表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第七幕『devil's disease』
142/150

演劇『ゲンジツは?(2)』

 天使の叫びも聞かず、悪魔は寝かされた少女の顔を見下ろすようにしゃがみ込みます。

 悪魔は少女を暫く観察すると人差し指を立て、その長い爪で少女の腹辺りにグルッと小さな円を描きました。

 その円は淡く光ると小さな黒い物体が少女の身体から出てきました。

 その物体が出たあと少女の呼吸は落ち着き、次第に顔色も良くなっていきました。


千凜(せんり)「どうしたの?」


 少女がそう呟くと、少年はハッとしたように少女を見つめました。

 顔色も良くなり、まるで健常者になったかのような少女を見て、少年は思わず少女に抱きつきました。


羽音(ねお)「良かった。良かった!姉さんが元気になった!」


 目に涙を浮かべながら笑う少年の言葉に、少女も微笑むと少年の背中に回す腕に力を込めました。

 少年と少女は一頻り喜びあったあと、マリア像に向き直り「ありがとうございます」と祈って教会を去っていきました。

 一部始終を見ていた天使は悪魔の持つ黒い物体を見ながら尋ねました。


響彩(とあ)「先程のは一体……?」


 悪魔は黙っていましたが、黒い物体を手で握り潰すと真っ黒に染まった手を天使に見せながら、軽蔑するような視線で天使を見つめました。


心奏(しおん)「お前ら天使や神はただ祈るだけ。人々の願いなど、安泰など構いもしない。オレは人々の支えになり、願いを叶えられる存在でありながら、何もしないで、ただ漠然と祈るしか能のない奴が一番大ッキライだ」


 悪魔はそう言うと、頭の上に真っ黒になった手を翳しました。

 すると、どこからともなく小さな黒み掛かったボロボロのリングが悪魔の手元に現れ、悪魔はそのリングを手で掴むと、その真っ黒な何かをリングに塗りました。

 悪魔は真っ黒に染まったリングから手を離すと、リングは跡形もなく消えていました。

 天使はそれが何か分かったようで、目を丸くしていましたが、悪魔は天使の反応などどうでもいいかのように、天使へ背を向けました。


心奏「まぁ、オレも最近まで()()()()だったけどな……」


 悪魔はそう呟くと、教会をあとにしました。

 その後、とある教会は願いを叶えてくれる教会として有名になりましたが、少女が奇跡を起こした後、どんな願いも叶うことはありませんでした。

 天使は悪魔が居なくなった教会で一人マリア像を見つめていました。


響彩「神様。私は貴方がとても尊い存在だと信じ、これまで祈って来ました。しかし悪魔の方が人々をより観察し、その願いを叶えておりました。私は……誰を信じ、敬えば良いのでしょうか?」


 そう言った天使のリングには少しヒビが入り、黒く影を落としておりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ