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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
終幕『道化師に憧れた僕が自分の病を治したあと』
149/150

成人

 志賀(しが)が案内したのは、海の見える公園だった。

 心奏(しおん)達三人はなぜここに連れて来られたのか分からず互いに顔を見合わせていると、心奏の視界を何かが覆った。

「だーれだ」

 視界が突然暗くなったことに驚いていた心奏だったが、聞き覚えのある声が耳を掠め、ゆっくりと瞬きをすると口元を緩めた。

「久しぶりだね。ヴィネ」

 そう言うと視界が開け、心奏が振り向いて後ろを見ると最後に見たときと変わらないヴィネが、両手を上に上げるようなポーズを取り立っていた。

「久しぶりだな。心奏」

 ヴィネが手を下ろしそう言いながら微笑むと、心奏も満面の笑みで応えた。

「わっ!」

 ふと、ヴィネの後ろに立っていた響彩(とあ)が悲鳴に近い叫び声をあげると、その場にいた全員が響彩の方を見た。

 すると誰かが響彩の腰に手を回し抱きついているのが見えた。

「ジブンも居ますよ。お久しぶりですね。皆様」

 響彩の後ろから千凜(せんり)が顔を出し、特徴的な笑みを浮かべる。

伊桜(いざくら)さん、気が済んだのなら話してください」

 千凜の言葉を聞き終えてから響彩がそう言うと、千凜はパッと手を離してヴィネの後ろに立った。


「伊桜さんもお久しぶりですね。どうして日本に?」

 心奏がヴィネと千凜に尋ねると、二人は顔を見合わせた。

 そして、ヴィネは心奏を指差してフッと微笑んだ。

「成人する頃に会いに行くと言っただろ?」

 確かに現在の法律上成人年齢は十八歳だが、ヴィネがどうしてそのことを知っているのか、心奏は理解出来ず首を傾げた。

 その様子を見た志賀はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。

 固まってしまった心奏の肩を組んで、志賀とヴィネが見える位置に移動した羽音(ねお)は、二人を交互に指差して口を開いた。

「要センパイはヴィネさん達に会うためにアメリカに行って、成人したことを伝えて日本に戻ってきた。つまりはそういうことか?」

 羽音がそう二人に尋ねると、志賀がコクンと頷いた。

「そうじゃよ。わしが二人に伝えたんじゃ」

「日本の成人年齢は二十歳だと思っていたので、志賀さんの話を聞いて驚きましたよ。まさか十八歳になっていたとは……」

 千凜がそうニコニコと話すと、千凜の後ろにいた響彩が心奏達の側まで歩いて来た。

「まぁ、お酒や煙草は二十歳からだけどね」

 響彩がそう言うと、ヴィネが驚いたように目を丸くして、口元を手で覆った。

「嘘だろ。やっと心奏と酒が飲めると思ったのに」

「残念じゃったな。心奏達が飲めるようになるまでは、わしが酒に付き合ってやろう」

 ヴィネが驚愕の表情を浮かべる隣で、志賀はその様子を楽しんでいるように笑って、ヴィネの背中をバシバシと叩いた。

「アンタとの酒はもういい……」

 ボソッと呟かれたヴィネの言葉に、次は志賀の方が驚愕の表情を浮かべたのだった。

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