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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第四幕『神の指導者』
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演劇『少年の夢(2)』

 とある冬の日。

 少年と父親は口喧嘩をしてしまいました。

 喧嘩のきっかけは些細なことでしたが、少年も父親も頑固な性格だったがために、口喧嘩はその日の夜まで続きました。


心奏(しおん)「もう、父さんなんて知らない!」


 少年がそう叫んで部屋を飛び出そうとした時です。

 バタンッ!

 突然、父親が倒れてしまいました。

 少年は慌てて父親の元に駆け寄り、父親を抱き起こしました。

 ズシンとした人間ではないような重さが少年の腕に乗りました。


心奏「父さん!」

父親「すまん。スマナイ……」


 父親がそう言うと、ガコンという音を立てて腕がありえない方向に曲がり床に落ちました。

 少年が驚いて父親をまじまじと見つめます。


心奏「父さん……もしかして…………」

ロボット「俺ハ、オ前ニトッテイイ父親デハナカッタ。人間デアルオ前ヲ俺ガ育テルノニハ限界ガアッタ。俺ニモ寿命ガクルヨウニ……」


 父親。いえロボットは自身の腕にあった蓋を開け、少年の手にある物を握らせました。

 少年がそれを見ると、それは僅かに光り輝く不思議な石でした。


ロボット「最後マデ…騙、シテイテ、ス、マナ……イ」


 ロボットは目を閉じました。

 そうしてロボットは壊れてしまいました。

 少年の目から大粒の涙が流れ落ち、ロボットの顔に落ちました。

 人間と見分けもつかないほど、精密なそのロボットを少年は抱きしめました。


心奏「父さん。貴方がロボットでも、僕にとっては唯一の父さんでしたよ…」



 何年か経ったある日、少年はとある研究所にいました。

 目の前にはあの日に壊れてしまった父親のロボットがありました。


羽音(ねお)「そろそろだな」

響彩(とあ)「もうすぐ会えるわね」

心奏「うん」


 少年がいる研究所には受け付けにいた青年と、ロボットについて勉強していた少女の姿もありました。

 三人は共通して目の前にある一体のロボットを見つめています。

 少年がそのロボットの腕に、自分がつけていた懐中時計の中にあった石をはめ込みました。

 石は光り出し、その光がロボット全体を包み込みました。

 ロボットが目を開けます。


心奏「おはよう、父さん。そしてメリークリスマス…」


 その日はクリスマスでした。

 壊れてしまった父親のロボットとクリスマスの日に、やっと再会出来たのです。

 少年は立派な医者になりました。

 ”()()”と“()()()()”。

 二つの種族を治療する立派な医者に。

 そうして少年は夢を叶えたのです。


 『医者』と『もう一度父親と暮らす』という二つの夢を。

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