっ」
それにしても全く意味がわからなすぎてもはやちょっと笑えてくる。
まさかあんな劇的な記憶を忘れてるなんてな。こうなった影響なのか、それとも俺が忘れたがっていたのか、その他か。
俺は一度目の記憶を取り戻した。・・・・・・もしかしたら夢花もなんじゃないか?
夢花の今回初めて会った時の反応は明らかに一度目では考えられないものだった。お互いよく話し合ったからわかる。
入学式の日夢花は初対面のはずなのに明らかに俺を知っていた。それも今の俺と同じだと考えたら俺を知っていることには納得がいく。
・・・・・・あの行動全てには納得がいかないけど。夢花とは付き合ってたりしたわけではない。あんな行動をしてくるのは今回が初めてだ。
もしかするとあの二人に関わらないでほしいと言ったのは俺のためなのか?
夢花は入学式には思い出していたのに、俺は忘れてるなんてな。俺も入学式から記憶があったとするとちょっとひどい話だ。
ごめん。あとで謝るからさ。今の俺にはやらないといけないことがある。
こんな形だけど、俺は思い出すことができた。明確に人生終わったと思うよりも前の時間に。
それでもあの瞬間はもうきっと目の前に迫っている。あの三人の会話おそらくあれは俺を嵌めようという話だ。
思い返してみれば、ずっと考えてたよ。あの時から、死ぬまで。俺はあの時どうすればよかったのか、どうすれば覆すことができたのか。
でも、何もできない。考えた末の最終の答えはいつもそれだった。
あの日、あの状態なら、だ。
今は違う。まだ、あのたちの悪い舞台は始まってない。
あの日、あいつらは俺のスマホをいつの間にか使って罠に嵌めた。だけど、俺はしばらくスマホは学校に持ってきていなかったし、今日は文化祭でスマホの使用が認められている。だから今は俺のポケットの中にある。つまり前と同じことはできない。
だけど、だ。陽波の話なら大半の聴衆にそしてその後流れる噂を知るものに疑問を与えることはできる。それに今回は手を変えてくるかもしれない。
そのまま待っていたら結局同じ道を辿る。
本当に良かったと思うよ、思い出せて。おかげで対策することができる。きっと思い出せなかったら結局何もできず同じ目にあってた。そうなればもしかしたら夢花も一度目と同じになってしまうかもしれない。
夢花がああなった理由を知らないから、例えそれが俺の考えすぎでも不安の芽は摘み取っておきたい。夢花をあんな目に遭わせるわけにはいかない。
早く手を打たないとな。じゃないとまたあいつらにめちゃくちゃにされる。あんなのは二度とごめんだ。
あんなに恨みながらどうすれば良かったのか考えていたのに忘れてたんだから俺はすごい執念深い人ではないだろ、母さん。
でも、きっとすごいがつかないだけだ。
俺はいつの間にか人生をやり直してた。
一体なぜそんなことになったかはまるで見当がつかない。
でも、もう一度チャンスを手に入れた、与えてもらったんだ。
今度はあんなので終わってたまるか!今度は絶対に勝ってやる!
目にもの見せてやるとか言ってたなあいつ。そのセリフそのままお返ししてやる!
行き交う人々の中、俺は迫り来る未来を見据えた。




