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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
39/150

迷子と迷路

 ――翌日。

 テーマパークに手伝いで来ていた心奏(しおん)達は、とあるアトラクションの前で新しく出来た施設のビラを配っていた。

 お客さんの波が切れた時、羽音(ねお)は心奏が昨日の事を覚えているのか気になり、心奏の耳元で呟いた。

「心奏。昨日の事覚えてっか?」

 羽音の耳打ちに、心奏は首を傾げる。

「昨日?ん〜、お開きって言葉が聞こえた気がして、何か言ったような……僕、変な事言ってた?」

 心奏の心配そうな表情に羽音はハハッと吹き出した。

「別に、何も言ってねぇよ」

 笑顔でそう言った羽音の様子を見て、ふふっと心奏も微笑んだ。

「そっか……」

 そう言った心奏の笑顔の後ろから、響彩(とあ)が羽音を睨んでいる。

 まるでそれ以上何も言うな。というような、鋭く貫かれるような視線だった。

「ハハ、ハ……」

 思わず羽音は苦笑いを浮かべたのだった。


 ビラを配り終えた三人は休憩を取るため、関係者のみ立ち入りが許される施設に寄り、その後テーマパーク内を探検していた。

「ねぇ、心奏どこ行ったの?」

 ふと、辺りをキョロキョロと見回していた響彩が口を開いた。

 先程心奏がいたはずの場所には人影がなく、羽音は表情を曇らせる。

「はっ?ヤバくねぇか?これ……」

 羽音の言葉を合図に、羽音と響彩は走り出していた。

「あいつが行きそうな場所とかあったか⁉」

「パンフレット見たとき、目を輝かせてたところがあったから、そこかも…!」

「んじゃ、そこまで急ぐぞ!」

 響彩の案内のもと、風を切って二人は走る。

 暫くすると、まあまあな大きさの建物が見えてきた。

 そして、そこに並ぶ見覚えのある後ろ姿も。


「「心奏‼」」


 見覚えのある水色の髪の間から、ピーコックグリーンの瞳が覗く。

「あっ、早く早く〜。面白そうだったし、並んでみたんだ。羽音達なら僕の事見つけてくれるって思ってたし」

 心奏の言葉に息を切らしていた羽音は驚きのあまり、危うく転びそうになった。

 響彩は転びそうになった羽音を支えた後、響彩はムッとした表情で心奏を睨んだ。

「勝手にどこか行っちゃ駄目って言ったでしょ!ただでさえ広いんだから!」

 響彩の言葉に心奏は俯くとコクンと頷いた。

「ごめんなさい……」

 心奏の様子に響彩は、はぁとため息をつくと「まぁ」と続けた。

「とりあえず、今はこの迷路楽しみましょうか。せっかく心奏が並んでたしね」

 響彩の優しい声に、心奏はうきうきしながら目を輝かせ、羽音の腕をとって隣に並ばせた。

 その行動に響彩も微笑みながら羽音とは逆の、心奏の隣に並んだ。


 迷路はよくある外に板を建てたような安っぽいものではなく建物で、入口と出口にはそれぞれスタッフがおり、十分経っても出て来なかったら強制的に出口まで連れていかれる仕様らしい。

 心奏達が合流してから、三組迷路に入って三組強制退場という程、そこは大人向けの迷路のようだった。

「建物自体はそんなデカくないし、二階もない。なのに三組中三組退場なら何か大掛かりな仕掛けがあると考えちまうな」

 羽音の言葉に響彩は頷いた。

 心奏達の後ろに並んでいる人達も同じ事考えているのか、それぞれ作戦会議中だ。

 すると、心奏達のすぐ前のカップルがスタッフの案内のもと、迷路に入っていった。

「どんな仕掛けなんだろう?楽しみだね!」

 心奏の言葉に、羽音と響彩が呆れたようにため息をついた。

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