表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第三幕『Abendrot und Silber』
73/150

協力者

羽音(ねお)()()()響彩(とあ)()()()()。伯父さんは()()を見て』


 紙に書かれた通り、三人はそれぞれ指摘されたところを見る。

「「「あっ!」」」

 三人が同時に声をあげた。

 羽音は内側のシャツを反対に着ており、響彩はスカートのポケットが外に飛び出ていた。

 そして、修治(しゅうじ)の手袋は左右反対に着けられていた。

「三人共、僕を心配し過ぎだよ。自分の事もまともに出来てないよ」

 心奏(しおん)が笑いながらそう言うと、三人は頬を赤く染めた。

「あぁ、格好つかねぇな…」

 羽音がシャツを脱ぎながら笑う。

「本当ね」

 響彩もポケットを元に戻しながら微笑んだ。

「……」

 修治は無言で手袋を外し、直していた。

「ハッハッハ。本当に、お主らは心奏が大好きよのう」

 志賀(しが)が豪勢に笑う。

「うるせぇ!」

「うるさい!」

「うるさいぞ」

 三人がまた同時に口にすると、志賀がしょぼんと肩を竦めた。

「わし、悲しい……」

 嘘泣きをする志賀を横目に、心奏は困ったように微笑むのだった。


――コンコン――

「ちょっといいかなぁ」

 病室の扉がノックされ、間を空けずに医者が病室に入ってきた。

 その瞬間、病室の空気が変わった。

 心奏達三人はそれに気付いたようで医者、志賀、修治を順に見ている。

「何か用かの?家族、友達水入らずで話していたのじゃが……?」

 志賀の冷たい声に心奏は背筋がゾクッとした。

「ちょっと、ちょっと。なんか冷たくありませんか〜?せっかく頼まれていた当時の資料を見つけてきたっていうのに……」

 医者は丸眼鏡を外すと、髪をガッと掻きあげた。

「こうやって、ぼくを顎で使うのってきみぐらいですよ〜。ぼくって意外と偉いんですよ〜」

 医者の変化に目を丸くし、口をパクパクさせている三人に気付いた医者は、三人に向かって手を振った。

「ぼく、志賀くんの知り合いというか、友人なんですよ〜。だから、神々(みわ)くん達の味方です」

 やれやれというように頭を抱えた修治が医者の言葉に付け加えるようにして口を開いた。

「彼は夏目(なつめ)琉翔(りと)。心奏を護るために(かなめ)が連れてきた奴だ」

 修治の紹介に医者もとい夏目はニコッと微笑んだ。

 そして、その名前に聞き覚えのあった響彩は首を傾げていたが、思い出したようで夏目を指差した。

「夏目琉翔って、うちの学校の卒業生で学校医じゃない!」

 響彩の言葉に心奏と羽音は驚き、パッと夏目に視線を向けた。

「いや〜、よく分かったねぇ。そうそう、その夏目琉翔です〜」

 夏目はヘラヘラと笑い、志賀に手に持っていた資料を手渡した。

「ご苦労じゃったな。夏目」

「本当、頑張ったんだよ〜?まぁ頑張っても、それ以外は見つからなかったんだけど」

 夏目の言葉を横目にパラパラと資料をめくり、目を通していた志賀がある資料を見た瞬間、手を止めた。

「これは?」

 志賀の指差す先を、眼鏡をかけ直した夏目が覗き込む。

「誰かの手記(にっき)があったんですよねぇ。その人の手記は全部この病気について言及してたので、資料に入れ込みました〜」

 夏目はそう言うと病室の時計を見て、少し慌てたように扉の方へ駆けていく。

「それじゃあ、ぼくはこれで。ちょっと、急ぎの用がありますので〜」

 言い終わるか終わらないかというタイミングで、夏目は扉を開け急いで出ていった。

 それを見ていた志賀以外の人物は、はぁと呆れたようにため息をついた。


「のう、心奏や……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ