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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
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演劇『ヒガンの雨の歌(1)』

 昔から、人々は死を恐れていました。

 いつ、どこからとも無く人々を襲う死は恐ろしいものと考えられていたからです。

 そして死を操り、魂を攫っていくと言われている死神を死と同様に人々は恐れていたのでありました。


羽音(ねお)「君も死んでしまったのか…」


 鎌を片手にヒガンが静かに呟きます。

 その後ろからゆっくりとヒガンに近づいてくる陰がありました。


心奏(しおん)「ま〜た魂を狩るのを戸惑ってるの?早く慣れてよ、これが俺らの仕事なんだから!」


 スノードがヒガンの横から鎌を振り降ろし、倒れているロボット(人間)に繋がっていた光を切り離しました。

 そして、そのまま鎌をヒガンの首に当てると嘲笑うようにしてスノードが告げます。


心奏「そんな事してると、そのうち首をはねられて人間にされちゃうぞ〜」


 人間。それは死神界では愚かで残酷な生き物という噂でした。

 そして、死神界で不祥事を起こせば人間にされるとも――。


羽音「そんな事言わないでよ。一応ちゃんと仕事してるから…」


 ヒガンはそう言うと、とぼとぼとスノードが立っている所とは逆方向へ歩き出しました。


心奏「あんまり人間界に居座んなよ。人間に見つかると面倒なんだから」

 そのスノードの言葉も虚しく、ヒガンはその場から居なくなってしまいました。

心奏「あいつ、本当に死神かよ。面白ぇ奴」

 スノードがクスクスと笑いながら呟きました。



 ヒガンはスノードと離れると独り木陰に腰掛けます。

 爽やかな風がヒガンの髪を撫でました。

 その風に紛れて綺麗な鼻歌が聞こえてきました。

 少女が日の当たる場所で歌を唄っています。


羽音「綺麗だな…」


 ヒガンはいつしかその少女の歌に魅了されていました。

 その少女の名はアリム。踊り子一族の末裔であり、一族の中で唯一踊れない少女でした。

 ヒガンは次の日も、その次の日もアリムの歌を聞きにその木陰に足を運びました。死神の仕事を放り出してまで。


響彩(とあ)「〜♪」


 そのヒガンの様子をよく思わない人物もいました。

 スノードです。


心奏「まただ。またあの女の歌」

 スノードは眉間にしわを寄せました。

心奏「ヒガンは俺が先に目をつけたんだ。あんな人間の女に盗られてたまるか…」

 歌を聞くヒガンの耳には、スノードの怒りが籠った声は届いていませんでした。



 その日もヒガンは歌を聞きに来ていました。

 ですが、その日はアリムが唄いに来ていませんでした。


羽音「何かあったのか…?」


 ヒガンはアリムの行方を探す事にしました。

 森の中、川の側、村の周りなどいろんな場所を見て回ったが、アリムの姿はどこにもありませんでした。

 そして花畑を見に木の間から顔を覗かせたときです。

 そこには、花畑の中央で倒れているアリムと、そのアリムから光を切り離そうとしているスノードの姿がありました。


羽音「止めろ!」


 ヒガンは思わずそう叫ぶと、鎌を振り上げたスノードを押し退けました。


心奏「クソ…ッ」


 そう言うとスノードはマントを翻して逃げていきました。

 しばらくスノードの去っていった方を見ていたヒガンだったが、ふと我に返ったように呟きました。


羽音「やってしまった…」


 そうヒガンは死神の禁忌とも言われる事を先程してしまったのです。

――人間の魂を狩る事を止めてはいけない。

 それが死神界の掟の1つでした。

 たった今その掟をヒガンは破ってしまったのです。

 ヒガンが頭を抱える横でアリムがピクッと身体を動かしました。


羽音「ヒッ…!」


 ヒガンはアリムが起きる事を恐れ、情けない叫び声をあげた後、森の中に逃げ込みアリムの様子を伺いました。

――死神は人間に見つかってはならない。

 死神界の掟の一つにそういうものもありました。

 ヒガンはそれを護ろうとしたのです。

 流石に掟を二つも破る事はヒガンにも出来なかったのでした。

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