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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第七幕『devil's disease』
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演劇『ゲンジツは?(1)』

 とある教会。

 一人の天使が聖母マリア像に向かって祈っていました。

 その教会の扉を乱暴に開ける者が一人。

 天使が顔を向けると、そこにはつまらなそうにチャーチベンチに座り、マリア像を睨んでいる一人の悪魔が居りました。


響彩(とあ)「貴方も祈りに来たのですか?」


 天使の問いに答えることなく、悪魔は未だマリア像を睨んでいました。

 そんな悪魔の様子に天使は落胆して、またマリア像の尊顔に向き直りました。

 しかし、そこには先程まで腰掛けていた悪魔の顔がありました。


心奏(しおん)「どうして、神が全て見ている訳でもないのに祈るんだ?意味が分からん」


 悪魔の言葉に天使は目をパチパチとさせていましたが、天使は微笑むと手を握り合わせ祈るように目を伏せました。


響彩「神様はいつだって私達のことを見てくださっていますよ。今このときも」

心奏「ハッ、嘘だな。見てくれているなら、この世がこんなに醜い訳がない。地獄より地獄的じゃないか」


 悪魔は鼻を鳴らすと、天使を蔑むように見下ろして言いました。

 その時、教会の扉を開けて一人の少年が入って来ました。

 少年は天使と悪魔が見えていないかのように、マリア像の前まで来ると膝を付き、懇願するように握った手を上に上げました。


羽音(ねお)「神様、どうかお願いです。俺の姉の病気を治してください。もう、あんな姉は見たくありません。どうか、どうか…………お願いします」


 少年はそう言うと立ち上がり、もう一度祈るような仕草をしてから教会を出ていきました。

 そんな少年を見て、悪魔はまたつまらなそうに目を細めました。


心奏「そんなもの叶う訳がない。病気なんて、神頼みで完治するはずがないんだ」

響彩「さて、それはどうでしょうか?彼の願いを神様は聞き届けてくださるかもしれませんよ」

心奏「ハハッ。そうだったらオレも神に祈ってやるよ。絶対にあり得ないがな…」


 数日後、天使と悪魔がまた教会に集まっているとき、あのときの少年が少女を抱えて教会に入って来ました。

 少女は肩で息をしていていかにも苦しそうです。


羽音「神様、お願いです。どうか、どうか!姉の病気を!」


 少年は少女をマリア像の前に寝かせてそう叫びますが、少女の容態は変わらず少年の声が教会に響いただけでした。

 それを見かねた悪魔は少年と少女の近くまで歩いていきました。


響彩「何をしているのです!」

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