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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
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相棒から仲間へ

「と、いう事だ」

 志賀(しが)がそう言い終えると、羽音(ねお)響彩(とあ)は顔を見合わせた。

 二人共ありえないというような表情をしている。

「その研究をしていた医師はまだあの病院にいる。そして、今度は心奏(しおん)を犠牲に研究を進めるだろうな……」

 志賀がそう言った瞬間、羽音が志賀の胸ぐらを掴んだ。

 それにも関わらず、志賀は落ち着いた表情で冷たく羽音を見ている。

「心奏が危ないのに、なんでお前はそんな堂々としていられんだよ!今すぐ行かねぇと心奏は……」

「わしが何もしていないように見えるか?」

 羽音の言葉を遮り、志賀が冷たく言い放つ。

 その威圧に耐え切れず、羽音は思わず手を離した。

「今、何が起こっているの?」

 一部始終を見ていた響彩が志賀に問いかける。

 志賀は冷たい表情から一変、安らかな笑顔を浮かべた。

「この学校の校長、心奏の担当医師を始め、心奏の周りにはわしらの息がかかっている者達がいる。心奏の記憶に関しては今、修治(しゅうじ)殿が奮闘している真っ最中じゃろう」

 志賀がそう言うと、クルッと二人に背を向けた。

「じゃが、今から心奏の元に行くのは賛成じゃ」

 志賀は首だけ後ろに向けそう言うと、屋上の扉の方へ歩き出した。

 羽音と響彩も互いに顔を見合わせ頷いたあと、志賀の背中を追って駆けたのだった。



 心奏は病院の屋上にいた。

 もう日はほとんど沈んでしまって、辺りが暗闇に包まれかけていた。

「全部……思い出した…」

 心奏はそう呟くと、頭から手を離した。

 頭の激痛はいつの間にか綺麗さっぱり無くなっている。

「僕は。僕らは、死ぬしかなかったのか?」

 心奏が呟いた瞬間、屋上の扉がガタンと開いた。

 その扉の奥からは修治が顔を見せた。

 心奏は思わぬ来客に驚いていると、急な胸の激痛に襲われ胸を押さえ丸まった。

 そのただならぬ様子に、修治は心配そうな顔で心奏に駆け寄ろうとした。

 だが。

「来るな!」

 心奏は痛む胸を押さえ必死にそう叫んでいた。

「知ってたんでしょ⁉何もかも!センセイ達は、伯父さん達は全部!」

 心奏がそう叫ぶと、修治は困惑したような表情で心奏から目を離した。

 目から涙が溢れた。

 ()()神人(かみひと)碧偉(あおい)はもう生きていない。

 それを思い出してしまったからだ。

「僕は碧偉の変化に気付いてあげれなかった。碧偉はもういない!僕のせいで!」

 心奏の思わぬ言葉に修治は目を見開き、心奏を見た。

 流れ続ける涙を袖で拭う心奏はまるで、あの日碧偉にしがみつき泣いていた幼い頃に戻ったようだった。

「それは……」


「それは違うぞ」

 修治の言葉を遮り、修治の後ろから志賀が屋上に出てきた。

「碧偉はお主だけでも守ろうとした。あの日の早朝、碧偉はわしをここへ呼び出した」

 志賀の言葉を聞き、心奏は驚いた表情で志賀を見た。

「碧偉はわしにこう言った。『しおんだけはまもれ』とな」

 心奏は泣き崩れた。

 そこに、志賀の後ろから飛び出した羽音と響彩が駆け寄る。

「「心奏!」」

 心奏は二人の腕の中で子供のように大声で泣きじゃくった。

 胸の痛みもいつしか気にならなくなるほど小さくなっていた。

 今は新しい()()がいる。

 心奏がそう気付くには十分すぎる時間だった。

「混ざって来なくとも善いのか?」

 志賀がニヤリと笑って修治に問いかけるが、修治はため息をついて志賀の頭を小突いた。

「邪魔をする訳には行かないからな」

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