本当の依頼
二週間後、心奏達はとある神社の境内の一室にいた。
心奏の家でお泊り会をし、三人の仲がより深まった日の昼頃に来た依頼。
それは七五三で神社に来た子供達のため、劇をしてほしいとの事だった。
「んで、なんでオレら神官の装束着せられてんだ」
ポツリと羽音がつぶやいた。
隣で巫女さんに装束を着せられていた心奏と響彩は互いに顔を見合わせ、不機嫌に腕を組む羽音に視線を向ける。
「さぁ?僕も連絡されてないし、来てすぐにここに連れて来られたし……」
「私も、右に同じく」
心奏がそう言うと、響彩も続いた。
そして心奏は部屋の入り口付近で腕を組み、先程から廊下を見つめている修治の方に目を向けた。
「センセイは着替えないんだね」
その言葉に着替え終わり不機嫌そうな羽音と、未だ帯の調整をされている響彩も修治の方に顔を向ける。
「俺は護衛兼保護者だからな。護衛に大層な格好は必要ない」
「ズリぃ……」
修治が顔を廊下に向けたまま、そう答えると羽音の不機嫌そうな顔がもっと不機嫌に歪んだ。
「オレだってそのままが良かった!これじゃあ思い通りの劇出来ねぇじゃねぇか!」
そう羽音が訴えると、廊下の方から笑い声と共に神主らしき初老の男性が部屋に入ってきた。
「はっはっは。いやはや、若いですなぁ。そうカリカリせずにこの老いぼれの頼みを聞いてくださらんか?」
初老の男性は心奏達を一瞥するとそう口にした。
心奏が驚いていると、羽音と響彩が心奏に視線を向ける。
それに気付いた心奏は、困ったように眉を下げ修治に視線を向けたが、修治の表情は何一つ変わらない。
心奏は更に困ってしまい、眉を下げたまま初老の男性の方を見た。
初老の男性は微笑んで手を後ろで組んだ。
「困らせてしまいましたかな?いや、そう難しい頼みでもないのです。ただ少しばかり売店の手伝いをね」
初老の男性が返事を待つかのように、心奏達三人を見回す。
その様子に心奏達は互いに顔を合わせた。
「これ着せられたって事は、ほとんど拒否権無ぇじゃねぇか」
羽音が頭を掻きながらまた不機嫌そうに口を開いた。
「そこまで難しい事でもないみたいだし、やってみるだけやってみたらいいじゃない?」
響彩が腕を組んでそう言うと、羽音と響彩が意見を待つように心奏の方を見た。
心奏は驚いたように目を丸くしたが、すぐに微笑んで初老の男性の方へ向き直った。
「そんなに大層な事は出来ませんが、それでも良ければ…」
心奏がそう答えると、初老の男性はにっこりと笑みを浮かべ、コクコクとゆっくり頷いた。
「そうですか、それは嬉しいですな。では、さっそくとはなりますが、この老いぼれが売店まで案内しましょう」
初老の男性がそう言うと心奏達は頷き、その様子を見た初老の男性は部屋を出て廊下の方へ向かった。
心奏、羽音、響彩も初老の男性の後に続き部屋を後にした。
「クソほど歩きにくい……」
羽音が袴の裾を持ち上げ眉をひそめる。
「しょうがないでしょ。そういう衣装だと思いなさい」
響彩が隣で文句をいう羽音に声をかける。
「センセイは外で待ってるの?」
心奏は初老の男性の後に続きながら、隣の修治に問いかけた。
「あぁ、裏手で待ってる」
「分かった」
そうして、心奏達は初老の男性の後に続いて売店へ向かうのだった。




