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花の魔法少女  作者: 来夢
一章 殺せない存在
2/6

一話

「もう、終わりか……」

 朝、目が覚めると、枕元にある時計を見ながらそんなことを口にした。

 4月8日、月曜日。

 昨日で春休みが終わって、楽しかった期間が懐かしく思える。

 それと同時に、また学校という名の職場に通わなければならなかった。

 日暮蓮人は、しょぼしょぼする目をこすりながら身を起こす。

「ええと……」

 もう一度時刻を確認する。

 7時15分。

 朝ごはんを軽く食べてから制服を着よう。

 ベッドメイキングなんか適当でいい。そのままベットから降りて部屋を出る。

「……ん?」

 と、不意に家のインターホンが鳴り響く。

 特にネットショッピングなんかを見た記憶はない。

 不審に思いつつも、玄関の扉を開ける。

「おっはよー、蓮人」

「……玲華か」

 そこにいたのは、幼馴染である立花玲華だった。

 高校の制服に身を包み、笑みを浮かべている。

 長い黒髪が風でなびく。

「あー……どうしたんだ?」

「ん、ちょっとね」

「……まぁ、どうぞ」

 なぜ玲華が蓮人家を訪ねてきたかは分からないが、とりあえず家に入れることにした。

「朝ごはんは食べたの?」

「いや、これから」

 リビングのソファに座る玲華。

「そういうお前は?」

「ちょっとだけ食べてきた」

「そうか」

 冷蔵庫から卵とウインナーを取り出す。

 戸棚からパンを取り出し、トースターにセット。3分くらいでいいだろう。

 その間、フライパンで目玉焼きとウインナーを焼こう。

「そういえば、今日も親御さんいないの?」

「あー、まあな。……って、勝手に人んちのテレビつけるなよ!」

「いいじゃーん、幼馴染なんだし。ね?」

「……」

 カウンターから見えるのは、特に面白くもないニュースだった。

「はぁ……」

 ため息をつきながら、コロコロとウインナーを転がす。

 蓮人の親は、どちらも出張という言い分でしばらく家を空けている。

 父はIT関係の仕事、母はデザイナーの仕事。

 時々家を空けることが以前にもあったので、別に物珍しさは無かった。

 そのおかげで、疑似一人暮らし体験ができている。そして、一人だとやることが多いんだなという事が分かった。

 食事、洗濯、掃除などなど……親がいるときは、自分の部屋だけを掃除すればよかったのだが、こうなってしまうとリビングやらトイレやら、他にもやらなくてはいけないところが出てきてしまう。

 これを大変と思うのではなく、楽しいと感じるようにしている。

「……できた」

 チンッ、という甲高い音が聞こえたかと思うと、トースターからパンが飛び出してきた。

 目玉焼きとウインナーもそろそろだろう。

 パンと一緒に皿に盛り、リビングへと移動する。

「うわ、美味しそう」

「あげないからな」

「分かってますよぉー」

 ソファに座り、ニュースを眺めながらそれらを食べる。

「ん……?」

 数分後。ちょっと変わったニュースに、蓮人は眉をひそめた。

「どうしたの?」

 その様子を不思議に思う玲華。

「いや……このニュースって、事故だよな?」

「そう書いてるけど」

「……事故にしちゃあ、奇妙じゃないか?」

「?」 

 ニュースをジッと見つめながらそう言う蓮人。

 それに対し、玲華の頭上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。

「なんで、車が真っ二つになってるんだ?」

「……あー、なるほど」

 そのニュースには、車が運転手側と後部座席側に、真っ二つに分かれている映像が流れていた。

 事故と言えば、色々な損傷があるが——このタイプは、全くといって見たことが無かった。

 なぜか、その部分が奇麗に真っ二つになっていたのだ。

「なるほどねぇ……」

そのニュースを見ながら、玲華は顎に手をやりながらぼやいた。

「蓮人、今日は何の日か知ってる?」

 そろそろ食べ終わるという頃、急に玲華が訊いてくる。

「今日?……入学式?」

「せいかーい」

 なぜそんなことを訊いてきたのだろう。

 蓮人は食べ終わった皿を食洗器に入れ、一度自室に戻ろうとする。

「ね、入学式終わったら、どっかお昼食べに行こうよ」

「あー、まあいいけど」

「約束だからね。忘れないでよ?」

「……はいはい」

 玲華に背を向けたまま、小さく首肯すると自室へと戻った。


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