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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
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とある山への外出

「早く乗れ、置いていくぞ」

 修治(しゅうじ)の言葉に羽音(ねお)がムッとしたような表情で後部座席に乗り込む。

「そんな急がなくてもいいだろ!今日一日は自由って言ってたじゃねぇか!」

 羽音が叫ぶ横で耳に手を当てたまま、響彩(とあ)も車に乗り込む。

 次の瞬間、羽音側の開いた窓からヌッと手が滑り込んできた。

「うわっ!」

 羽音が思わず悲鳴をあげると、手の主である志賀(しが)が窓から顔を覗かせた。

「そうかっかするな。今日は心奏(しおん)が自由に動ける日なんじゃ。思う存分楽しもうぞ」

 志賀の言葉に運転席にいる修治は不快感を示し、助手席にちょこんと座る心奏は苦笑いを浮かべた。

 そのとき夏目(なつめ)が志賀の肩を持ち、後ろから車の中を覗き込んだ。

「ぼくは神々(みわ)くんの何かあったとき用の付き添いだけど、一応医者だから何かあったら言ってねぇ」

 丸眼鏡をクイッと持ち上げると、志賀の襟を引っ張った。

「じゃあ、志賀くんはぼくの車で一緒に行くから、あとはごゆっくり〜」

 志賀は何か文句を言っていたが、夏目に引きずられていった。

「本当に騒がしい人…」

 響彩がボソッと呟くと、羽音と修治が頷いた。



 この日は心奏の一日の外出許可が出たため、とあるところに六人で向かっていた。

「んで、そこってどんなところなんだ?」

 羽音が不思議そうに首を傾げた。

「僕は初めて行くんだ。伯父さんなら知ってると思うけど……」

 心奏が修治の方に顔を向けると、修治はため息をつき話し始めた。

「静かなところだ。緑に囲まれ景色もまぁまぁなところ、だな」

 修治が簡潔に答えると、窓の外を眺めていた響彩が車内に視線を移し、呆れたような口調で言った。

「ねぇ、後ろの車。あの人達、何してんの?」

 響彩の言葉に心奏と羽音は振り返り、修治はサイドミラーで見ると、後ろについて走っている夏目の車の中で色々な物を取り出して遊んでいる志賀と、それを止めようにも止められずアワアワと慌てている夏目の姿が見えた。

「何、してるんだろうね」

 心奏がクスッと笑いながら言うと、他の三人もクスクスと笑い始めた。

「あいつらは放っておけばいい。もうすぐ着くから準備しておけよ」

 修治が山道を走らせながら車内に声をかける。

「分かった」

 心奏はそう返事をすると、足元に置いていた鞄をゴソゴソと漁り始めた。


 暫くして車が停車すると、六人はゾロゾロと車から降りた。

 辺りは鬱蒼とした森で、とても景色がいい場所とは言えなかった。

「見たところ、ただの山の中だけど?」

 響彩がショルダーバッグを肩にかけながらそう言うと、修治が心奏に手を貸しながら答えた。

「もう少し先、車が通れない場所にあるんだ」

 響彩が納得したように頷くと、次の瞬間には隣に停められた車からニコニコとした志賀と、疲れた様子の夏目が降りてきた。

「いやぁ、楽しい道のりじゃったな、夏目や」

「楽しかったのはきみだけだよ」

 対極する二人の様子に心奏は思わず微笑んだ。

「心奏は大丈夫か?」

 羽音が車から降り、心奏の側に駆け寄るとそう尋ねた。

 心奏は静かに頷き、辺り一面の森を見渡す。

 見れば見るほど、そこはただの森だった。

「そろそろ向かうぞ」

 全員が車から降りたのを確認し、修治を先頭に森の中に入っていく。

 人工で作られた道を辿って行くと、少しひらけた場所に出た。

「着いたぞ。ここだ」

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