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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第二幕『舞台のキセキ』
51/150

大賞を勝ち取ったのは

 歌い終わった三人はステージ裏の個室にて、他の人が歌い終わるのを待っていた。

 その個室に慌てたようなノック音が響く。

「どうぞ」

 心奏(しおん)の一言に、個室の扉が開きゆなが飛び込んで来た。

「先輩達、本当にあれを即興でやったんですか!?」

 開口一番何を言い出すのかと、羽音(ねお)響彩(とあ)が呆れたような表情を浮かべる中、心奏が微笑んだ。

「君も一緒にいたんだから、分かってるはずだけど?」

「そ、そうですね……」

 ゆながそう呟きながら、ヘナヘナと心奏達が座っている椅子の方へ近寄った。

「でも、あれ凄かったですよ。まるでアイドルみたいな……」

「アイドルなんてオレらには似合わねぇよ」

 ゆなの言葉を遮るように羽音が口を開く。

「そうよ。私達はあくまで演者であって、ファン一人一人にサービスをするようなアイドルとは違うわ」

 響彩のはっきりとした否定に、ゆなは「でも〜」と続けたが、響彩の鋭い視線にそれ以上言葉を続ける事はなかった。

「まぁまぁ。それより、あとちょっとでこのイベントの大賞が発表されるみたいだよ」

 心奏の一言で個室の空気が和み、それぞれに微笑みを浮かべた。

「確か、ステージ下で発表を聞いて、何かに選ばれたらステージ上に上がる手筈だったよな」

 羽音がそう問うと、心奏が同意するように頷いた。

「絶対何かの大賞は取ってますよ!」

「絶対なんて、この世にはないのよ」

 ゆなや響彩も会話に加わり、個室での残り時間は和やかな雰囲気で幕を閉じた。


 そして、遂に大賞の発表時間となった。

 ステージの下で発表を待つ心奏に、ゆなが口元に手を当て噂話をするように小声で心奏の耳元に囁いた。

「先輩達の番号って、何番でしたっけ?」

 その真剣な声色に心奏は思わず笑ってしまい、羽音と響彩もその声が聞こえたのか、呆れたように苦笑している。

「四だよ。十組中四番目に申し込みしたからね」

「そうでしたか。了解です!」

 心奏とゆながまたステージに視線を移すと、ちょうど司会者が脇からステージに上ってくるところだった。

「え〜、大変素晴らしいイベントとなりました!これより、それぞれ大賞を発表したいと思います」

 司会者の言葉に、広場がより一層盛り上がった。

 心奏達はドキドキとした面持ちで、司会者の次の言葉を待っていた。

「うへぇ。緊張しすぎて、口から内臓出てきそう」

 羽音がボソッと呟いた。

「羽音先輩、いつもこの広場の比にならないくらいの劇場で演じてるのに、緊張とかあるんですか?」

「それとこれとは別だ。いつもは好き勝手にやれば良いが、これは他人に評価されんだから」

 ゆなの問いに、羽音は顔色を悪くしながらもステージ上を見つめたまま答えた。

「今回選ばれたのは三組です!まずは“歌うま賞”!」

「これは無い」

 司会者の声が響き、数秒も経たないうちに心奏、羽音、響彩の三人が口を揃えて言った。

 その揃いっぷりにゆなは驚きつつも、司会者の次の言葉を待った。

「栄えある“歌うま賞”に輝いたのは……九番の方!他とは一線を画した驚異の歌声でした!皆様九番の方に大きな拍手をお願いします!」

 広場に拍手が鳴り響き、九番と思われる一人の女性がステージに上がった。

「では次に参ります。次は“アイデア賞”!これは歌だけでなく他にも工夫をし驚かせてくれた一番の方!皆様盛大な拍手をお願いします!」

 一番と思われる一組の男女がステージに上がる頃には、響彩の表情はとても曇っていた。

「今回は縁がなかったかしらね」

 響彩の吹っ切れたような言葉に、心奏、羽音、ゆなも頷く。

「さて最後の賞となりました!最後の賞は……」

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