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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第七幕『devil's disease』
138/150

もう一人の患者

「なんで(かなめ)くんはヴィネを狙うの?」

 心奏(しおん)の言葉に志賀(しが)は拳銃を下ろすと、一冊の本を取り出して心奏達の方へ投げた。

 バサッという音と共に目の前に落ちた本を心奏は拾うと、パラパラと中身を見ていった。

 中身はヴィネの手記(にっき)らしく、研究の過程や結果、病に対することがしっかりと書き記されていた。

 心奏はとあるページに目を向けると、ページをめくる手を止めた。

「devil's dise(悪魔の病)ase……」

 そう呟く心奏の視線の先には、心奏が患っていた病の名前や病状が書かれていた。


 『devil's disease、通称・悪魔の病。』

・心拍数が著しく少なくなり、その分長生きになる病気。

 見た目はだいたい十〜二十代程から変わらなくなる。

・ほとんどの人は心拍数に身体がついていけなくなり短命だが

 ゆっくりと病状が進行する人もおり、そういう人達は約五十

 年ほど生きる。

・現在病気に対応しているのは自分のみであり、正確に何年ほ

 ど生きるのかは不明。


 心奏がそこまで読んだとき、ヴィネが後ろから手記を取り上げ、パタンとページを閉じた。

「これを見たからといって、オレを狙う理由はねぇだろ」

 確かにそうだった。

 ヴィネが病について詳しく、研究についての知識や出来た薬を持っていたとしても、それは全て志賀には関係ないのだから。

「薬は?もう無いのか?」

 ヴィネの言葉には答えず、志賀は淡々と言葉を発する。

 そんな志賀の様子に嫌気が差したのか、ヴィネは心奏の肩に手を置いて人差し指だけを立てた。

「アンタの知り合いの心奏が飲んだよ。その小瓶に入っていたのが最初で最後の薬だからな」

 ヴィネは志賀の足元に転がっている小瓶を一瞥して志賀を見る。

「さっきから気になってたが……」

 志賀を指差し、ヴィネは言葉を続ける。

「アンタも患者だろ」

 心奏が驚いて志賀の方に視線を向けると、志賀は目を見開いてヴィネの方を見つめていた。

 志賀の口元が震え、拳銃を握る手もいつからか震えていた。

「話を聞いてりゃ心奏のことを想うフリして、自分のことばっかり。心奏の病を調べ始めたのも、アンタの身体の不調が原因か?」

 そう言った瞬間、パンッという音と共にヴィネの頬を何かが掠った。

 ヴィネの頬から血が滴る。

「ハッ。図星かよ」

 ヴィネが煽るように笑うと、志賀がキッとヴィネを睨んだ。

 しかし、それを遮るように心奏がヴィネの目の前に立つ。

「要くんが本当に僕と同じ病を患っているのかは分からないけど、要くんがやっていることは間違ってるよ」

 心奏がそう言うが、志賀の耳にはもう届いていないようで、心奏越しにずっとヴィネを睨み続けている。

「ほら。受け取れよ」

 そのとき、ヴィネが志賀に向かって先程よりも少し大きな小瓶を転がした。

 中には真っ赤な液体が入っている。

 志賀は足元に転がってきた小瓶を拾うと、蝋燭の灯りに照らすように掲げた。

「これは?」

 志賀がヴィネに探るような視線を送ると、ヴィネはニヤッと笑って志賀の足元に落ちているもう一つの小瓶を指差した。

()()()()()()()はその小瓶一杯って言ったろ?」

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