表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

【論考⑤ なんで冒険者に仕事を頼むの?】


 こんにちは性懲りもなく考えてみようと思います。前の論考でそれぞれギルドがいろんなことをしているよとか、冒険者ってどういう社会階層の人がやっているのだろうという話をしていましたが、疑問に思ったことがないでしょうか? なんでギルドに仕事を依頼しているのでしょうか。


 冒険者ギルドにおいていろんな仕事をする話がなろうには多くあります。主だったものであればダンジョン攻略だとかモンスター退治だとかありますが、なんでそれを国家事業としてやってたりせずに明らかに民間組織である冒険者ギルドがやっているんだろう。ハンターハンターのハンター協会が頭にちらつきますが、考えていきましょう。


① 死んでいいから


 さて! 身もふたもない話からしましょう。冒険者は死んでもかまわないからです!


 な、何の話をしているんだということですが、前に描いた通りギルドの視点からすると冒険者の互助組織であり組合であるなら冒険者が易々と死んでもらうの困るわけです。純粋に労働力も減ります。また雇用関係のない臨時の依頼相手なので多ければ多いほどいいわけです。


 ですが、これはギルドの視点です。発注者からすれば違います。魔物退治を頼んだ村とか、まあ貴族とか王族とか商人がいたとしましょう。彼らが自分で武器を取らずに冒険者に依頼して外注するのは手持ちの人員を傷つけることを恐れているわけです。


 村で考えてみましょう。中世社会というのは相当な共同体意識の存在する社会であることが多いです。よそ者は魔物というくらいに別世界の住民だったりします。室町時代くらいの我が国各種エピソードを見ると笑ってしまうくらいに共同体意識が強く構成員(村人とか) が傷つけられると抗争に発展します。


 トラブルがあった時に私たちの社会ではどっちの言い分も聞いて正しいのはどちらだろうという考えがありますよね。そのうえで正しいほうはこちらと決めるわけです。ちなみに中世鎌倉時代もこのような考えの元に裁判が行われました、双方の言い分をちゃんと聞き最終的な結論を下すという形式ですね、これを「理非究明」といいます。


 なーんだ。鎌倉時代にもそんな考えがあるんじゃんという考えは甘いですな。


 幕府がこちらが正しいといった後に例えば「あの土地は俺のものだ」という風に訴えて勝った人がいるとしましょう。そんで裁判も勝ちました。そうなると裁判に勝った人が自力で土地を取り返す必要があります。司法の強制力がかなり弱い時代だったのです(だんだんと改善されていきますが、それでも自力救済は基本変わりません)


 そうなるとどうなるか。


 正しいとか正しくないとかそんな話ではなく。勝つか負けるかになるわけです。行政の司法権力が弱いため自己の身は自分で守り、己の正当な権利は己で確保しなければなりません。そして「己」というのは身近な人、同じ村や街に住んでいる人たちを同一の共同体として行動をしていくことになります。相互の助け合いやお互いの垣根のなくなるわけです。俗に村社会と言われるものですね。


 つまり共同体意識の強烈な世界というのは仲間意識も強烈になります。


 その時に村で命がけの問題が発生した場合、共同体の勇気ある誰かをそれに当てるのは失敗しても成功してもリスキーです。そもそも有意な若者が死んでもらっては困ります。そのため、金で雇える別に死んでもいい冒険者を雇うという誘因が働くのではないでしょうか?


 妄想だろ! という話もあると思います! 何を勘違いしているんですか? この論考自体は妄想です! どうだまいったか!!


 しかし、人間の歴史ではそれを裏付ける話もあります。司法の未成熟な中世では「神判」と呼ばれる。神様に裁きを任せるものが古今東西にあります。だいたいくっそ熱いお湯に手を入れて火傷しなかったら正しいとか、くっそ熱い鉄を握って持っていったらいいとか、そういう我慢比べのようなものです。


 しかし「神判」というものはたいてい権利争いにおいて行われます。村と村が例えば「あの山は俺たちのものだ」「水の権利は俺たちのものだ」という感じで対決の様相を示すのです。双方の村で正しさを証明するために実際にお湯に手を入れたり鉄を握ったりする人たちが選ばれて、戦います。


 「神判」が野蛮のように見えますがこれはこれで合理性のある……などと話をすることはしませんが。戦国時代にこの役目を「前々から村で養っていた浪人」とかにさせた事例などがあります。要するに最初から緊急事態用に「よそもの」を養っておくという冷徹な合理性が過去にはありました。火傷といえばかわいいですが、普通に農作業ができなくなります。熱した鉄を持つんですよ?


 村人が怪我をすると困るわけで、そういうときのために死んでもいいような浪人を雇っておくわけです。同じように重要な仕事を冒険者に任せておきたいと思うこともあるでしょう。



 さて、王侯貴族はそんなことないやろという話ですが、別の観点があります。我々の世界ではヨーロッパという地域は戦争を繰り返してきました。様々な政治権力が成立して並立しているかの地域は統一王朝のようなものは現れませんでした。ナポレオンのような強力な軍事の天才が時代の波に乗って拡大しようとしても周りが団結してそれを打ち破る形になりました。


 あ、統一政権といえば帝政ローマがありました! 古代だからノーカン!


 まーた関係ない話をしているよと見捨てないでください! 冒険者という職業に近い存在が西洋社会にはありました。それは「傭兵」です。西洋社会は常に戦争がどこかでありました、江戸時代以前の日本もそうやろと言われたら、せやなという感じですですが、少なくと元和偃武と言われるパックス・トクガワーナ以後も戦争は続いていました。


 なんで傭兵の話をしているのかというと、傭兵の出自だいたい身分の低い人たちです。そんで村から出てきて一獲千金を狙ってそれになったりするわけで、冒険者と似てますね。


 彼らはお金をもらえればどんなことでもします。有名なスイス傭兵は別としても普通に裏切りますし、内通しますし、逃げます。しかし誰にでも味方をするという軽さが西洋の王侯貴族にはとても扱いやすいわけです。


 騎士階級のような高貴な人々はいろいろとめんどくさい制約があります。また、中世は双務契約といって一人の騎士が数十人の主君を持っている場合もありました。一定の契約の元に義務を果たすことで主従関係を持っていたわけで、君主側すれば敵とも友達かもしれんわけです。


 傭兵は違います。「今」「金を払ってくれる人」が主君なのです。過去にいくら払っているかはどうでもいいわけで、なんなら戦争中に裏切ります。しかし、騎士連中よりも遥かに安価に簡単に集まるので重宝します。我が国で言えば応仁の乱における足軽たちでしょうか。


 さて、


 ギルドになんて依頼が来るのかというのは社会の下層からみても上層から見ても共通の事項があります。要するに冒険者が生きようと死のうと依頼者からすればどうでもいいわけです。村の人の代わりに死んでくれという話、王族・貴族からすればわざわざ領地の住民を使うくらいならひとやまいくらの連中が代わりに戦争なり魔物討伐なりで死んでくれるわけですからいいんですね。これは商人たちからしても同じことでしょう。


 そして、彼らにとって最高の結果とはなんでしょうか?


 魔物討伐なりダンジョン攻略なりを成し遂げた後に冒険者連中が全員死んでくれるのが一番いい結果になります。なんでだって? 報酬を払う必要がないからです。


 まあ、そこで互助組織としての冒険者ギルドの出番でしょう。死んだ冒険者の報酬もちゃんと回収するというわけですね。


② 死んでたまるか


 さて、すごく冷たい話をしましたがおまけとして少し話をしておこうと思います。傭兵が冒険者に似ているという話をしました。


 傭兵は中世から戦争に駆り出されることが多くあり、ヴェネツィアやフィレンツェなどの都市国家やあるいはフランス・スペインなどの広域国家に雇われることもありました。あるいはイギリスのスペインの無敵艦隊を破ったドレークも傭兵と言えるかもしれません。


 傭兵たちは金が欲しいのであって。戦争をしたいわけでも何でもありません。あるいは冒険者たちは金が欲しいのであって魔物を討伐したいわけではないかもしれません。


 イタリアにおける戦役に見られるのですが傭兵には傭兵隊長がいてそれぞれの都市国家で戦争をします。この時に雇用された傭兵連中が敵も味方も「ほどほどに戦って退く」ということをします。一生懸命に戦って死んでは元も子もありませんからね! 癒着するわけです。もちろん死者は出るでしょうが、傭兵隊長連中が死ぬことはありません。ちなみに戦争がなくなっても困ります、食い扶持がなくなるためです。冒険者側からすれば魔物がいなくなっても困るかもしれませんね。


 面白い話として傭兵にとあるキリスト教徒が「貴方に平和を」といったらブチ切れられて「平和になったら俺の仕事がないだろうが殺すぞ!」と言われた話があったりします。


 具体的な例えば有名な「君主論」を書いたニッコロ・マキャベリは若いころに軍事に携わりピサの斜塔で有名な都市国家ピサと戦争に関わりました。その時は自国であるフィレンツェの雇った傭兵連中が味方でしたが……彼らはピサの城壁が崩れた後絶好のタイミングで「撤退しました」。なぜも何もありません、市街地で戦って死ぬのが嫌だったからです。いろいろあって傭兵なんてだめだとなったマキャベリですがそれは別の話。あ、ちなみにピサで逃げ出した傭兵隊長は処刑されました。


 ここで言いたいのは村人とか王侯貴族が狡猾なら冒険者もちゃんと狡猾であるという感じになるでしょうねということです。純真無垢の忠誠心を雇われの冒険者が持つわけもなく、生きる上での知恵をやりくりして力強く生きている方が物語的に面白いでしょう。ライトノベル的かと言われると別でしょうがね!


 あと、これはかなり人を選ぶと思いますが傭兵において「ランツクネヒト」と言われるドイツ傭兵は歴史上かなり悪名高いです。まあ、本当に悪辣な連中がいたのか思うこともしていますが、逆用して不良冒険者団とかをつくって主人公に倒させる話とかもできそうですね。先に描いた通り村の人たちは冒険者なんて死のうが生きようがどうでもいいということは逆に冒険者側からしてもそうなんですから、強力な武器や魔法で村を滅ぼして略奪をしても魔物のせいにできるのですから。


 なんでギルドに依頼をするかというと冒険者ほど金で簡単に動いてかつどうでもいい人達の集まりに命がけで動かせるならコスパいいよね。というひどい話になってしまいましたが、冒険者側もそんな世界から簡単に命を賭けたり仕事をやめたりしませんなということでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ