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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
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演劇『魔法使いブレイヴ(2)』

 塔の奥には大きな階段があり、それは上へと繋がっているようでした。

 階段を登り広い通路を暫く進むと、見上げるほど大きな扉の前に辿り着きました。

 魔法使いはその大きな扉をコンコンとノックします。

 突然の事に騎士は驚き、あたふたと扉と魔法使いを交互に見ました。


心奏(しおん)「何をしてるんですか⁉」

響彩(とあ)「扉を開ける前には、ノックをするのが常識でしょう?」

心奏「それはそうですが…!」


 扉の前で魔法使いと騎士が言い争いをしていると、大きな扉がギーと音を立てながら開きました。

 その扉の先には椅子に堂々と座る、魔王がいました。


羽音(ねお)()()が、今回の“ブレイヴ”か?」

響彩「私のみがブレイヴと、なぜ分かったのですか?」


 魔法使いの純粋な疑問に、魔王は鼻で笑い、騎士に向かって手招きをしました。

 騎士は魔王の元へまっすぐ歩いていきます。


響彩「僕を騙したのですか⁉」

心奏「半分は……ね」


 騎士が魔王の手を取ると、二匹のフクロウが魔王の後ろから飛び出し、魔法使いの周りを飛び回りました。


ロボット1「コイツハ魔王様ガ連レテ来タノヨ」

ロボット2「魔王様ノ手伝イヲシテルンダ」


 二匹のフクロウがカタカタと笑いながら、騎士の方に飛んでいきました。

 騎士が腕を伸ばすと、二匹のフクロウが並んで留まります。


心奏「私が孤児院にいた事は事実ですよ。それよりも貴方様はこれまでブレイヴに選ばれた人々がどのような人達か知っていますか?」

響彩「……いいえ」


心奏「罪を犯した人々。ですよ」


 騎士はニコニコと笑う一方、魔法使いは話の概要が分からず、ポカンとしています。

 すると、魔王が懐から一枚の手紙を取り出し、魔法使いに見せました。

 その手紙には見覚えのある印が押してあるのを、魔法使いは見逃しませんでした。


響彩「それは……」

羽音「世界の平和を保つためには”魔王”でいるしかなかったのだ」


心奏「そして、貴方様がそれを終わらす存在なのです」

響彩「……えっ?」


羽音「魔王はもう必要ない。だからこそお主が我を討ったと。そう大国に伝えるのだ」

響彩「ちょっと待ってください!あなたは何も悪い事をしていないんですよね⁉なのに……」


 魔法使いは持っていた杖を床に落とすと、魔王の方へ一歩踏み出します。

 魔王も騎士も動じません。


羽音「どの世界にも”悪者”は必要なのだ」


 魔王の言葉には、他にはない重みがありました。数年もの間、世界の悪者として君臨してきた魔王には。

 魔法使いはそれ以上何も言えず、騎士とフクロウ達に連れられ塔の門まで戻ってきました。

 魔法使いは杖をギュッと握りしめます。

 その時、二匹のフクロウは魔法使いの左右の肩それぞれに留まりました。


心奏「貴方様はとても心が綺麗なのですね。魔王様の擁護をするだなんて。だから大国も貴方様を最後のブレイヴにしたのでしょうね」


 騎士は魔法使いの方をまっすぐに見つめ、そして出会った時のように魔法使いの前に跪きました。


心奏「そんな貴方様だからこそお願いがあるのです。もうここには足を運ばず、貴方様の好きなように生きてください。魔王、いや()()()()様の分まで……」


 騎士はそう言って微笑みました。

 その行動に魔法使いは俯き、肩を震わせています。


心奏「これは僕らとの約束ですよ…」


 騎士の言葉に魔法使いは頷きます。

 そして、魔法使いは大国で『魔法使いブレイヴ』として後世に名を残したのでした。

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