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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第三幕『Abendrot und Silber』
85/150

EP.3『完成』

「「「ありがとうございました!」」」


 道化師、錬金術師、歌姫は小さな劇場で初めて演劇を()()させた。

 人間三人と沢山のロボット役者で演じる、喜怒哀楽の他では見られないようなシナリオ。

 そして、それを見てくれる沢山のお客さん。

 全てが揃って、初めて演劇が完成した。

 ()()()は皆を欺きながらもシナリオを導き、()()()()は自身の持ち得る限りの錬金術でシナリオを支え、()()は皆を魅了する歌声でシナリオを閉じた。

 観客がステージの三人に大きな拍手を送る。

 その演劇は大盛況で終わった。


 演劇の話は風の噂で瞬く間に広がり、三人の元へスカウトをしにくる劇団も沢山いた。

 それと同時に「ぜひ我が劇場へ」と色々な劇場が三人に演劇をして貰おうと声をかけた。

 しかし、三人は決して劇団のスカウトを受けず、劇場からの声にもあまり応えることはなかった。

 三人には揺らぐことのない、共通の夢があったからだ。


『世界に通用するような演者となる』


 三人が目指すところは決まっていた。

 世界。

 それこそが三人が目指す場所。

 世界に通用するようになることで、三人の演劇は本当の意味で『完成』するのだ。

 だからこそ、その演劇は第一歩に過ぎずスカウトで他の劇団に入るなど言語道断だったのだ。


「僕らはここから始まるんだ」


 劇場の裏の廊下で錬金術師と歌姫の後ろを歩いていた道化師が、決意したように手を強く握ると顔を上げた。

 道化師の言葉に錬金術師と歌姫は大きく頷いた。

 二人の様子を見た道化師は満面の笑みを浮かべ駆け出し、錬金術師と歌姫の手を取り控室まで嬉しそうに笑いながら駆け足で向かった。


 その時ほど彼らの年齢にあった行動は無かっただろう。


 三人は当時齢12。小学六年生だった。

 12歳という若さで演劇の世界という狭き門に足を踏み入れたのだ。

 公園でしか演劇をしたことがなかった三人が、小さいながらも劇場で演劇を披露した。

 その事が三人の自信に繋がったことは言うまでもない。


 ここから、三人の演者人生が始まった。

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