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宝くじが当たった。そして人生が変わった。

作者: 癒波綿樽

「おめでとうございます、こちら高額当選となりますので、指定の銀行の方にお持ちください」


なんとなく買った年末のでかい夢。

当たるなんて思っておらず、300円を貰いに行こうと近くの宝くじ売り場に持っていった時、俺の人生が変わった。


1等前後賞合わせて◯億円。

先日二十歳を迎えたばかりの俺は、現実味のなさ過ぎる通帳の額を見て震えてしまう。


そこが天国で、そこから先はなかなかの地獄だった。


まず見知らぬ自称友人が増えた。

見たことのない自称親戚が押し寄せていた。

毎日のように来るナンタラ宗教やナンタラ慈善団体。


断れば罵詈雑言を浴びせられる。

話を聞いたらお金を出すまで帰らない。

登録されていない電話は一切出ないようにした。


そもそも個人情報のはずなのに、どっから漏れるんだ?

そんなことを考える暇もなく、一週間も経てば立派な対人恐怖症になってしまった。


(もういい、めんどくさい、さっさと使っちまおう)


この結論を出すまでにかかった日数は十日間。

問題は使い道なのだが……。


「……というわけで、なんか欲しいものない?」


俺は幼馴染を呼び出した。

こいつとは物心付く前からの付き合いで、ぶっちゃけこいつに裏切られたら俺はもう誰も信じることができないかもしれない。

それくらいの仲だ。


「ふーーん、大変だったねぇ」


幼馴染の家でコーラを飲みながら適当に答えられる。


ちなみに考えうるものはたいてい買い漁った。

といっても、もともとそんなに物欲はなかったため、車や時計くらいだけど。


実家もフルリフォームした。

建て替えようかとも思ったが、愛着があるからと断られてしまったので、間を取った形だ。


「そう、大変なんだよ。

だから、昔から世話になったし、栞がなんか欲しいものあったら今までのお礼も兼ねてプレゼントするから好きなもの言ってくれ」


「んー、別にないけどなぁ」


予想通りというか、まさにこれこそが俺の欲しかった答えなのかもしれない。


高校の同級生は世界一周旅行がしたいと言ってきた。

なんで俺がよく知らないお前のためにそんな金を出さなければならないのかと突っぱねたら、ケチくさいやつと言われたからな。

図々しいにも程があるだろ…。


「あ!思いついた!

でもほんとにいいの?」

「おう、お前のためなら何でもしてやるぞ?」


とは言ったものの、内心少しがっかりしたのも事実だ。


あぁ、コイツもやっぱりそうなのか、と。

勝手に幻想を押し付けて、裏切られたらガッカリする。

俺もたいがい嫌なやつだな。


「吉野家!」

「…………吉野家?」

「そう、吉野家。

できれば頭の大盛り卵2個御新香味噌汁セットで!」

「……なにそれ?」

「なにってそのとおりだけど?

いやー、夢だったんだよねぇ」

「ぶははははは、なんだ、その夢」

「えー、いいじゃん、私の自由でしょ?

それにこんな夢の組み合わせはなかなかないよ?」


なんていうか、ほんとに期待を裏切らないやつだな。

こんなに腹痛くなるほど笑ったのは久しぶりだ。


栞の夢を叶えるべく、俺達は早速吉野家に向かった。


「いっただっきまーす!」


心から幸せそうな顔でもりもり食べる幼馴染。

お会計の時に


「ホントに奢ってもらっていいの?」


って不安そうな顔するところに、不覚にもときめいてしまった。


「あぁ、全然いいよ。

なんなら毎日でも奢ってやる」

「えー、毎日はやだなぁ。

太るし」


昨日までなんとも思わなかった幼馴染に、この瞬間俺は恋をしたのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう彼女だといいよね。 給与を渡しても管理してくれそう。 [一言] 今は、当選者は自分で言わない限り漏れないですよ。 昔は行員が漏洩してたり、口座から大金を動かした時に関係者が漏洩して…
[一言] 実際のところ、今日日は宝くじ当たっても自分から喋らなければなかなか漏れないらしいですね。 銀行側もバレないように徹底して、助言もくれるとか。 主人公は何処かでミスっちゃったのでしょう。 正…
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