表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第陸幕『エクスピアシオン』
128/150

教会デノ騒動

 この教会に足を運ぶようになって、そろそろ一ヶ月が経とうとしていた頃だった。

 研究もそろそろ大詰めといったところまで進み、今日もオレは教会のチャーチベンチに道具を広げて研究を進めていた。

「ボクも昔は研究をしていましたが、ここまで複雑な研究は初めて見ました」

 シオンがベンチの背に身体を預けるようにして、オレの研究を覗き見ながら呟いた。

「オレもこれが初めてだよ。こんな大掛かりな研究」

「へぇ。ヴィネもこれが初めてなんですね」

 シオンの言葉にオレは頷く。

 暫くそのまま見ていると、煮詰めていた液体の下で燃えていた火が消え、液体の沸騰も落ち着き出す。

 オレがその液体を慎重に小さな小瓶に移していると、シオンが不思議そうにその小瓶を見つめた。

「不思議な色ですね。それ」

 オレが持つ小瓶に入った液体は確かに不思議な色をしている。

 マゼンタとシアンが混ざったような、それでいてパープルとは違う摩訶不思議な色。

「そうだな。しかし、これはアンタの血と薬品が混ざったような色だ。つまりは、アンタの色と言っても過言ではない」

 オレの言葉にシオンはポカンとしていたが、口元に手を当てるとクスッと笑った。

「それは過言ですよ。ボクの色がそんなに綺麗な訳ないですから…」

 クスクスと笑うシオンの無邪気な笑顔に、オレは持っていた液体をシオンの横に並ぶように小瓶を動かす。

「いや、過言じゃねぇよ……」

「えっ……?」

 オレの呟きに、聞こえていなかったのだろうシオンが目を丸くして、オレの瞳をいつもの雰囲気とは違うしっかりとした目で見つめ返していた。

「何でもねぇよ」

 オレは微笑んでそう言ったが 、シオンはオレを見つめたまま首を傾げていた。

 そんなシオンを横目に、オレはマゼンタとシアンでマーブル柄のようになっていて、所々混ざりパープルになっている液体が入る小瓶をクルクルと回したのだった。


 それから暫くして辺りも暗くなり、シオンが蝋燭に火を点けていた。

 オレも今日の研究を終わらせ、鞄に道具を詰め込んでいたとき、シオンがビクッと身体を震わせて急いでオレに駆け寄ってきた。

 その瞬間ドンッという音と共に、教会の扉が開かれ数人の銃を装備し武装した集団が教会の中へ入ってきた。

「何事ですか!」

 シオンがオレを庇うように立つと、武装した集団に対峙した。

「不審者が教会に入っていった。との報告を受けてね」

 武装した集団の中のリーダーらしき人が前に出ると、シオンを一瞥したあとに、床に鞄を抱えて座り込んでいるオレに鋭い視線を向けた。

「その方は?」

 奴がオレを見据えてシオンに尋ねると、シオンはオレを一瞥してその人に向き直った。

「ワタシ専属のお医者様です。最近は体調が悪いことが多くて来てもらっていたんです」

 シオンは奴を睨むように見つめ返して、続けて口を開いた。

「ワタシがどうなっても良いのなら、彼を連れて行くといいですよ。もっとも、本来村を守るべきガードであるアナタ方が、ワタシを見殺しにすることを村の人達がどう思うかは知りませんが」

 その言葉に腹を立てた一人の若い男がシオンに向かって銃を向けたが、奴が手で遮るようにしたため、若い男は銃を下ろした。

「これは失礼しました。我々の聞き間違いだったようです。それでは失礼します」

 そう言うと奴は集団に声をかけ、背を向けて教会を出ていった。

 だが、奴の目に怒りの炎が灯っていたことをオレは見逃さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ