唯一の独身友、ニーナ(37)
ルーツミに残っている友人で、ニーナだけがいまだに独身だった。
彼女は、ニルヴァナ商会という貿易会社で働いている。
ニーナとは、昔たまに行ってたルーツミの串焼き肉の店で会った。
「ほんとさ、あたし達の年齢って、不倫かジジイの後妻しか選べないよね」
開口一番ニーナはジョッキを片手にそう言った。察するに、また婚活失敗したんだろう。
ニーナはギクラサにある婚活紹介所に登録していた。でも、もう4年登録しても何の釣果もないらしい。
「あたし達って、本当に何なんだろう。社会のためにそこそこ私生活犠牲にして働いて、でも守られてるのって私生活だけで生きてる専業主婦ばっかなんだよね」
「100%コミットするものが仕事か家庭か違うだけで、女ってだけで、何でこんな扱いをされないといけないのだろうね」
私とニーナはため息をついた。
「私も、勇者って名誉職だと思ってたけど、実際は全然ちがう。打撃と魔法もできないとパーティ張れないしさ。勉強して、旅してダンジョン攻略してたらもう、あっという間に40目前だったよ。」
「でも、いいじゃん。少しは人の記憶に残ってんだし。あたしなんかいつまで経っても台帳片手に四苦八苦よ。あ、そうそう、例の魔法使いくんの話どうなったの?」
「ああ、結婚したよ?」
「えっ誰が」
「あいつ。ローレン」
ニーナは、信じられない…とばかりに口をぱくぱくさせた。
「は?おかしくない?何それ」
「なんか、旅の途中で知り合った18の娘と俺、今度こそ本気の恋に落ちたんだーて。なんか娘が来年産まれるらしい」
「はあああああ?」
ニーナはダンダンと子供みたいにテーブルを叩いた。他の客が一斉にこちらを振り向いたので、慌ててなだめる。
ニーナはギロリと私を睨んで恨めしそうに言った。
「あんた、そんなの悔しくないの?」
「何がって……私は剣をぶん回して、夜は魔法を覚えて、毎日敵を倒して経験値稼いでる方が楽しいし」
「あああもう! あんたねえ、もうアラフォーなのよ?40よ? いくら医療が発達したとはいえ、もう結婚適齢期だいぶオーバーなの! 子供欲しくないの?」
「そんなこと言ったって…私、できるのって打撃と、微妙な中級回復攻撃魔法しか知らないし……魔法も中級だから魔法大学院にもいけないし」
「あんたねえ、そんなこと言ってるから男にいいように使われるのよ? 今すぐあたしの入ってる婚活相談所相談するから、行ってごらんなさい」