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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
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地下の記憶

「こっちかな?」

 曲がり角の壁から心奏(しおん)が顔を覗かせる。

 心奏は点滴スタンドを引きながら、地下に行くためエレベーターを探していた。

 部屋で病院の地図を見たのにも関わらず、心奏は先程からグルグルと同じところを回り続けている。

「おやぁ?神々(みわ)くん、どうしたんだい?」

「あっ、医者(せんせい)。地下に行ってみようと思って地下に行くエレベーターを探しているんですけど、見当たらなくて……」

 医者は心奏の言葉に困ったように笑ったが、心奏の手を引き前を指差した。

「じゃあ、ぼくと一緒に行こうか。エレベーターはこっちだよ〜」

 医者がそう言うと心奏は頷いて、もう片方の手で点滴スタンドを引いた。

 少し歩くと心奏達はエレベーターの前に着いた。

 歩いた時間は心奏が探し回っていた時間の約三分の一ほど。

「医者、ありがとうございました」

「うん。気をつけて行ってきてねぇ。あとちょっとで日も暮れるから早めに部屋に戻ってくださいねぇ」

 医者の言葉に心奏は「はい!」と元気よく応えると、エレベーターのボタンを押した。

 しばらくして来たエレベーターに心奏はさっそく乗り込み、B1のボタンを押して地下に降りて行くのだった。


 地下に降りた心奏は珍しいものを見るかのように目を輝かせ、キョロキョロと辺りを見渡していた。

「病院って色んな所があるんだなぁ」

 心奏がそう呟きながら歩いていると、心奏の視線はとある一か所に釘付けになった。

 そこから視線を離さず、心奏は駆け足でそこに近づいていく。

 その場所の前で心奏は足を止めた。

「ここ……」

 霊安室と掲げられているその部屋から、なぜか心奏は目を離せずにいた。

「来たことあるような……」

 心奏がそう呟いたとき、心奏の頭に激痛が走った。

 思わず頭を抱える心奏の頭の中に知らない記憶が入り込んできた。


 白銀の髪。猩々緋(しょうじょうひ)色の瞳。クシャッと笑った笑顔。頭を撫でられる感触。看護師や医師達の同情の眼。涙が伝う頬の熱。冷たい空気。そして、身体の外にある真っ赤な心臓。


「き…みは……」

 心奏が痛みに耐えながらもそう口にすると、次は夕焼けが心奏の頭の中を埋め尽くした。

 頭を押さえながら心奏はエレベーターの方へ走った。

「行かなきゃ…!」

 心奏の心が告げていた。

 行かなければ後悔する、と。




「おう、こっちじゃこっちじゃ。草柳(くさなぎ)君、天野(あまの)君」

 志賀(しが)が屋上の扉から顔を覗かせた羽音(ねお)響彩(とあ)に声をかけた。

 空はもうすでに夕焼け色に染っている。

「何なんすか?急に放課後屋上に来いだなんて。あと、授業中に廊下駆けて行きながら伝えるのやめてもらえます?めっちゃ恥ずかったんですけど……」

 羽音が頭を掻きながら言い、志賀の方へ歩いていく。

 その後ろを不機嫌な顔をした響彩が続く。

「はっはっは、すまぬすまぬ。急いでおった(ゆえ)、許してはくれぬか?」

 志賀が笑いながら言うと、羽音は「今後しねぇなら」と言って志賀の隣に立ち柵に腕を乗せた。

 羽音の隣に響彩は立ち、志賀の方を覗き込んだ。

 そして羽音と響彩の二人は志賀の話を待つかのように、志賀の顔を見つめた。

「お巫山戯(ふざけ)はここまでじゃのう。ここからは真面目な話。心奏について、だ」

 ニコッと細めていた目をカッと開き、志賀は二人を交互に見た。

 羽音と響彩は、志賀から思わぬ名前が飛び出し目を丸くした。

「お主達は知っておく必要がある。わしの事、そして……心奏の事」

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