飛び入りの来客
演劇の三日前。
「ジャーン!やっと父親ロボットが完成したぜ!」
羽音が心奏と響彩に向かって、自信満々に見せていた。
劇場のステージの真ん中で、羽音より少し大きい人間と区別がつかないくらい精密なロボットが佇んでいる。
ザ・父親といったような顔立ちをしており、そこら辺にいてもおかしくないような服を着ている。
そのロボットと人間の違いといえば、ステージのライトを反射してキラキラしている金属の部分くらいだった。
「それにしても、こんなロボットを短期間で作れるなんて。さすが羽音だね」
心奏が羽音を褒めると、羽音は少し頬を紅く染めながら満面の笑みを浮かべた。
「それほどでもねぇよ。さ、演劇の練習しようぜ。もう時間も残ってねぇし」
羽音がそう言うと、響彩がシナリオの書かれた台本を開いて言った。
「そうね。心奏が直してくれた内容で一度通してみないと……」
響彩がそう呟くと、心奏と羽音が同意するように頷いた。
一通りシナリオの内容を演じながら通していると、誰も入ってこないはずの劇場の扉がガチャッと開いた。
突然のことに心奏は目を丸くして立ち尽くし、羽音と響彩は驚きながらも護りの体勢を取った。
「いやぁ、広い劇場じゃのう」
聞き覚えのある声に、一同は力の抜けたようにため息をついた。
その人物は客席側から劇場をキョロキョロと見回しており、ニコニコと微笑んでいる。
「要センパイ!なんでここいるんすか?」
羽音が客席側にいる志賀に向かって声をかけた。
志賀はその声でステージ上にいる心奏達に気付き、手を大きく振った。
「おぉ。少し様子を見にな。修治殿には内緒で来ておるから、くれぐれも内密にな……」
「内部告発してやろうかしら…?」
志賀が人差し指を口元に当てシーと言うと同時に、響彩がボソッと呟く。
練習の邪魔をされたのが余程気にくわなかったのか、響彩は腕を組んでコツコツと爪先をステージに高速で叩きつけていた。
心奏がまぁまぁと響彩を宥める隣で、羽音が口元に両手を当て、絶対に聞こえるであろうほどの声で志賀に叫んだ。
「センセイに報告されたくなかったら、邪魔しないでください!オレらには時間がないんすよ!」
羽音の言葉に志賀はビクッと身体を震わせ、目を丸くする。
そしてカッカッカッと笑うと、側にあった客席にズカッと腰を下ろした。
志賀の行動に三人は呆気に取られていたが、志賀はそんなこと気にせずに三人に向かって言った。
「客として見るのであれば善かろう。決して邪魔はしないと誓おう」
志賀が頬杖をつきニヤッと微笑む。
――これは何を言っても効かない。
三人の頭に同じ言葉が浮かんだ。
はぁと三人が同時にため息をつく一方で、志賀はニヤニヤと三人がどうするかを高みの見物で見ていた。
羽音が頭を掻き、響彩が俯いてどうするか悩んでいると、心奏がステージの前方まで歩き出し二人の方を振り返ると、台本を片手に息を吸い込んだ。
「貴方は何について――」
心奏は自身の役のセリフを言った。
志賀が来る少し前に言ったセリフを。
それを見た羽音と響彩は、心奏のセリフや行動に合わせて中断された続きから、演劇の練習を再開した。
心奏達三人とロボットがステージ上を目まぐるしく動く。
その様子を志賀は頬杖をつきながら、楽しそうに微笑んでいたのだった。




