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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
4/150

桃太郎と演劇

「じゃあ、僕の教室集合ね」

 そう言って心奏(しおん)達三人はそれぞれの教室へ荷物を置きに行った。

 そして荷物を置いた羽音(ねお)響彩(とあ)はすぐに、心奏のクラスである2年A組の教室に集まり、心奏の席を囲むようにして座る。

「んで、内容どうすんだ?」

 机に頬杖をついた羽音が、ルーズリーフを鞄から取り出している心奏に向かって問いかける。

「子供向けなら、王道で攻めるのはどうかな?」

「王道?」

 響彩が首を傾げると心奏は得意げに、ルーズリーフにシャーペンを走らせる。

『とある魔法使いと騎士と魔王のお話』

 心奏がルーズリーフの一列目にデカデカとそう書くと、下に次々と文字を連ねる。

 それを二人は黙ったまま見つめる。


『魔法使い(主人公)…魔王を倒すために旅する人

 騎士…魔法使いについていく人(補佐)

 魔王…凄く悪くて強い人。魔法使いに倒される』


 そこまで書き記すと、心奏が顔を上げ自信満々に微笑んだ。

「こんなのはどう?王道だけど、ストーリーを考慮したらのっぺり感は無くなると思うし」

 自信満々な心奏の表情に、響彩が呆れながらもニコッと笑う。

「私はいいと思う。羽音はどう?」

「オレも特に問題はねぇよ」

 羽音も椅子の背にもたれかかると、コクンと頷いた。

「じゃあ、次はキャスティングと物語と……」

 心奏がつらつらと先程の文章の下に書き連ねていく。


『魔法使い…響彩、騎士…心奏、魔王…羽音』

『魔王を倒すために旅に出た魔法使い。その道中で出会った不思議な騎士と共に魔王の元に辿り着き、魔王を懲らしめる。』


「みたいなね」

 心奏のその一言でルーズリーフを覗きこんでいた二人が顔を上げる。

「桃太郎みてぇな話だな。いっそ桃太郎モチーフでやるか?」

「魔王が慌てて謝るの?想像しただけで面白いとは思うわよ」

 二人がケラケラと笑っていると、大きな声がそれを遮った。

「それだ!!桃太郎なら子供達も分かると思うし、何よりストーリーが日本人の頭に入りやすい!それでいこう!!」

 心奏はニコニコと笑いながら、ルーズリーフの下部にデカデカと『桃太郎モチーフ』と記入した。


「ってか、オレが魔王かよ…」

 羽音がクスッと苦笑する。

「羽音はこういう役がやりやすいかなって思ったんだけど、別のが良かった?なら僕のと交換する?」

「いや、オレが魔王でいいよ。心奏が魔王とか想像出来ねぇし」

 その言葉に響彩はコクコクと頷き、心奏はキョトンとしている。

 次の瞬間、他の生徒達がぎゃあぎゃあと騒いでいる声が階段や廊下から聞こえ始めた。

 時計の針も8時半を指そうとしている。

「じゃあ私は教室に戻るわね。また昼休みに…」

「うん。また後で」

 響彩は椅子を元の場所に戻し、手を振りながら教室を去る。心奏もニコニコと微笑みながら見えなくなるまで手を振った。

 しかし羽音は机に突っ伏したまま瞼を閉じ、寝息をたてている。


――キンコーン・カンコーン――

 8時半を告げるチャイムが鳴り響いた。

 それと同時にA組の担任教師が教室へ入ってくる。

「はい、皆さん席に着いて下さ…」

 担任教師の視線の先には羽音の背中があり、それを見つけた瞬間大きく息を吸う。

「草柳!!」

 羽音はビクッと肩を震わせると、次の瞬間には「すんません〜!!」と言いながら教室を出て廊下を駆けていった。

 そんな羽音を見ながら担任教師がため息をついた。

「何で教えてやらないんだ?神々(みわ)

「聞かれなかったので…」

 ポカンッと答える心奏の様子に、担任教師がまたため息をついた。

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