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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第四幕『神の指導者』
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ただいま

「あぁ、良かった!わしはもう駄目かと思ったぞ。心奏がもう、わしらの前に出てきてくれんのじゃと……」

 修治(しゅうじ)に担がれてきた心奏(しおん)志賀(しが)の前に下ろされ、今現在は志賀に抱き着かれている状態だった。

「僕は大丈夫だよ。心配かけてごめんね、(かなめ)くん」

 心奏が志賀の背中を撫でながらそう言うと、修治が志賀を心奏から引き剥がした。

 手をブンブンと振り回し「話せ〜」と言う志賀の襟元を、修治は無表情で掴んだまま心奏に視線を向ける。

 そして座れとでも言いたげにソファに視線を移した。

 心奏がその通りにソファに座ると、心奏を挟むように羽音(ねお)響彩(とあ)、机を挟んだ心奏の目の前のソファに修治と志賀が腰を下ろした。

「さぁ、今の今まで何をしていたか教えて貰おうか」

 修治の一言に尋問のときのような空気を感じた心奏は、全ての視線が自分に集まる居心地の悪さを感じながらも口を開いた。


「えっと…さっきも話した通り、あの日から三日間くらいは僕も精神的にしんどくてほとんど寝てたんだ。だから生活習慣がおかしくなっちゃって。それに加えて病院から貰った薬の副作用で、寝てるときは物音の一つも聞こえないし……」

 心奏が自身の髪を触りながらそう言うと、上着のポケットから一枚の紙を取り出して机の上に広げた。

「でも、四日目に入ったくらいから段々暇になって『どうして父さんはあんなことを言ったのかな』とか『僕は今父さんのことをどう思ってるのかな』とかそんなことを紙に書き出していったんだ。これはその一部」

 心奏が広げた紙には『僕が機嫌を損ねた?』『いや、僕は父さんと会うことが少ないからそんなことはない』などの文章が色々な大きさで殴り書きされていた。

 志賀がその紙を手に取り見やすくなるように持ち上げていると、心奏は四人の顔色を伺うように顔を見回すと話を続けた。

「いっぱい書いてたら、次は創作意欲が湧いちゃってね。ここ最近、起きてる間は最低限のことをして部屋に籠って色々書いて……不定期に寝てっていう生活だったんだよね。心配かけちゃって、ごめんなさい…」

 心奏が頭を掻きながら再度謝ると、四人はそれぞれにため息をついた。

 その様子に、心奏は機嫌を損ねたと思ったのかアワアワと慌て出した。

「大丈夫じゃ。お主が自分の中で割り切る事が出来たんじゃから、わしらがアレコレ言う事も無かろう」

 志賀が呆れたように微笑みながら、ソファの肘掛けに肘を置き頬杖をついた。

 その隣では同じく呆れたように眉をひそめる修治に、心奏の両隣には顔を両手で覆う羽音と眉間に手を当てる響彩。

「「「心奏らしい」」」

 羽音、響彩、修治の三人が同時にそう呟くと、プッと吹き出し笑い出した。

「まぁ、そんなこったろうとは思ったがなぁ…」

「本当に、雀百まで踊り忘れずというか、何というか…」

「変に心配をかける所はお前の母親そっくりだ」

 羽音、響彩、修治はそれぞれそう言うと愛おしそうに心奏を見つめた。

 予想していたモノとは違うその様子に目を丸くしている心奏に向かって、羽音と響彩が心奏の頭を撫で、修治が心奏に優しく声をかけた。


「おかえり。心奏」


 修治の言葉に心奏はもっと目を丸くしたが、嬉しさと申し訳なさを兼ね備えたような表情で微笑んだ。

 そして右目の目尻に涙を溜め満面の笑みで口を開いた。


「ただいま!」

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