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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
終幕『道化師に憧れた僕が自分の病を治したあと』
148/150

邂逅

 三人が後片付けを終え劇場から出てくると、話していた打ち上げに向かうため繁華街の方へと足を進めた。

「そういえば、最近(かなめ)センパイを見ねぇんだけど、心奏(しおん)は何か知ってっか?」

 羽音(ねお)が頭を掻きながら、まだ日が高く登った空を見上げながら心奏に尋ねると、心奏は考えるよう顎に手を当てた。

「ある日突然『旅行に行ってくる』って言って、うちに訪ねて来てから今まで帰って来てる気配はないね」

「じゃあ、約二ヶ月間は家を空けてるってこと?不用心すぎない?」

 心奏の話を聞いた響彩(とあ)がそう言うと、心奏は苦笑いを浮かべながら「でも、ほら」と続けた。

「伯父さんが、要くんの家に定期的に行ってるらしいから、問題はないんじゃないかな?」

 心奏の言葉に響彩は呆れたように目を細めたが、羽音は話を理解していないのか、二人の顔を交互に見てポカンとしていた。

「それはセンセイが気を使ってるんでしょ。あの先輩、本当に人任せなんだから」


「誰が人任せじゃって?」

 突然背後から聞こえた声に三人は驚き、後ろを振り返ったが、その際に心奏の三つ編みが背後の人物に直撃した。

「いだッ!」

 そんな情けない声と共にしゃがみ込んだ人物を見た心奏は目を丸くした。

「要くん!大丈夫……?」

 心奏達が振り返った先には、顔を抑えてしゃがんでいる志賀(しが)の姿があった。

 志賀は指の間から心奏達を見上げると、そのままスッと立ち上がり、横一列に並んでいた三人を抱きしめた。

「久しぶりじゃのう、三人共。元気にしておったか?」

 志賀の思わぬ行動に、心奏は目を丸くして微動だにしていなかったが、羽音と響彩は必死に志賀から離れようとジタバタしていた。

「元気だったから離してくれ!体制がキツいんだよ!」

 羽音がそう叫ぶと、志賀はやっと三人を離した。

「僕も元気だったよ。要くんは……大丈夫?僕の髪当たったでしょ?」

「志賀先輩が驚かせるのが悪いんだもの。自業自得よ」

 心奏が自身の三つ編みに触れながらそう言うと、響彩が視線を志賀に向けて冷たく言い放った。

「そんなに年寄りを虐めないでおくれ。わし、悲しい」

 そう言って泣き真似をする志賀に、羽音は軽蔑するかのような冷たい視線を向けボソッと呟いた。

「あんた、前の誕生日で二十一になったばっかりだろ……」

 羽音の呟きも虚しく、志賀は気にすることもなく心奏達に話しかけるのだった。


「で、志賀先輩は二ヶ月間もどこに行っていたの?」

 響彩が志賀の話を遮るように尋ねると、志賀はフフンとどこか自信あり気に笑うと、ポケットから地図と思われる紙を広げて三人に見せた。

「これ、アメリカ?」

 心奏がそう尋ねると志賀は大きく頷いた。

「国内じゃなかったのかよ」

 羽音が読めない英語に八つ当たりするようにそう言い捨てると、志賀は地図を折り畳みポケットに入れ込んだ。

「そうじゃ、わしはアメリカにいたんじゃ。やりたい事があってな」

「やりたいこと?」

 志賀の言葉に心奏が首を傾げると、志賀は微笑んで心奏の手を取った。

「少し見せたいものがあるんじゃ、ついて来ておくれ」

 心奏を連れ繁華街とは逆方向へ進む志賀の後を、羽音と響彩は呆れながらも渋々といった様子でついて行くのだった。

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