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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
22/150

激辛カレーパン

――キーンコーン・カーンコーン――

 お昼のチャイムがなり、教室に居た人々がそれぞれにお弁当を広げたり、教室の外に飛び出していったりしている。

 心奏(しおん)が教室を出ると、響彩(とあ)がお弁当を持って待っていた。

「心奏、一緒にどう?」

「うん。羽音(ねお)も呼びに行こうか」

 心奏の言葉に響彩は微笑みコクンと頷いた。

 二人はもうすっかり静かになった廊下を進み、B組の教室を覗き込んだ。

 真ん中辺りの席で机に突っ伏している羽音を見つけると、心奏が羽音に向かって叫んだ。

「おーい、羽音ー。お昼一緒に食べよう?」

 その声が聞こえたのか、羽音はふっと顔を上げると、席を立ち「おう」と返事をした。


「あっ、神々さんだ。いつ見てもかっこいいな〜」

「あんたに神々くんはまだ早いって〜w」


「天野さんは今日も可愛いな」

「おまえには雲の上の存在だわw」

「確かになw」


「おっ、また草柳のやつ天野と神々に呼ばれてんぞ。天野と神々もよく草柳とつるんでるよな〜」

「俺ならゼッテー無理だわw。あんな奴」

「おれも〜w」


 羽音のクラスメイトがボソボソと囁く。

 そんな囁きの間を縫って羽音が教室から出てきた。

「羽音、大丈夫?」

「んー?おう。待たせたな」

 心配そうな心奏を他所に、羽音はいつもの事と言わんばかりの返答をした。

「アイツら今度痛い目合わせてあげましょ」

 響彩のいつもより低い声と鋭い視線に心奏と羽音が目を丸くする。

「程々にね?」

 心奏が苦笑いでそう言うと、空気を変えるように「今日も購買?」と羽音に尋ねた。

「あぁ、今日はあの辛いカレーパンが出るらしいしな」

 羽音がそう答えると同時に、購買に向けて三人は歩き出した。


「ああいう奴ら程、群れてないと何も出来ない癖に……」

 響彩はまだ怒りが治まらないというように、ブツブツと小言を言っている。

 心奏は羽音と響彩の事を心配するように苦笑いをすると、話を変えるように羽音の方を見た。

「そういえば、ヴァイオリンとクラシックの方はどう?」

 心奏の言葉に羽音の表情が曇る。

 そして頭を掻きながら、振り返る事もなく答えた。

「ヴァイオリンはどうにかなりそうなんだけどよ、クラシックは…クラシックはどう聴いても雑音(ノイズ)なんだよな〜」

 羽音の言葉に、心奏が顎に手を当てる。

「うーん。どうしたらちゃんと音楽として聴こえるようになるんだろう?」

 その言葉に羽音は「さぁな」と言いながら廊下を右に曲がった。

 購買の目の前まで来ると、羽音達は大勢の人に行く手を阻まれた。

 どうやら今日は『幻のメロンパン』と呼ばれる手作りメロンパンが発売される日らしく、購買の隅のホワイトボードに張り紙がされていた。

「今日は混んでんな。いつもはガラガラのくせに…」

「幻のメロンパン?の発売日らしいわよ。ほら」

 響彩がホワイトボードを指差す。

 心奏達三人は身動きが取れずにいると、購買にいた女性が羽音を見つけたようでカレーパンを持ってこちらに歩いてくる。

「羽音くん、今日も来てくれてありがとね〜。コレいつものね」

 女性がそう行って羽音にカレーパンを手渡す。

「こちらこそ、いつもありがとな。おばちゃん」

 羽音がカレーパンと交換で小銭を女性に手渡した。

「またおいでよ〜」

 カレーパンを受け取った羽音に女性が声をかける。

「おう」

 羽音の返事に女性が手を振る。

 その女性の行動に羽音も手を上げる形で応じ、購買を後にしたのだった。

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