第23話 中断
いつも読んでいただきありがとうございます。
前話で一区切りついていますので、今話は閑話ぐらいの感じで読んで下さい。
第二王女宮は、主たるアイリスが復帰したことで活気が戻っている。
俺はと言うと、今までが嘘のように慌ただしく過ごしている。
謁見後は、王女婿候補として王宮内に部屋をあてがわれ、優雅に暮らしていたのだが・・・日に日にやつれて行く事務官さん達を見て、つい手伝ってしまった。
第二王女宮では、主が戻ったことで滞っていた案件が一気に雪崩れ込み、事務官さん達を襲ったってことだね。
これでも大学生だ。事務仕事には多少の心得があると助っ人を買って出てしまったのが運の尽き。
特にこき使われるのが第一王女宮との連絡・調整だ。
元々、第二王女宮は軍事系と産業系に強く、第一王女級は法律系と財務系に強い。
どんなに良い施策を出しても、法律違反や資料が不十分では予算が下りないと言う訳だね。
さてさて、今もシュフレラ第一王女のところへ向かうところだ。
△△
秘書官に取り次いでもらい入室を許可される。
「失礼します。第二王女宮、事務官入ります」
俺は、事務的な挨拶をしてシュフレラ王女の秘書官に資料を渡す。
ガリガリと文章を書いていたシュフレラ王女が手を止め、俺を見ては顔をほころばせた。
「そろそろ、その挨拶は止めたらどうだ? まるでシン殿が事務官の様ではないか」
「えっと、お言葉ですが、端的に要件を伝えるには最適だと思うのです」
俺は、苦笑いしつつ当たり障りのない弁解をしておく。
秘書官が資料にさっと目を通し、シュフレラ王女に渡す。
シュフレラ王女は、書類をパラパラとめくる。
「まぁ、良い。 今は、この滞った仕事を片付けねばならんからな。それと言うのも・・・。」
シュフレラ王女は、俺に付いて来てくれた第二王女宮事務官を睨みながら続けた。
「私も、人事交流が一番の解決策だと思っている。しかしだ!誰も行きたがらないし来たがらない」
王女が、それぞれの事務官に目配せしたが、誰もが俯いて首を大きく横に振っている。
「ふう。当面このまま処理して行くのが妥当だな」
「はい。僕もそう思います」
「しかし、シン殿。あの宰相には気を付けておいた方が良い。なにか企んでいるかもしれん」
「肝に銘じておきます」
うん。そうなのだ。
第一王女宮も第二王女宮も、結局は女王の裁決を得なければならない。
そして、それには宰相の意見がものを言う。
幸い、俺の関わった案件が棄却されたことは一度もない。
つまり、作為的な何かがあってもおかしくない・・・わけだ。
「シン様、事務官殿、お茶が入りました。あちらでお寛ぎください」
王女の侍従が、いつものブレイクタイムを進めてくれた。
ここのお茶菓子は美味しいんだよね。実はちょっと楽しみにしている。
俺は、侍従さんにお礼を言って席に着いた。
そして、当然の様にシュフレラ王女が向かいに座る。
ちなみに、事務官さんは少し離れた別席だ。
実のところ、シュフレラ王女はそんなに悪い人じゃない、堅苦しいだけで。
むしろ、有能な人だと思う、堅苦しいだけで。
それに妹達のことも思っている、堅苦しいだけで。
この第一王女宮で、彼女を慕っている人は割と多い。堅苦しさも慣れると普通になるらしいし・・・。
きっと、平時なら賢王と呼ばれる女王になれる人だ。
このまま平和な時が過ぎてくれれば良いと思う。
けれど、もしセントラルが侵攻してくれば、この歪な統治機構では抵抗できないだろう。
ええーい、三姉妹とも俺の嫁に…と思ったけれど、思い上がらずに謙虚に行こうと思う。
「ところで、シン殿、頼みがあるのだが聞いてもらえないだろうか?」
これは珍しい。シュフレラ王女が俺に頼み事とは・・・。
そのシュフレラ王女の頼み事とは、彼女の婚約者に会って欲しいと言うものだった。
気が進まな~い。
だって、この世界の”男”ってオネエっぽくて違和感が凄い。
そして、俺と会ったところで修羅場にしかならないと思うのだが、…これは自惚れなのかもしれないな。
まぁ、急ぎでもなく”折を見て”とのことだったので、断り切れなかった。
その彼は、三大公爵家の一角の令息で、この王都でも1、2を争うほどの美男子だそうだ。
そして、この国ではちょっと珍しい趣味があるとのことだった・・・。
少し別の話を書きたいので、更新は不定期となります。
引き続きよろしくお願いいたします。




