表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第三幕『Abendrot und Silber』
64/150

啓示

 修治(しゅうじ)志賀(しが)は、修治の車の中にいた。

「今日は何をしに来た?まさか本当に心奏(しおん)と話すだけだった訳じゃないだろう」

 助手席に座る志賀に向かい、修治は声をかけた。

「わしはな。今回、心奏が倒れたのは何かの啓示だと、そう思っている」

「啓示?」

 口調の変わった志賀に、修治は苦虫を噛み潰したかのように顔を歪ませ尋ねた。

「そうだ。もしかしたら、今回こそ思い出すかもしれない。それと修治殿に伝えなければならない事もあるしな」

 志賀が何か遠い記憶を思い出すかのように目を細め修治の方を向いた。

 修治は志賀の口から思いもよらぬ言葉が飛び出し、目を大きく見開いている。

「修治殿、彼の者等が動き出している。ここまでゆっくりしていたが、そろそろ急がなければいけない。もう少しで”()()()”が来ることは気付いているだろ?」

 志賀の真剣な眼差しに修治は「あぁ」と言って、志賀の目を見つめ返した。

「心奏の事は俺に任せろ。お前は引き続き……」

「分かっておるよ。わしは自分の役目を果たすだけじゃ」

 口調の戻った志賀がニヤリと目を細め「お大事にと伝えといてくれ」と言って、修治の車から出て行った。



「あ、センセイ!あれ?志賀先輩は帰ったの?」

 修治が病室の扉を開け、部屋の中に入ると本を読んでいた心奏が顔を上げ、修治を見て首を傾げた。

「あぁ、『お大事に』と伝えて帰った」

「そっか……」

 修治の答えに心奏は一言だけ言うと、また本に目を落とした。

 その様子を見て修治はベッドの方へ歩いていき、椅子をベッドの横に置き、そこへ腰を下ろした。

「そういえば、お前。病院の地下へ行ってみたいと言っていなかったか?」

 修治の言葉に心奏は顔を上げ修治を見た。

「うん。でもそのときはセンセイが止めたでしょ?気圧で症状がどうたらとかで……」

 心奏がそう言うと、修治が心奏の手を自身の手で包み込み口を開いた。

「お前は昔より丈夫になった。だから地下へ行ってもいい。ただし危ない真似はするなよ」

 修治がそう言った途端、心奏の目がキラキラと輝いた。

「本当?本当に行っていいの?」

 心奏がまるでペットを飼う事を許されたかのような子供のように目を輝かせ、修治の手の上に更に自身の手を重ねた。

 その様子に修治はため息をつくと、苦笑しながら言った。

「あぁ。無茶はするなよ」

「うん!分かった!」

 心奏の元気の良い返事に、またもや修治は苦笑した。

「じゃあ僕、明日さっそく地下に探検しに行ってくるね!センセイは誰か来たら伝えといて!」

 心奏のキラキラした瞳が修治を捉える。

 修治はその瞳から目を逸らせず、そのままの体勢で頷いた。



 その日の夜。

 心奏は一人ベッドの上から窓の外を見つめていた。

 街の少しだけの灯りが、心奏の目に反射してキラキラと光っている。

 心奏は胸に手を当てた。

 心臓は鼓動を刻んでいる。

「僕は、何が特別なんだろう?」

 心奏はそう呟くと、多くの人が出入りする扉の方を向いた。

「センセイはなんで、今になって地下への立ち入りを許したんだろう?」

 心奏は修治が座っていた椅子に目を落とす。

 そして、また窓の外の街へ視線を移した。

 心臓は変わらないリズムで動き続けている。


「何か……」


 心奏の脳裏に白銀の色が映し出される。

 次に真っ赤な何か。

 そして、何も無くなる。


()()()()()()()()んだけどな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ