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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
40/150

迷路の出口は

「そういえば、休憩が終わったら演劇に行かなきゃだけど。準備は大丈夫?」

 響彩(とあ)が聞くと、心奏(しおん)羽音(ねお)は自信満々に頷いた。

「もちろん!」

「もちろんだ!」

 そんな事を話してたらスタッフに連れられて先程迷路に入っていったカップルが出口から出てきた。

 いかにも満足がいかなそうな表情をカップルは浮かべていた。

 そのカップルを見ていると、入口のスタッフが心奏達を建物に招いた。

「お次の方どうぞ」

 内開きでとても開けにくそうにスタッフは扉を開けた。

 建物の中に入ると、天井まで届く壁が左右にあり、一本道になっている。

「とりあえず、真っ直ぐ進もうか」

 そうして、心奏達が進み出すとやっと扉が閉まる音がした。

 心奏達は迷路をまっすぐ進んで行き、左右と中央に道が伸びた分かれ道までやって来た。

「ここはとりあえず、人の傾向に頼って左に行こう」

 そう言う心奏に何かを言いたげな表情だった羽音は「おう」と返事すると、心奏に続き響彩、羽音の順で左に進んだ。


 暫く進むと、突き当たりが心奏達を出迎えた。

 右にも左にも道はない。行き止まりだ。

「行き止まりね。残り道は二つ、中央と右だけど」

 三人が道を引き返してるときに響彩がそう言った。

「そうだなぁ。次は右に行ってみるかな…」

 心奏がそう呟いたと同時に三叉の道に戻ってきた。

 そこを右に行き、しばらく進んだらまた分かれ道に出た。

「また右に行こうか」

 心奏が指差して右に進んで行く。

 羽音と響彩もその後に続いたが、さっきよりも早く行き止まりになっていた。

「次はどこ行くんだ。さっきん所左か?」

 羽音が頭を掻きながらそう尋ねると、心奏が首を横に振る。

 そして少し考えた後、何かを楽しんでるような口ぶりで言った。

「やっぱりここのスタッフさん達、僕らにゴールさせる気ないよね。面白い仕掛けしてるし……」

 心奏はもう仕掛けが解けたようで、行き止まりに設置されていた壁をコンコンとノックした。

「まぁ、ゴールさせたくないのは普通なんじゃない?ここ、景品が用意されてるし。ゴール出来なければ出来ないほど経費少なく出来るしね」

 響彩の言葉にウンウンと頷く羽音。

 だが、心奏だけは首を横に振った。

「そうじゃなくて。普通に楽しんでるっていうか、迷ってる人達見て面白がってるっていうか……そんな意地悪い感じ」

 心奏は言葉とは裏腹に清々しい表情を浮かべており、それを見て響彩が考え込む。

 そして、少しの時間考え込むとハッと顔を上げた。

「まさか……」

 響彩の表情と言葉に、心奏はまるで言わなくても分かると言うようにコクンと頷いた。

 その一方で羽音はポカンとしている。

「羽音は理解してないみたいだね。じゃあ、僕からヒント。僕達がこの建物に入ったとき、扉ってどうやって開いてた?」

「確か、内開きだったな。スタッフがすげぇ開けにくそうにしてたような気がする」

 羽音のその言葉に心奏が微笑みながらウンウンと頷いた。

 だが、羽音はまだ分かっていないようで首を傾げている。

 今度は響彩がため息をつきながらヒントを出した。

「なんでわざわざ内開きにしたのかしらね。それこそ、外にいるスタッフさんからしたら開けにくい以外の何物でもないのに…」

 その響彩の一言に、何か分かったようで羽音は拳をポンッと手の平に打ち付けた。

 そしてニコッと微笑んだ心奏を先頭に、三人は来た道を戻るのだった。

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