第9話 パーティ1
本日2回目の更新です。
さて、グーベンデールとプリメリアの二人と分かれると場内では歓談が始まった。
パーティとは社交の場であるから、これが本来の趣旨だ。
卒業パーティなら、なおの事ギャールに取っては大事な時間だ。
そうしていると、次から次へと挨拶やら何やら人が寄ってきた。
俺は、タイミングを見計らってこっそりと料理の方へ向かう。
もう半分役目を終えているので、自由にしても良いよね?
”さぁ、食うぞ!”
立食パーティって初めてだけど、そりゃまぁ、豪華なものだ。
食べ放題の取り放題だ! これは楽しい!
肉か! 魚か! それともデザートか!
食べ盛りの男子大学生舐めるなよ。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
…なんてことだ。
残念ながら、このきつきつのドレスのせいで多くは食べられない。
くそ、もっと厳選すれば良かった。
取り過ぎてもう食べきれない。
仕方が無い、ギャールに食べてもらおうかな。
と、周りを見渡しても彼女の姿は見えず・・・。
うん、流石は仕事熱心のようで、どこかで商談でもしているのだろう。
ふと気が付くと、俺の周りを女性達が遠巻きにしていた。
”にこっ”と愛想笑いすると顔を赤らめ後退りする。
(ふふぅ、可愛いね)と心で思いながらもこの隙にこの場から逃げる。
さすがに、この中に同窓生の彼氏をナンパするような人はいない。
良識ある女性たちだ、どこぞの領主次女とは違う。
俺だって本心は女性たちとお話したいさ。
けれど、ギャールとの契約もさることながら、尻軽男と思われるのはもっと嫌だ。
本当に男女逆転の世界観なら、そう簡単にHなことを許す訳にはいかない。
日本の女子だって、男にガッツいてる子なんて駄目だろ?
少なくとも男子の前では…。
△△
バルコニーに出ると、冷たい風が心地よい。
何だろう? 庭園先でカップルが争っている。
目を凝らして見ると、グーベンデールとプリメリアだ。
そりゃあそうだろうね。
プリメリアにしてみれば、付き合っていたギャールに恨まれてまでグーベンデールに付いたのだ。
それを、“ぽっ”と現れた俺に目移りされたんじゃー、立つ瀬が無い。
町一番の美男のプライドもズタズタだろうしね。
”バシッ”
とビンタの打撃音とともにプリメリアはその場を駆け出した。
どうやら泣いている様だ。
グーベンデールは頬を抑え、呆けている。
自分がなぜビンタされたのか分かっていない様だ。
プリメリアの”玉の輿”は消えたな。
ん? ”玉の輿”で合っているのかな? 男女逆だから・・・?
いやいや、”(きん)玉の腰”じゃないんだから・・・。
とくだらない考え事をしていると
” ! ”
グーベンデールと目が合っていた。
やばい、ガン見していたのがバレた!
グーベンデールは、”にこっ”と笑うと腕を一振りし風をおこして、”ぶわ~~”と飛んで来た。
一瞬のことで驚いたが、風魔法で自分自身を飛ばした様だ。
魔法もそうだが身体能力も相当に良いようだ。
「凄いや。魔法ってこんなことも出来るんだ」
と感嘆の声を漏らしてしまった。
すると、グーデンベールは目をパチクリして言う。
「これは珍しい、紳士でありながら魔法に興味があおりですか?」
「そりゃぁ、あるさ。だからって、貴女に興味がある訳じゃないから!」
「これは手厳しい。ですが、のぞき見は感心しませんよ。紳士としてね」
と、変なポーズを取りながら俺の腰に手を回す。
(手、出すの早!)
「お、俺、、、私は別に紳士じゃないです。それにあんなの見るなって方が無理でしょう」
と、言い逃れするも、悲しいかな男の性、女性にくっ付かれるのは嫌じゃない。むしろ嬉しい。
グーデンベールが口角を上げた。
くそ、これじゃ、俺が尻軽男みたいだ。
苦し紛れに視線を外すと、その先にプリメリアに近づく女を発見した。
目線でグーデンベールに訴えかけると、気付いてくれた様だ。
その女とは他ならぬギャールで、グーデンベールは「あいつら」と呟いた。
貴女、自分の事を棚に上げすぎだろ。
すかさず俺は、さっきの魔法で傍まで寄ってくれと頼んだ。
完全に出歯亀だが、「二人を見守るためだ」と押し切ると、グーデンベールは素直に言うことを聞いてくれた。
意外と押しに弱いな。
(盗み聞きなんて淑女のすることじゃー)
(シー、静かに)
もう、変なところで律儀なんだな。
(じゃぁ良いよ、俺が聞いておくから)
と“しっし”と追い払う手振りをすると、諦めたように
(仕方ない。私はあくまで君のボディーガードだからな。決して盗み聞きが本分ではないからな)
とそっぽを向いてしまった。
(はいはい。そりゃぁどうも)
へそ曲がりは置いておいて、俺は二人のやり取りに集中した。
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