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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
38/150

確信犯

――本番から二日過ぎた25時頃…。

 羽音(ねお)は手元にあるロボットを試行錯誤させていた。

 手に持ったドライバーと机に広げた部品でロボットに色々な事を施していく。

「なんでもっと早く気づかねぇんだ。優雅にクラシック聞いてる暇なかったじゃねぇか!」

 羽音の言葉に机の上で本に立て掛けているスマホから、焦っているような声が響く。

『ごめん!小さなテーマパークの手伝いだったんだけど、ちょっとした演劇やってほしいって言われてたの忘れてた!本当にごめん!』

 心奏(しおん)がカツカツと机に鉛筆の当たる音を響かせ、簡潔に事の顛末を羽音と響彩(とあ)に伝えた。

『私は別にいいけど。新しい衣装作らなくていいしちょっとした小物作るだけだし。二人は大変ね。予定表とかロボットとか…』

 響彩の声に一瞬、表情を曇らせながらもカチャカチャとロボットをいじる。

「っしゃあ、一体目!」

 羽音がそう叫ぶと、心奏と響彩がスマホ越しに拍手を送った。パチパチという音が響くがスマホ越しと言う事もあり、あまり響かない。

「わー、すごい。すごい」

 響彩の気持ちのこもっていない言葉にムッとした表情を浮かべながらも、手元の作業に集中しようとする。

「あと何体だった?あと何体整備すりゃいいんだ!?」

 羽音が次のロボットを手に取り叫ぶと、響彩が『あと2体よ』とガヤを入れたが、すでに集中した羽音の耳には届いていないようだった。

 しばし無言の時間が続いたが、心奏の言葉で無言が途切れた。

『お、終わった〜』

 その言葉に響彩が『お疲れ様』と声をかけるが羽音はなおも集中していて気がつかない。


 羽音が落ち着いた頃には時計の長針が26時を回っていた。

「お〜い、お前ら。とりあえず三体出来たが、これで数あってたか?」

 羽音が控えめにスマホに向かってそう聞くと、ピコピコという音と共に響彩が答えた。

『あってるわよ。それよりもアンタがずっと作業してるから心奏寝落ちちゃったんだけど?どうすんの?』

 響彩のその言葉に混ざって心奏のものであろう、すぅすぅという寝息がスマホから聞こえる。

 寝息はだいぶ大きく聞こえるため、スマホの近くで寝ているようだ。

「心奏、また机の上で寝ちまってんの?次の日、首やら腕やらが痛いって言うんじゃねぇのか?」

 羽音が鼻で笑いながら、目を細めていると響彩からとんでもない言葉が飛び出した。

『いや多分、今日はベッドで寝てると思うわよ。声が聞こえなくなる前、ゴソゴソいってたし、最後、私に「おやすみ。僕が寝てたら電話切って…」って戯言言って寝息が聞こえ始めたから』

「確信犯かよ!!」

 響彩の言葉に思わず突っ込むと、呆れたようにため息をついた。

 その間もずっとスマホから寝息とピコピコというゲーム音が聞こえている。

「んじゃ、心奏の言葉通りにお開きにすっか」

 羽音がそういうと響彩も『うん』と返事をすると、スマホから『ん〜』というような声が聞こえた。


 拍子抜けした二人は互いに黙って次の言葉を待っていると、ふにゃふにゃとした声が響く。

『あれ?ねおおわったの?おつかれさま〜。じゃあ、おやすみ〜』

 ピコンッと心奏のアイコンが暗くなり、心奏が通話から抜けた。

「いつから聞いてたんだ?ってか、通話切る気力はあったんだな……」

 羽音の言葉に響彩も「うん……」と答えた。

「じゃあ、私達も寝ようか。おやすみ、羽音」

「おお。おやすみ」

 互いに挨拶を交した後、通話はそこで切られたのだった。

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