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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
79/150

冬の海

「うわぁ。凄い!」

 地平線まで続く大海原を見て心奏(しおん)が歓喜の声をあげ、羽音(ねお)響彩(とあ)の手を離して海の方に近づいていった。

 ザザーンという音と共に波が砂浜に打ち上がっては、何事もなかったかのように海に帰っていく。

 日が高く上っているからか、日差しを反射した海はキラキラと天の川のように輝いていた。

「12月で風は冷てぇが、海は変わらず綺麗なもんだな」

 羽音が白い息を吐きながら、コートのポケットに手を突っ込んだ。

 その隣で同じように白い息を吐き、微笑みながら波と遊ぶ心奏を見つめる響彩も両手を合わせて息を吹きかけた。

「綺麗な海を見ずに、波と遊んでる人もいるんだけど?」

 響彩が呆れたように笑い羽音に声をかけると、羽音も心奏の行動に気づきハハッと笑った。

「何やってんだ、心奏のやつ」

「さぁ?心奏にとって海は珍しいものなんでしょうね」

 羽音と響彩がニコニコと微笑みながら心奏を見つめていると、修治(しゅうじ)達三人が二人に近づいてきた。

「珍しいという言様では足りない。心奏自身、海を自分の目で、鼻で、身体で感じるのは初めてだからな」

 未だ波を追いかけては逃げてを楽しそうに繰り返している心奏の方を、眩しそうに目を細めながら修治が振り向く。

 修治のあとに続いていた志賀(しが)夏目(なつめ)も顔を上げ心奏に視線を向けた。

「夏目や、あれは大丈夫なのかえ?」

 苦笑いを浮かべた志賀が、心奏を指差しながら夏目に問いかける。

 夏目は丸眼鏡をクイッと直すと、同じく苦笑いを浮かべた。

「うーん、どうなんでしょうねぇ。とりあえず、体調確認してみます〜」

 夏目はそう言うと、砂浜をザッザッと進んで心奏の側まで歩いていった。

 そして何かを心奏に伝えると、心奏の手を取り皆の方に戻ってきた。

「まだ体調が悪いとかは無いようですが、沢山動いたのでねぇ。少し休憩としましょう」


 夏目の一言で、近くにあった休憩所のような場所にそれぞれ腰掛けた。

 心奏を中心に羽音と響彩が腰掛け、少し離れた位置に志賀と夏目が足を組み座り、志賀達の目の前に修治が深く腰掛けた。

「僕、病院に戻ったら子供達にお話でもしてあげようかなって思ってるんだ」

 心奏が寒そうに両手に息を吹きかけると、そのまま太ももの間に挟む。

「いいんじゃない?子供達も喜ぶと思うわよ」

 響彩がポケットからカイロを取り出し、心奏に手渡しながら言った。

「どうせなら、病室の一室を借りて演劇してもいいしな」

 羽音もニコニコと微笑みながら、響彩の言葉に続ける。

「演劇をするのであれば、わしも招待してくれぬか?また神garu(シングル)の演技を間近で見たいからのう」

 志賀が指をパチンと鳴らすと、カッカッカッと笑った。

 苦笑いを浮かべる三人を見て、夏目が志賀の頭をグッと押さえつけると、それを見た修治がため息をつき口を開いた。

「こいつのことは気にしなくていい」

 修治の物言いに夏目は苦笑すると、腕の時計を見て落ち着いた様子で心奏達の方を向いた。

「もうそろそろ予約の時間ですし、車に戻りましょう」

 その言葉を聞いた心奏は目を見開くと「待って」と言って砂浜の方へ走っていった。

 心奏の突然の行動に羽音と響彩は思わず立ち上がったが、心奏が砂浜に座り込み何かを探しだしたのを見て、安心したようにその場に立ち尽くした。

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