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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
23/150

プラセボ効果

 屋上に着いた三人は各々座り昼食を食べ始めた。

「それで?まだクラシックは克服出来てないんだっけ?」

 響彩(とあ)羽音(ねお)の顔を覗き込みながら言う。

「あぁ。まいで(マジで)意味分あんえぇ(かんねぇ)…」

 羽音はカレーパンを口いっぱいに頬張るともごもごと喋る。

「そうだねぇ。いっそ、クラシックじゃないって思って聞いてみたり?それも難しい話か……」

 心奏(しおん)が卵焼きを箸で切りながら羽音に問う。

「んぁ、そうだなぁ。まぁ、もう少ひがんあって(し頑張って)みるわ」

 羽音はまだ口をもごもごさせている。

 そして、ごくんっと飲み込むと心奏に問いかける。

「そういや、台詞とかもう出来てんのか?」

 心奏はコクンと頷くと「でも…」と繋げた。

「まだまだ荒削りな部分が多いし、もう少しってところかな。今週中には練習始められると思うよ」

 羽音は「そっか」と言うと、またカレーパンを頬張った。

「まぁ、まだ9月だし心奏も羽音も急ぐ必要ないんじゃない?私は急がないと間に合わないけど」

 響彩が二人に向かって言う。

 心奏と羽音はその言葉に同時に頷いた。


「そういや、昨日あった劇団の舞台見たか?まぁまぁ良い物だったぜ」

 羽音が思い出したかのように昨日見たテレビ番組について口を開いた。

「昨日はテレビ見てないなぁ。自分の部屋で台本とか考えてたしね」

「私も衣装の借り縫いしてたから」

 心奏と響彩がそれぞれに言った。

 羽音は「なんだよ」と言いながらもスマホを取り出し、劇団について調べる。

「コレだよ、このコスモスって劇団。ちっちぇ子供もいっぱいいてよ。凄かったんだよな」

 羽音が嬉しそうにスマホの画面を二人に見せた。

「へぇ、初めて聞いたな。劇団コスモス?って」

 心奏がスマホの画面をスクロールしながら言うと「同じく」と響彩が心奏の横から顔を覗かせる。

「あんま有名じゃねぇのか?こいつら」

 羽音がそう呟くと、心奏が「これ見て」とスマホを指差した。

 そこには『()()()()()()()()()()()』の記事が映し出されていた。

「そりゃ、知らないわよね…」

 響彩がボソリとそう言うと、羽音と心奏が「うん」と頷く。

「はぁ。有名な劇団かと思って見てたのによ〜。話して恥かいたわ」

 羽音は食べ終わったカレーパンの袋を林檎の形に折り、床に置きながら言った。

「でも、凄かったんでしょ?」

 響彩が煽るように笑いながらそう聞くと、羽音は不機嫌そうな顔で俯くと、頭の辞書から出た言葉を叫んだ。

「プラセボ効果だっつーの!」

 羽音の必死な言葉に、心奏がクスッと笑った。

「じゃあ、次見たのが有名な劇団でもノセボ効果が出るかもね?」

 心奏は面白そうに羽音に問いかけた。

 クスクスと笑う二人の様子に羽音はいっそう不機嫌そうな表情になった。

「あぁ、もう!もう昼休みも終わるし教室戻るぞ!」

 その羽音の言葉にお弁当を片付け終わった二人が「はーい」と言いながら立ち上がる。

 羽音の後を追うようにして、心奏と響彩の二人が歩き出した。


「じゃあ、また放課後だね」

 そう言うと心奏は「またね」と言いながら、A組の教室へ入って行った。

「私も教室に戻るから。また後で」

 響彩も羽音の肩を軽く叩きながら言うと、C組の教室へと入って行った。

 羽音は教室の目の前まで行ったが、一瞬教室に入るのを躊躇い、立ち尽くした。

 だが、すぐに扉を開け教室の中へと入ってピシャリと扉を閉めたのだった。

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