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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第四幕『神の指導者』
98/150

志賀の尽力

 今回の演劇も大盛況で終わった。

 心奏(しおん)は演劇が終わり、ステージに並んで挨拶をする時、正面に座りこちらをあの日と変わらない目で見つめる父・奏治(そうじ)の姿を見つけた。

 ――来てくれたんだ。

 正直、心奏は奏治が来てくれるか不安であった。

 普段から興味がないと言っているようなものを、しかも良い印象を持っていない人間がやっているものを、わざわざ足を運んで観に来るだろうかと。

 しかし、心奏の心配とは裏腹に奏治は最初から最後までちゃんと観ていたのだ。

 心奏は安心しながらも、奏治がこの演劇をどう思ったのかを考えてまた不安になったのだった。



志賀(しが)(かなめ)だ。話をしに来た。お前の息子の、心奏の話だ」

 志賀がそう言うと、家の扉が開く。

 中から奏治が顔を覗かせ不機嫌そうな顔で「何の用だ?」と一喝した。

 志賀は少し足を竦ませながらも、奏治を真正面から見つめた。

「せっかく訪ねて来ておるのに、お主は客を家に招き入れることもしない、非常識者なのか?」

 志賀は微笑みを浮かべた。

 しかし『恐怖』という感情を全て隠しきれてはいない。

 奏治は志賀を見下ろしたまま、瞬き一つしない。

 志賀の肌を一粒の汗が流れ落ちる。

「入れ」

 奏治は諦めたようにそう言うと、扉を大きく開け放った。

 志賀は心底安心したように息を吐き、気持ちを落ち着かせるように息を大きく吸った。

 そして家の中に入った。

 家の中に入った志賀は椅子にドカッと座る奏治の、目の前の椅子に座った。

「お主は格式張ったものが嫌いじゃろうから、単刀直入に。心奏が今度演劇をする。そこに来てほし――」

「断る」

 志賀が話し終わる前に奏治が口を挟む。

 しかし、それは志賀にとって想定内だった。

 だが、ここからは志賀にも想定することが出来ない。

 志賀は少しどころではない不安を抱えながら、重い口を開いた。

「それは、心奏が真心(まこ)さんに似ているからか?」

 ――ガタンッ!――

 次の瞬間に志賀は、奏治の手と椅子に挟まれる形で首を締められていた。

 息がうまく吸い込めずカハッという音が喉から出る。

 しかし、志賀はニヤリとした笑みを欠かさず奏治に向けている。

 志賀の言葉が原因か、ヘラヘラとした態度が原因かは分からないが、奏治の手に力が込められていく。

 段々と奏治の鼓動と息が上がっていく。

「そこまでにしておけ……」

 志賀が朦朧としてきた意識の中で声の方に目を向けると、そこには修治(しゅうじ)が立っていた。

 修治の存在に気が付いた奏治は、志賀の首を締める手を避け、ドカッと椅子に倒れ込むように座った。

「ゴホッゴホッ!」

 志賀が咳をして大きく息を吸い込んだ。

 そして息を整える。

 志賀が息を整えている横で、修治は志賀の隣の椅子を引きそこに座った。

「遅いではないか……」

 志賀が掠れた声で修治に言うと、修治はため息をついて奏治を見つめながら言った。

「これでも急いだ方だ。ちゃんと止めただろう」

 修治のいつもと変わらない態度を取りながらも、よく知る人にしか分からないほど僅かに、心配に満ちた瞳が自身に向けられていることに気付き、志賀は思わずハッと笑った。

 そして首を抑え、また息を整えると修治を睨みつける奏治を見た。

 先程のような事態になるかもしれないという恐怖と、上手くいくか分からないという不安で志賀の口が震えた。

 しかしいつまでも黙っているわけにはいかない。

 唇をギュッと噛み、口の震えを抑えると志賀は真剣な瞳で奏治を見つめ口を開いた。


「再度尋ねる。心奏に関わりたくないのは、あの子が真心さんに似ているからか?」

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