ep.1
だから私は追い求め続ける。お母さんの願いと、私の夢を叶えに。
朝霧捺椛初リリース?連載小説「星に願いを」第一章。
「お母さん、大丈夫……? ご飯食べないの?」 「うん、大丈夫よ。今は空を見ようと思って色々と調査をしてるの。そすて、今は記録がてら今日一日の日記を書いてて。だからご飯食べてる時間はないの。」 「ふーん……ママあのね、一つよくわからない言葉があるんだけど……そらって……?」 「空はね、私達には届かない場所にあるって言われてるの。だから見えもしないし、触れもしないの。でも、お母さんはね、絶対に空を見たいの。天井のあるこの場所には飽きちゃったのよ。」吐いた息が白く寒く、空気の澄んだ 部屋の中で母がつぶやいた。「……お母さん、私も空見たい! なんで見えないんだろうね」 「それをどうにかするために、お母さん頑張ってるのよ。さ、空燈空燈寝ましょう。もう寝る時間だからね。」 母の作業の様子を眺めていたら、いつの間にか二つの時計の針が頂上で折り重なろうとしていた。「うん、じゃあおやすみなさい!」「おやすみ〜……お母さん、いつか一緒に空、見ようね!」
あれから何年の月日が流れたのかな。今日は、あの会話から数日で、あっけなく逝った母の命日だ。命日と言っても、葬式などはする暇も、部屋の広さもない。空は、きっとお母さんがいたこの部屋よりもきっと大きいんだろうな。
私の住んでいる世界は、地球という惑星の、地下深くにある。どうやら地上の人間たちは、地下にはマグマやらマントルやら、そういうものがあるという迷信を抱いているらしい。でも実際はマグマもマントルもない。ただ、こうして何千万人かが平凡と暮らしている場所だ。その中の一人が、私。夜酔空燈夜酔空燈だ。
私は世間一般が言う、ごく普通の女子高校生だ。しかしこれから私がやろうとしていることは、新しい“世間一般の言うこと”を作る、といっても違いないだろう。それは、空を見る事。空は時間帯ごとに変幻自在に姿を変えるらしい。また、空が眠ったとあとに星というものが活発に動くらしく、煌めいて見えるのだそう。私は地上の人間たちが言う“空”とやら見るために、母の遺志を継いで、日々研究を続けている。
その中で、分かったことが一つある。空を見るためには、私がいる地下世界から地上へと上がらないといけないこと。そして、そこには道がないから、自分で作るしかない。極めて過酷なことだとは最初っからわかっている。だけど、全てに天井と壁がある地下世界を抜け出したその先に、私の、母の求めていた景色がきっと広がっている。
「え、もうこんな時間!? 学校行かなきゃ!」スクールバッグ片手に部屋からダッシュして家を出る。学校へと通学路を駆け抜ける。今日も、空を見るための私と母の合同日記の一枚が埋まりそうだ。