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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第七幕『devil's disease』
145/150

また合う日まで

 劇場である教会からの帰り、空港に向かうバスで、心奏(しおん)は隣に座ったヴィネと話していた。

「ヴィネはこれからどうするの?」

 心奏の問いに、ヴィネは首を傾げて考えるように顎を触ったあと、バスの天井を見つめた。

「また、旅をするだろうな。他に苦しんでいるやつらも救ってやりたいしな」

 ヴィネの言葉に心奏はフッと微笑んで、自身もバスの天井を見つめた。

 そして、小さく呟いた。

「また、離れ離れになっちゃうね…」

 心奏の言葉にヴィネは驚いたように目を見開き、バッと心奏の方に顔を向けたが、心奏の表情を見て目を伏せた。

「完全に会えなくなる訳じゃない。今度はオレからアンタに会いに行ってやる。だから、自分の夢を簡単に諦めないでくれよ?」

 ヴィネはそう言ってニッと笑う。

 それを見た心奏は呆れたように微笑みながらも、コクコクと頷いた。


「それで、アンタはどうするの?」

 後ろの席で響彩(とあ)千凜(せんり)に向かって尋ねていた。

 千凜はいつもの微笑みを浮かべると困ったように首を傾げた。

「ジブンも世界を飛び回るつもりですよ。皆さんとの劇は楽しかったですが、いつまでも皆さんといるのは忍びないですから」

 千凜がそう答えると、それまで黙って聞いていた志賀(しが)がフムと考えるような動作をしたあと、パンッと手を叩き合わせた。

「わしも世界を旅して見ようかのう?」

「「「え⁉」」」

 志賀の一言に心奏、羽音(ねお)、響彩が驚きの声を上げ、最後列に座っていた志賀の方を見た。

 声を上げなかった夏目(なつめ)でさえ驚きで言葉を失っている。

「なんじゃ、そんなに意外か?」

 志賀が不貞腐れたように頬を膨らませてそう言うと、羽音が違うと言うように手を振りながら口を開いた。

(かなめ)センパイは、面倒ではあったけどずっとオレ達の側にいたし、これからもそうだと思ってたんで」

 羽音の言葉に志賀は苦笑すると、口元に手を当てながら声を上げて笑った。

 そして、愛おしそうに三人を交互に見ると目を細めた。

「では、もう少しお主達を見護ろうとするかの」

 そう言った志賀は、これまでとは比べ物にならないほど、幸せそうな笑みを浮かべていた。


 暫くすると空港に着き、バスが停まった。

 ゾロゾロと荷物を持ってバスを降りる心奏達を横目に、志賀がヴィネに話しかけた。

「お主、次はどこに行くつもりなんじゃ?」

 腕を組んで柱に凭れかかっていたヴィネは、目を伏せて考えたあと人差し指を立ててクルッと円を描くように回した。

「あと数日はここらへんにいる。その後はアフリカの方へ行こうかと思ってる。あっちは悪魔の病どころか、普通の病気ですら治すのが困難だからな。医者として普通の病気を治しながら、悪魔の病の患者も見つけようかとな」

 その言葉を聞いた志賀はカッカッカッと声を上げて笑うと、肘でヴィネを突きニヤッと笑った。

「その図太い神経、わしは好きじゃぞ」

 驚いて目を丸くしていたヴィネだったが、スッと志賀の顔の前に遮るように手を出すと、至って真面目と言うように口を開いた。

「オレにそういう趣味はない」

 それを聞いた志賀は目を丸くしたが、意味が分かるとヴィネの手を払い除けて怒りの籠った笑みを顔に貼り付けた。

「わしもそういう趣味は持っとらんわ!」

 ギャアギャアと騒ぐ志賀と、冷静に対応するヴィネを見て心奏と千凜はフフッと微笑み、羽音と響彩は呆れてため息をつくのだった。

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