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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
72/150

優しすぎる

「落ち着いたかえ?」

 志賀(しが)がそう尋ねると、心奏(しおん)はコクンと頷いた。

 病室に戻った心奏含む五人は椅子に座ったり、壁に背を預け立っていたりとそれぞれに過ごしていた。

碧偉(あおい)は僕を守ってくれてたんだね。あの頃からずっと……」

 心奏の言葉に志賀は静かに頷く。

「碧偉のためにも心奏、お主は生きなければ。彼の者等に、研究者共に生殺与奪の権を握らせてはならん」

「なんで、そいつらはそんなに心奏に拘るんだ?奇病を患ってるやつなんて、世界にごまんといるだろ?」

 椅子にドカンと座っていた羽音(ねお)がベッド脇に腰掛ける志賀に問いかけた。

「そうさな。詳しい事はわしらにも分からん。心奏が患っている病についての情報が過去をどれだけ遡っても一つも無いんじゃよ」

 志賀が長いまつ毛を伏せた。

 そして、何かを決意したような真剣な目線で視線を上げた。

「ただ、心奏が患っている病は特別じゃ。世界中のどこの病院に見せても治る事は無かろう」

 その言葉に羽音は悔しそうに自身の足元を見つめた。

「ここは、安全なの?」

 羽音の隣で違う椅子に腰掛ける響彩(とあ)が不安そうに病室を見渡す。

「ここは俺や(かなめ)の息のかかった奴らが蔓延っている。だから、他の場所よりは幾らかマシの筈だ」

 修治(しゅうじ)が響彩を安心させるかのように、静かな声で言った。


神garu(シングル)……」

 ふと、心奏が呟いた。

 四人はパッと心奏に視線を向ける。

「神garuは碧偉と僕のユニットになるはずだった。でも、僕が奪っちゃったな……」

 心奏の言葉に羽音と響彩が顔を合わせ、また心奏の方を向いた。

「その名前を背負ってんのは心奏だけじゃねぇだろ」

 羽音の言葉にハッと驚いたように心奏が目を見開き顔を上げる。

「それは私達も同じよ。私達だって神garuだもの。一緒に奪ったも同然だわ」

 響彩が言った言葉に、同意するように羽音が頷き目を細めた。

 その羽音の表情に心奏は驚いたような、哀しいような表情を浮かべた。

「大丈夫だって。その碧偉ってやつも、心奏に使って貰えるのは本望だろうよ」

「私達で碧偉くんに『神garu』という名前に恥じないような演者になればいいでしょ?」

 羽音と響彩の顔を交互に見ると、心奏はくしゃっと不格好な笑みを浮かべる。


「二人は()()()()()よ……」


 心奏の言葉に驚いた二人は、また顔を見合わせるとクスッと笑って心奏の方に向き直った。


()()()()だ」

()()()()よ」


 同時に言った二人を、目を見開いて見つめていた心奏だったが、ははっと笑った。

 その様子を一通り見ていた志賀が、心奏の肩を叩き手招きをする。

 心奏が首を傾げながら志賀の方に身体を起こすと、志賀が心奏の耳元で何かを呟いた。

「あははっ」

 志賀から何かを聞いた心奏は、先程とは打って変わってパッと笑顔になった。

 羽音と響彩、そして修治は何がそんなに面白かったのかと、心奏の方を見た。

「何を聞いたの?」

 響彩がそう尋ねると、志賀が口元に人差し指を当て意地悪く笑った。

 その間も心奏はお腹を抱えて笑い続けている。

「ふふっ」

 心奏は目元を拭うと、側の机から紙とペンを取り出し何かを書き始めた。

 さらさらとペンを紙に走らせると、その病室にいた全員に見えるように掲げた。


『羽音はシャツ。響彩はスカート。伯父さんは手袋を見て』

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