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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
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夏休みとペットボトルと宿題と

 それから暫く経ち、心奏(しおん)達は夏休みに入っていた。

 最初から劇場内での練習は難しいため、三人は近くの広場で声出しや準備運動をしている。

「衣装はいつものやつで良かったの?」

 響彩(とあ)が汗を拭きながら心奏に近づく。

「問題ないよ。子供達が見たときに見分けられるようにちょっとした小物は増やす予定だけどね」

 心奏の言葉に響彩は頷いた。

「ロボットは何体使うんだ?とりあえず三体はメンテナンスしたんだが…」

 羽音(ねお)が遊具の影でロボットをいじっていたが、ふと顔を上げ心奏に問いかけた。

「舞台上で欲しいのは二体かな。魔王のそばにいる敵役に欲しいからね」

「じゃあ、メンテナンスはこれぐらいでいっか…」

 羽音がそばに置いてあった鞄に、ドライバーや小さい部品を詰め込んだ。

 そして、心奏の近くにあったベンチに鞄を乗せると、二人に向きなおった。

「それで、今日は他に何するんだ?」

「今日は打ち合わせと演劇に向けた準備運動とかだけの予定だったんだけど……どうしようか?」

 心奏がベンチに腰掛けると鞄に入っていたペットボトルを取り出し水を少量口に含んだ。

「じゃあ、とりあえずシナリオを辿るだけ辿ってみたらどう?」

 響彩が心奏の隣に腰を降ろす。

「いいね。そうしようか…」

 心奏がペットボトルをベンチに置き、台本を鞄から取り出すとシナリオを辿るように指を添わせた。


 それを横目に羽音が心奏のペットボトルを取り、口をつけないようにして水を飲んだ。

「何当たり前のように心奏の水飲んでるのよ。自分のを買って来なさいよ」

「買ってくるのが面倒なんだよ。心奏も嫌がってねぇし、いいだろ」

 響彩の指摘に羽音が広場の端にある自動販売機を指さして言う。

「嫌がってないからいいなんて考えはおかしいでしょ。別に広場を出て、コンビニまで買いに行けって言ってるんじゃないんだから、自動販売機くらい行きなさいよ」

 羽音はため息をつきながらも、自動販売機に向かって歩いていく。


「お前達もいるか〜?ついでだし買うか?」

「私は多めに家から持ってきたから、心奏のだけ買って来なさいよ。心奏の水飲んだんだから」

 響彩が返事をすると羽音は「分かってるって」と返事をしながら自動販売機にお金を入れ始めた。

「そこまで飲まれてないからいいのに…」

「貰っときなさいよ。アイツ、借り作るの嫌いなんだから」

 その言葉に心奏は申し訳無さそうな顔をしながらも「そうするよ」と、羽音に視線を向けながら言った。

 そう二人で話をしていると、羽音が水の入ったペットボトルを二つ抱えて戻ってきた。

「ほい、心奏の」

「ありがとう、羽音」

 心奏はペットボトルを受け取ると、鞄の中にペットボトルを突っ込んだ。


「そういえば、宿題の進み具合はどう?私は半分くらい終わったけど…」

 響彩が夏休みの宿題について話を振ると羽音が「げっ!」と声をもらした。

「僕はもう終わったよ。特に難しい範囲でもなかったしね」

 心奏が清々しいほどの笑顔で答える隣で、羽音は眉間にしわを寄せて、話が終わるのを待っているように見えた。

「羽音はどう?」

 響彩は羽音の言う事が分かっているかのように、呆れたような表情で羽音を見上げる。

「お前らが早すぎんだよ!まだ、夏休み始まって三日目だぞ?宿題なんて手もつけてねぇよ!」


 暫くの間、沈黙が流れた。

「本番前に合宿でもしたほうがいいかな?」

 心奏の言葉に響彩はコクコクと頷き、羽音はガックシとしゃがみこんだ。

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