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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
42/150

EP.1『孤独は分け合うもの』

「ねぇ、僕と一緒に劇団を作ろうよ」


 道化師が座り込んでいる錬金術師に、にっこりと笑いながら言った。

 錬金術師は少し戸惑っているように視線を泳がせる。

 それでも諦めきれない道化師は、同じように座り錬金術師の手を掴んだ。


「君の力を借りたいんだ。僕の劇団は君がいないと成り立たない」


 道化師は錬金術師の手を取り、真剣な表情を向ける。

 その道化師の行動に驚いていたが、辛そうに顔をしかめると錬金術師は困ったように首を横に振った。


「オレは天才じゃない。オレは…天災だから、お前らに迷惑をかける。だから…」


 そう言いながら道化師の手を優しく離すと錬金術師は哀しそうに笑った。

 それを離れたところで聞いていた歌姫が、二人の元へ歩み寄り、腰に手を当て覗き込んだ。


「だから何?アンタは私達とやりたいの?それとも、やりたくないの?」


 道化師の後ろから歌姫が声をかける。

 歌姫の言葉に錬金術師は手を震わせたが、それを隠すようにギュッと握った。

 そして、俯くと震える声を絞り出し叫んだ。


「オレに構ってたらお前らも孤独になるんだぞ!オレに構うんじゃねぇ!オレはこれまでもこれからも独りでいいんだよ‼」



 ――本当に?



 その言葉に錬金術師は目を見開き、パッと顔を上げた。


「本当に……独りでいいの?」


 それは道化師の心からの問いだった。

 笑っても、怒っても、悲しんでもいない。

 ただ真剣な眼差しで錬金術師を見つめる道化師の姿がそこにあった。


「僕は嫌だよ。僕が独りになるのも、君が独りでいるのも。だから僕らで孤独になろうよ。孤独の仲間ってさ、矛盾してるけど…」


 道化師がクスっと笑うと、歌姫もつられて微笑んだ。

 その様子に錬金術師の少年は困ってしまった。

 埃を除けるように服を叩き、立ち上がった道化師の目を錬金術師は見つめた。


「そんなのおかしい。孤独は分け合うもんじゃ――」


 錬金術師の言葉を遮るようにして、道化師が錬金術師の手を取り立ち上がらせた。

 そして、ふふっと微笑むと光のある方に歩き出す。

 歌姫も道化師に続いて歩き出した。


「おかしくなんかないよ。孤独は分け合うものだ。どれだけ孤独を小さく出来るか試してみようよ!きっと……楽しいよ?」


 道化師が振り返り、錬金術師に手を差し伸べる。

 後ろからの光で道化師はとても神秘的で神々しく、錬金術師の目に映った。

――きっと。きっと、お前なら。

 錬金術師は道化師の手を――。

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