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初対面の美少女が告白してきた  作者: 粗茶の品
20/26

20:今回の文化祭について


 今日の学校は人によってはうるさいとも言いそうなぐらいに賑やかだ。

 本番に向けての最終チェックをしている生徒。本番前に様子を覗く教師。ちょっと外を見てみたらもう校門前に並んでいる数名の保護者や近隣住民など。

 なんというか、気合いの入り方が違うな。

 年に数度、学校生活でおそらく三回ほどずつしかない学校全体が参加する行事だからそうもなるだろうけど。すごく久しぶりな感じがする。

 中学の頃はもう少し小規模だったし、受験やらなんやらでそういった思い出が少し埋もれてしまっていたからだろうか。

 なんにせよ、楽しみという感情は確かにあるし、今日は楽しむしかないな。


「よーし、みんな。円陣組もう!」


 クラスの中心で林橋がそう提案してくる。するとバラバラにいたクラスメイトが林橋の方に集まっていった。

 参加しないなんて選択肢はおそらくないんだろうな。いくらこういうのが苦手な人でも。やらないとなったら引っ張ってでもやらしそうな雰囲気だし、そういう奴がいたら多少クラスの士気が下がる感じがして空気を読んでほとんどの人がやるだろう。

 集まった全員が円を描きながら肩を組み始める。たまたま林橋の近くにいた俺はその林橋と岩田に挟まれた状態になった。


「よーし!絶対成功させるぞ‼︎」


『おー‼︎』


 クラスメイトが一斉に声を上げる。

 肩を解き始めるとチャイムが鳴り響いた。文化祭始まりの合図だ。チャイムが聞こえ出すと最初に当番の人を残してほとんどの人が教室を出ていく。

 俺の当番は後だし、さっさと行くとしますか。

 一組はお化け屋敷だったか。夢花も当番は後の方らしく当番の時間が来るまで一緒に回ろうということで集合することになってる。

 確か当番は俺の方が先で夢花はちょうど入れ替わりだったはず。

 集合場所はいつも昼食を食べてる辺りでって言ってたけど、一斉に始まって必然的にほとんど同時に移動する訳だから、途中で会ったりしないものかね。

 見た感じ、夢花はいなさそうだな。人が多くてあんまり先まで見えないけど、いなさそうな感じだ。

 一組からも人は出てる気がするから、いてもおかしくないと思うんだけど、見当たらないな。

 仕方ない、集合場所に行くとしますか。・・・・・・何もなければいいけど。

 ところどころ溜まっている人を避けながらいつもより人の多い廊下、階段を移動する。進んでいるうちに一般のお客さんもだんだん多くなってきた。

 いつもなら人がいない通り道もちょろちょろ人がいる。それでも人は全然少ない方だな。ほとんど使われてる教室がないのか。

 そういえば、あの近くで近くでどこかのクラブの展示があるみたいなことは書いてなかったな。ほとんど放置なのかこの辺り。

 目的地のすぐ近くに来るとぱったり人がいなくなり、夢花の姿がすぐに見えてきた。


「お待たせ。早いな。待たせた?」


「今来たとこ」


 本当だといいんだけどな。それにしても早くない?移動してた感じもなくその場に佇んでいたけど、チャイムがなった後に移動開始したよね?


「そっかなんかごめん」


「なんで謝るの?」


 なんでだろうね?気にしなくていいと思うよ。


「それより、どこ行く?」


「どこでもいいよ?」


 一番困る回答だな。俺もよく使うけどね、それ。

 俺もどこでもいいんだよな。でも聞いてもあんまり言ってくれなさそうだし。正直率先して行きたいと思う場所ないんだよな。

 夢花の様子もどこか行きたそうな感じはしてないし、見せてくれないし。俺の察しが悪いのかな。


「じゃあ、とりあえず展示見ていくか」


 始まったばっかりだから売店とかそういう食べ物系より展示とか参加型のものとかの方がいいだろ。

 間違ったことは言ってないと思うけど。大丈夫だよな。


「わかった」


「遠慮しなくていいから、何かあったらちゃんと教えてくれよ」


「うん」


 今は信じるとしよう。言葉通り何かあれば言ってくれるといいけど。

 一番近いのどこの展示だったかな。・・・・・・どうしようこれで全く興味無さそうなやつだったら。



「はい、これ景品です」


 二年生の人から両手で袋に入ったパンを渡される。何やらゴマみたいなのが中心に集まってるし、おそらくあんぱんだ。

 このクラスは射的屋がコンセプトらしく、景品を直接打つのではなく、命中し倒れた的に書いてある点数で景品が決まるらしい。

 にしてもなぜあんぱん?射的の景品がなぜパンなんだ?・・・・・・もしかして射撃音のパンッとパンをかけてる?流石に考えすぎか。


「すごいね」


「そんなことないだろ。的も結構大きかったし」


 自分の番が終わったので教室を出ると夢花が話しかけてきた。

 夢花は見ていたところ景品としては飴玉をもらったらしい。得手不得手もあるだろうから仕方ないけど、参加賞的なものらしい。パンは順番で下から二番目だ。

 一番上のものは点数計算したら一発も外さずに一番小さい的を五つ打たないといけないけど、あれは無理だろ。景品がなんなのかすごい気になるわ。


「結構時間経ったな」


「・・・・・・そう、だね」


 廊下を歩きながら夢花は寂しそうな顔を浮かべている。俺の当番の時間まであと約三十分。必然的にこの時間もあと三十分ほどしかない。

 そう考えるとちょっと寂しいな。もうすぐ終わりかこの時間も。あっという間だったな。


「そうだ、夢花さん」


「何?」


 夢花の方を見て話しかける。夢花が反応したのと同時にお腹辺りにドンッと衝撃を感じた。前を見ると少女が倒れていた。

 やばい、ちょっとよそ見してた。ちょうど曲がり角だったか。大丈夫かな。


「大丈夫?怪我はない?」


「だ、大丈夫。あっ!」


 手を差し伸ばしながら少女に話しかけると少女はおもむろに手を伸ばしたがその手が届く前に驚いた顔をして止まってしまった。少女が見ている先を辿る。

 あちゃー。ベッタリソフトクリームがついてるな。この子、手にコーン部分持ってるからそれか。

 ていうかソフトクリームなんて売ってるのか。一体どこで。大丈夫なのそれ?市販のやつ?


「ひ、ひぐっ」


 少女に視線を戻すと涙目になっている。

 そんなに気にしなくても。ちょっと前見てなかった俺も悪かったんだし。


「気にしなくていいよ。それよりごめんね。君のやつ取っちゃって。代わりといっちゃなんだけど、これ食べるかい?」


 ちょうど持っていたあんぱんを差し出しながらゆっくり話しかける。

 持っててよかったなぁ、これ。これで断られたらすごい恥ずかしいけど。


「い、いいの?」


「いいよ。それより君お母さんとかお父さんは?」


「あれ?」


 少女は辺りを見回す。そしてその動きが止まると一人の人を指差した。その人はこっちに向かって歩いてくる。


「こら、美奈。離れちゃダメでしょ。あ、すみません!うちの子が」


 推定お母さんが俺の制服についているソフトクリームを見ると深々と頭を下げてくる。


「大丈夫ですよ。気にしないでください」


「いえ、でも」


「大丈夫なので。それよりその子を楽しませてあげてください」


「すみません。ありがとうございます」


「お兄さんありがとー」


 その推定お母さんはお辞儀をして、女の子は手を振って歩いていった。

 ちなみにあんぱんはしっかり持っていかれた。全然いいけど。


「ごめん、夢花さん。ちょっと洗いに行きたいんだけど、待っててもらっていい?」


「うん、いいよ」


「・・・・・・なんかすごく嬉しそうだね?」


「あれ、そうかな?」


 うん、満面の笑みだけど、何かあった?あれかな、子供が好きなのかな?

 少し移動してトイレへと向かう。トイレの中に入ると制服を洗い出した。

 洗うといっても、ついたクリームを取って、あとは水で濡らしたハンカチで拭くぐらいしかできないんだけど。

 あらかたその作業が終わるとトイレを出るために出口の扉に手をかける。

 あれ?何か聞こえる。


「いいから、一緒に行こうよ」


「嫌です」


「いいじゃんべつに」


 微かだがそんな声が聞こえた。

 断ってる方は夢花の声だな。誘ってる方はどっかで聞いたことがある気がするな。

 周りに人はいないのか?よくそんなことできるな。

 ・・・・・・断ってるし助けた方がいいよな。ていうか誘ってくれた子がそんな状況になってるんだ。助ける以外に選択肢なんてないよな。

 一度深く息を吐いてから扉を勢いよく開ける。このする方を向くと男達が夢花の手首を掴んでいた。夢花も抵抗しているように見える。

 どこかで聞いたことがある声だと思ったら、いつぞやの夢花をナンパしてた人か。確か夢花の家に行った日だったな。

 そこに近づいて男の手首を掴む。男は咄嗟にこっちを向いた。


「嫌がってるでしょ。やめたらどうなんです?」


「お前は、あの時の。お前には関係ないだろ!」


 夢花の手を離して俺の手を振り解いた。威勢よく男はガン飛ばしてくる

 だけど、そんなに威圧感ないな。全然怯むほどじゃない。なんか、前にもあったなこんなことって感じだ。


「関係ありますよ。先約は俺なので」


「嘘つけ!」


「本当!あなたは迷惑!」


 夢花が強く言うと男は怯んだ。男は一歩後ずさった。

 夢花に言われるのは聞いたのか。なんて言えばよかったのかわからなかったから正直助かった。


「くそ!」


 男はそう捨て台詞を吐いてどこかに走り去った。

 結構簡単に諦めたな。なんでかは知らないけどとにかくどうにかなってよかった。


「大丈夫か、夢花」


「うん。ありがとう」


 真っ直ぐ笑いながらお礼を夢花は言ってくる。

 うん、無事で何よりだ。俺も周りに人がそんなにいなくてよかったよ。いてもいなくても助けたけど、そのあと注目されるのはちょっとしんどそうだからな。


「・・・・・・また、助けてくれた」


 夢花は呟くように言う。

 また?いやいや夢花さんや、前のは俺何もしてませんぜ。夢花さんが一人でどうにかしたんだ。だから、またって言うのは変だと思うけど。


「ありがと、拓斗」


「ああ、どういたしまして」


 感謝の気持ちは素直に受け取っておこう。

 それにしても、そろそろ時間かもしれないな。やばいな。

 この文化祭、俺が何かやるのはこれからなのにお腹いっぱいな感じがする。

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