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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第三幕『Abendrot und Silber』
62/150

おはよう

――ピッ……ピッ……ピッ――


 病室に電子音だけが響いている。

 ゆっくり、ゆっくりと呼吸をする心奏(しおん)修治(しゅうじ)は見つめている。

 心拍数は未だ低いままだ。


――コンコン――


 病室の扉がノックされ、羽音(ねお)響彩(とあ)が扉から顔を覗かせる。

「まだ目覚めてないの?」

 響彩の問いに、修治は頷くことで返答した。

 神社の手伝いに行き、心奏が倒れてから早一週間が経とうとしていた。

 修治は一週間心奏に付き添い、羽音と響彩は学校が終わる度に病室へ足を運んだ。

 しかし、心奏は目を覚まさない。

 医者も出来る事はやり尽くしたと言う。

「オレ達に出来る事は無ぇのかな?」

 羽音が心奏の手を握りながら力なく呟く。

「今はただ願い、見守るしかない……」

 修治がそう言うと、羽音は落ち込むように項垂れる。

「早く起きてくれよ。おはようって言ってやるから……」

 羽音の涙ぐんだ声に、響彩も鼻をすする。

「早く…………」


 羽音がそう言いかけた瞬間、心奏の目がゆっくりと開いた。

 その場にいた全員が目を見開いて、心奏を見つめ次の行動を待った。

「僕…は……?」

 心奏がそう呟くと同時くらいに修治が心奏を抱き締めた。

 羽音と響彩は突然の出来事に固まっていたが、ハッと我に帰る。

「わ、私、看護師さん呼んでくる!」

 そう言って響彩は慌ただしく病室を出て行く。

「オ、オレは。どうしよう!?」

 羽音がバッと椅子から立ち上がると、ベッドの周りをうろちょろする。

「え、えっと、何があったの?」

 修治が抱き締めているため、ベッドから起き上がれずにいる心奏が困惑している。

「お前は神社から帰る最中に倒れたんだ。それで一週間も眠ったままだったんだぞ」

 修治が心奏から身体を離し、状況を説明する。

 と、ガラガラと音を立てて扉が開き、慌てた医者と看護師、その後ろから響彩が病室に入ってきた。

神々(みわ)くん、本当に起きたんだねぇ。ちょっと失礼するよ〜」

 そうして、医者が心奏の方に歩み寄りベッドサイドモニタを確認したあと、聴診器を心奏に当てた。

「心拍は変わらないねぇ。本当に不思議。普通ならペースメーカーつけなきゃいけないんだけどねぇ」

 医者はそう言うと、もう一度モニタを確認した。


「きみ()()は特別だからね〜」


 そう言ってニコッと微笑むと、医者は修治の方に向き直った。

「心拍数が落ち着く…というか、正常に戻るまではとりあえず入院になりますので、そちらの準備とか学校への連絡とかお願いしますぅ」

 医者はそう言うと病室の扉に向けて歩いていき、扉の前で振り返った。

「じゃあ、ぼくはちょっと外しますんで、その間は神々くんと話してあげてください。では〜」

 医者はそう言い残すと扉を開け、看護師と共に出て行った。

 その様子を病室にいた全員が見つめていたが、出て行った瞬間に視線が心奏に集まった。

「もう、大丈夫なのか!?苦しいとか痛いとかないか!?」

「ちょっと羽音!そんなに勢い良く質問攻めしちゃいけないでしょ!」

「はぁ、騒がしい奴らだ……」

 心奏以外の三人が一斉に騒ぎ出し、病室はあっという間に賑やかになった。

「はははっ、僕は平気だよ。それよりも、僕は皆の方が心配だよ?」

 三人が心奏に視線を向け、静かになる。

 心奏は顔色の悪い三人をそれぞれ見つめると、目一杯の笑みを浮かべ、元気よく言った。

「皆、おはよう」

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