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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
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隠された出口

 建物の入口まで戻ってきた心奏(しおん)達は、扉が開くと隠れるような位置に小さな穴があった。

「やっぱりね」

 穴は成人男性がしゃがんでやっと入り込めるような小さな穴だ。

 その穴の前にしゃがみ込んだ心奏は自信満々に呟いた。

「他には仕掛けなんてなさそうだったし、この道がゴールに繋がってるだろうね」

 心奏がそう呟くと、羽音(ねお)は感じていた疑問を心奏にぶつける。

「そういや、お前。いつから気づいてたんだよ」

 羽音のその言葉に心奏は目を丸くしてたが、ふっと微笑んだ。

 そして、立ち上がると首を少し傾げた。

「最初から。って言っても建物に入るまでは予測でしかなかったけどね」

 その言葉に羽音は耳を疑ったように目を見開いた。

――心奏は建物に入る前から仕掛けに気づいていた。

 その事実に羽音は驚き、響彩(とあ)は納得したように頷いていた。

「じゃあ、なんで普通に進んでったんだ?」

 羽音の問いにまたも心奏は微笑んでスラスラと答える。

「だって、その方が楽しいじゃん」

 ニコッと笑って言った心奏の言葉に羽音が表情曇らせると、その事など目に入っていないかのように心奏はササッとその穴の中を進んで行った。

 その後を響彩が続き、そしてポカンとしてた羽音の順で潜った。

 迷路は本当にお客さんを騙すためのものらしく、穴を潜った先はただの一本道で、その先に出口が見えるような簡素な造りの場所だった。

「ここまで来て簡素は面白くないなぁ……」

 心奏がつまらなそうに呟くと、穴の下でまだポカンとしゃがみ込んでいた羽音に手を差し出した。

「さぁ、行こう。羽音」

 心奏のその何気ない言葉に、羽音は懐かしそうに目を細め困ったように微笑んだ。

「そう……だな」

 そうして、羽音は心奏の手を取り立ち上がった。

「じゃあ、開けるわよ」

 響彩が出口のドアノブに手をかけ、扉を開けた。

 扉を開けた先にはスタッフが立っており、いかにもな感じに驚いていた。

 そしてハッとしたように近くに置いてあったベル鳴らして「おめでとうございます〜!」と叫んだ。

「ありがとうございます」

 スタッフの声に心奏が静かに微笑んだ。

 するとスタッフの人がお菓子の詰め合わせを三人にそれぞれ手渡した。

「お客様が今日初めての迷路突破者なんですよー」

「へぇ。そうなんですね」

 心奏とスタッフが会話している一方で、羽音は貰ったお菓子の詰め合わせをクルクルと回し見ていた。

「もうそろそろ戻りましょ。休憩時間も終わっちゃうわ」

 響彩の一言で心奏も「そうだね」と言うと、スタッフにペコッと頭を下げ迷路の建物を離れた。


「なぁ、さっきの迷路。ガチでいつから気づいてたんだ?」

 羽音が休憩施設へ行く道中に、心奏に問いかけた。

「うーん。疑問点が三つあったんだよね。羽音達が来るまで観察してたしね」

 ニコニコと笑いながら話す心奏を、羽音と響彩は呆れたように見つめた。

 それが見えていないのか、ツラツラと心奏が説明を始める。

「まず入口と出口が近かった事。次にスタッフさんが扉閉るタイミングかな。この時点でもう確信したかな」

 心奏の言葉に羽音は「マジか」と顔をしかめた。

 その隣で響彩は「なるほど」と頷いている。

「最後に迷路の形状。迷わす気ゼロだったよね〜」

「それは私も思ったわ」

 心奏と響彩が迷路について話している間、またも羽音は蚊帳の外でポカンとしていたのだった。

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