表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
2/150

二人の幼馴染

 雨の音が響く病室。

 心奏(しおん)は一人静けさの中、文庫本を広げ感傷に浸っていた。

 無機質な光を放つ蛍光灯は、静かな病室をより一層不気味にする。


――コンコン――


 病室の扉がノックされた。

 心奏が文庫本から目線を扉の方へ移すと、花を愛でるかのような穏やかな声で「どうぞ」と扉の向こう側にいる人物へ声をかけた。

 ガラガラとゆっくり扉が開かれると、透き通ったはっきりした声が病室に響いた。

「よぉっ、心奏!元気だったか?」

 幼馴染の一人、羽音(ねお)が特徴的なタレ目をくしゃっと細めた満面の笑みで扉の向こう側に立っていた。

「病院なんだから、もう少し声のトーン落とせないわけ?」

 羽音の後ろからチラッと顔を覗かせ、もう一人の幼馴染である響彩(とあ)が不機嫌に眉をひそめ呆れている。


「二人とも久しぶり。立ち話もなんだし、入ってきたらどう?」

 心奏が手招きをしながら、二人に病室の椅子を勧める。

 それに甘えるように二人は病室の中へ入ってくると、椅子をベッド脇まで持ってきて腰かけた。

「元気そうで何よりだよ…」

 その言葉を遮るように、いきなり羽音が心奏の手を握った。そして、握手をするかのように振ったり、持ち上げたり、両手で包んだりした。

「どうしたの?」

「いやぁ、また痩せたなぁと思ってよ。ちゃんと食べてんのか?」

 首を傾げながら自身の手を見つめる羽音に、心奏は思わずクスッと笑った。


「なんだよ…」

 男らしい太い眉が羽音の眉間にシワを作り、アメジストの瞳が不機嫌に揺れる。

 その様子にふにゃっと垂れた目を細める心奏。と隣でクスクスと笑う響彩。

「病院なんだし、僕が望まなくても食事が出てくるんだ。食べてないわけないだろう?」

「まぁ、それもそうだけどよ…」

 まだ何か言いたげだが、羽音はその続きを言葉にはしなかった。

「少しは考えて口に出しなさいよ。アンタはいつも考え無しに喋るんだから」

 響彩の言葉に何か反論をしようと羽音は不機嫌な顔のまま口を開くが、図星を突かれているからか、そのまま目を逸らした。


――コンコン――


 三人が一斉にノックされた扉を見つめた。

「どうぞ…」

「失礼するよ」

 扉をガラガラと開けて入って来たのは、白衣を身に着け丸い眼鏡をかけた若い男性だった。

医者(せんせい)。どうかしたんですか?」

 心奏が医者と呼んだ人物はくしゃっと目を細めて笑い、そして「少し邪魔するよ〜」と扉を静かに閉めると、資料を見ながらベッドまで近づき、そのままベッド脇にしゃがみこんだ。

神々(みわ)くんねぇ、心臓と脈拍が落ち着いてきたから自宅療養に移ろうか。また何かあったら入院になっちゃうけど」

 ニコニコと微笑みながら言う医者に驚きを隠せない心奏が、自身の胸に手を当てながら医者を見つめた。


「いつ、からですか…?」


「明日は親御さんとか諸々に連絡しなくちゃいけないから、明後日からかな〜」

 その言葉に真っ先に反応したのは張本人の心奏ではなく羽音だった。

「っしゃあ!心奏、実質自由だぞ。オレたちと一緒に学校行けんじゃん!」

 興奮が抑えられず、椅子から立ち上がった羽音に医者は「病院では静かに」とニコッと笑う。

 そして、右手の人差し指を立てて言葉を続けた。

「一週間。一週間だけは安静にお家で過ごしてください。その後は学校行ったり遊びに行ったり、好きに過ごしてくれていいですからね〜」

「はい…!」

 心奏は大きく頷くと、明後日という日が来るのを待ち遠しく思いながら、医者の背中を見送るのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ