18:変わらぬはずの日常について
おもむろに目を開けるとカーテンの隙間から漏れる朝日が目を照りつけてくる。
行かなきゃいけないし、さっさと準備するか。
パジャマを脱ぎ、制服に袖を通す。着替え終わると鞄に今日必要な教科書たちを入れて、鞄を持って部屋のドアノブに手をかける。
あ、スマホ忘れてる。
・・・・・・スマホって別に要らなくないか。うちの学校ってスマホの使用は禁止だし、使うようなことなんて大してないしな。
遅くまで友達と出かける、・・・・・・うーん、母さんそこらへん甘いから多少は遅れても平気だし、学校から家そんなに離れてないから一旦変えればいいしな。
そもそも一緒に出かける相手が新しくできてないから、そんな相手はほんとにごく少人数で出かけること自体が稀だろうしな。・・・・・・ちょっと悲しいけど。
あとは親からの緊急連絡ぐらいか。これも今までなかったし、あると思いたくないし、そもそも放課後までは電源切ってて、つけるの大体家帰ってからだから気づかないんだよな。
いらないか。使うことほぼほぼないもんな。
部屋のドアを開けて一階へと降りる。リビングではテーブルの上にトーストと目玉焼き、その横に野菜が添えられた皿が三枚並んでいた。我が家のいつもの朝食だ。
「おはよう拓斗」
「おはよう、拓斗」
「おはよう」
母さんがキッチンから出迎えてくれる。続いて父さんが挨拶をしてくれた。いつもの椅子に腰をかける。
「「「いただきます」」」
母さんが席につくと一斉にご飯を食べ始めた。いつもと変わらないなんの変哲もない味だ。そこまで印象にも残らないような他愛のない話をしながらご飯を食べていく。
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
朝食を食べ終わると父さんが席を立って仕事へ向かうために家を出る。母さんは見送りが終わるとキッチンへと行って皿を洗う。
俺もあと五分くらいで家を出ないとな。いつも通りテレビでも見ながら待っとくか。
「拓斗ー、お客さんよ」
インターホンが鳴るとキッチンの方から母さんが声をかけてきた。
キッチンの近くにインターホンがあるとはいえ、母さんが出なくてもいいのに。
それにしても、お客さん?こんなに時間に一体誰が?
母さんの声がちょっと上擦ってる気がする。ということは・・・・・・。
「早く行ってあげなさい」
あー、ということはそういうことだろうな。
仕方ない、まだいつもの時間じゃないけど誤差だし、早く行くか。
「母さん、いってきます」
「いってらっしゃい」
椅子の横に置いた鞄を取って玄関へと向かう。靴を履き替えるとドアを開けて外へ出た。外に行くと高校で一番見覚えのある人が待っていた。
やっぱりか。今まではこんなことなかったのになんで急に。構わないけどさ。
「おはよう」
「おはよう、夢花さん。待った?」
夢花は首を振る。
夢花の近くに行って横に並ぶ。そして、学校の方へと歩き出した。
「もしかして、スマホに連絡した?」
「ううん。してない。どうして?」
「いや、今日スマホ見てないから、連絡してたらごめんって思って」
それにしても、連絡はしてないのか。それはそれでびっくりするんだけど。どういう心境の変化なんだ?
「そっか。今日は持ってきてないの?」
「ああ、うん。別にいいかなって。やっぱり、持ってきた方がいい?」
「・・・・・・そっか、確かに」
夢花はぼそぼそと呟く。
確かにって何が。急に何かを納得されても全くわからないんだけど。
「どうかした?」
「え?あ、ごめん、なんでもない。えっと、持ってこなくても大丈夫だと思う」
話は聞いてたんだ。もしくは流れから察したのかな?どちらにしても理由は教えてくれないのか。いいけどさ、やっぱちょっと気になるな。
校門を抜け、昇降口をくぐり靴を履き替えるために一旦夢花と離れる。
大して早くもないから当たり前だけど、周りには人が増えている。大体多くなるのは近くの交差点あたりからだ。
「おはよう、清原」
靴を履き替えていると隣のクラスの中取が話しかけてきた。
久しぶりだな。最近は昼休みにもクラスに来なかったけど、一緒に食べる相手は見つかったんだろうか。きっと見つかったんだろう。よかったな。
「久しぶりだな」
「ああ、元気してたか?」
「まぁ、それなりにな」
「拓斗」
履き替え終わって外靴をしまうとちょうど夢花が話しかけてきた。
「ああ」
「お前はいいな」
中取が羨ましそうな顔でこっちを見てくる。
そう言われてもな。いまだに理由が分かってないからモヤモヤしている部分もあるんだが。まぁ、代われって言われても、代わりたいとは思わないけど。
・・・・・・だいぶ俺もこれが日常になってるんだな。
それに中取も中学の頃は色々あったのにな。これは言わない約束だけど。
「まぁ、いいよ。それじゃあな」
中取は軽く息を吐いてから立ち去っていく。
すぐ行ったな。話し出すとどんどん話題が出てくるタイプだからいつもどうやって切り上げようと考えたりするけど今回はそんな余地がなかったな。
「・・・・・・今の人は、友達?」
「そうだけど」
「・・・・・・そっか」
今日の夢花はいつもよりミステリアスだな。その真意を話してくる日はいつか来るのかね?それまでは勝手に予想しとくとしますか。




