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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
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笑顔が素敵

「のう、心奏(しおん)や……」


 志賀(しが)の呼びかけに、心奏は首を傾げながらも「どうしたの?(かなめ)くん」と返事をした。

 心奏の方を向くと、志賀は心奏に尋ねた。

「お主、”()()()()()”という名に聞き覚えはあるか?」

 志賀の言葉に心奏は少し考えたが、首を左右に振った。

「知らないと思うよ。記憶にないし……」

 心奏の返答に、志賀は口元に手を当てながら視線をまた資料に移した。

 その資料を覗き込もうとした心奏だったが、それに気付いた志賀によって遮られた。

「何が書いてあったの?」

 心奏が頬を膨らませながら拗ねたように志賀に聞くと、志賀は資料で心奏の頭をポンッと叩く。

 「痛っ」と心奏が頭を抑えると、志賀が笑った。

「別に大した事ではない。さて、わしはここらでお暇するぞ。ではな」

 志賀は心奏の問いを綺麗に躱し、病室を出ていった。

 心奏は「待って!」と手を伸ばしたが、その手は空気を掴むだけで志賀を引き留めることは出来なかった。

「綺麗に躱されたな……」

 修治(しゅうじ)が病室の扉を見つめながら心奏に言った。

「何が書いてあったんだろう?」

 心奏がポツリと呟くと、羽音(ねお)が腕を組んだ。

「”アズラエル”って言ってたな。それが鍵か?」

 羽音の言葉に響彩(とあ)が言う。


「アズラエル、死を司る天使。一説ではアダムを創ったとされる天使ね」


 響彩の言葉に心奏はさらに首を傾げた。

「死を司る天使。って益々僕に関係ない気がするけど、何なんだろう?」

「さぁな。とにかく、お前は休め。要の事は俺が聞いておくから……」

 修治が心奏の頭を撫でると微笑んだ。

「うん。分かった、伯父さん」

 心奏が微笑んで修治に言うと、羽音がハッとしたように心奏と修治の間に入り込んだ。

「そういや、心奏。お前、いつの間に伯父さん呼びになったんだよ?」

 羽音の言葉に、響彩も同意するようにコクコクと頷いた。

碧偉(あおい)との事を思い出した時に、自然にそうなっちゃった」

 心奏がヘラヘラと笑いながら頭に手を当てる。

 響彩がそんな心奏を見て「じゃあ、私達はなんて呼べば…?」と呟くと修治が羽音と響彩に目を合わせた。

「好きに呼べばいい」

 修治の言葉に羽音と響彩は顔を合わせ、また修治を見て微笑んだ。

「「じゃあ、()()()()で」」

 二人の言葉に修治は呆れたように頭に手を当て、心奏は苦笑いを浮かべた。


「ねぇ、心奏。碧偉くんってどんな子だったの?」

 修治が用事で帰った病室で、響彩が心奏に尋ねた。

 澄み渡った青空を見ていた心奏は響彩を見つめ俯くと、どこか寂しそうな目で天井を見つめた。

「綺麗で格好良くて大人びていて、でもどこか子供っぽい。そんな子だったよ」

 天井を見つめたまま、心奏は懐かしそうに目を細めた。

 心奏の脳裏に夕焼け空の下、白銀の三つ編みを風になびかせながら満面の笑みの碧偉が浮かぶ。

「あの頃の僕と正反対の、とても明るくて笑顔が素敵な……」

 心奏の目から涙が溢れる。

 それを横から羽音がティッシュで拭った。

「ありがとう…」

 心奏の言葉に、羽音は哀しそうに微笑む。

 そして、心奏の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「もう大丈夫だ。心奏にはオレらがついてる」

 ニカッと笑顔を羽音が浮かべ、その隣で響彩がやれやれと苦笑した。

 羽音の言葉に心奏は目を丸くしたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。

「そうだね」

 心奏達三人はその後も空が夕焼け色に染まるまで話し続けたのだった。

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