参加。不参加
「第一回!神garuについて行く人を決めよう会議ー!」
志賀がソファから立つと、勢いよく手を上げて叫んだ。
その正面に座っていた羽音と響彩は呆れたような瞳で志賀を見つめ、心奏は苦笑いを浮かべながら志賀を見つめていた。
「これ、ジブン居る意味あります?」
心奏達が座るソファの後ろに立っていた千凜が心奏の耳元で呟いた。
それに対し羽音と響彩は軽く首を横に振りながらため息をつき、心奏は苦笑いで首を傾げた。
「ぼくは神々くんの担当医ですので、ついて行かなければいけません」
志賀の隣でソファに座っていた夏目が手を軽く上げて言った。
すると、志賀がコクコクと頷いた。
「そうじゃな、夏目は決定じゃ。次に発言のある者はおるか?」
志賀がそう言うと、響彩が手を渋々といった様子で上げた。
その瞬間、部屋の全ての視線が響彩に注がれる。
志賀がどうぞと言うように手を差し向けると、響彩は機嫌が悪そうに志賀の逆隣に座る人物を指差した。
「なんでお兄ちゃんが居るわけ?」
志賀の逆隣には響彩の兄である望歩が座っていた。
名を呼ばれた張本人である望歩はニコニコと笑いながら響彩を見つめている。
「一応、草柳君や天野君のご家族にも連絡しといたんじゃ。草柳君の所は頼みますと言われたが、天野君のお兄さんはついて行きたいと立候補したのでな」
志賀の言葉を聞いて望歩はウンウンというように首を縦に振った。
その一方で響彩は嫌そうだった顔をさらに歪めた。
「……他に言いたいことがある者は?」
場の空気が少し悪くなったことを感じた志賀は、話を切り替えるかのように言った。
「俺は仕事で行けない。それと、心奏の後ろにいる伊桜という人は演劇に関わっているから行かなければならない」
志賀の後ろで立っていた修治が声を上げ、それに同調するように千凜が激しく頷いた。
「では、修治殿は不参加。伊桜殿は参加っと。他に意見がある者はおらぬか?」
志賀がそう言うと、次は望歩が手を上げた。
「俺も参加したい。もちろん参加費は自分で出す」
「駄目!お兄ちゃんは会社のことがあるでしょ。それはどうすんのよ」
望歩の発言に響彩が反論すると、望歩は笑って一枚の紙を懐から取り出して、皆が見えるように机の上に広げた。
その紙は休暇申請書と書かれており、内容などは全て記入されていた。
「ちゃんと対応するよ。それに唯一の肉親である響彩の初海外公演だよ?行きたいに決まってるだろ?」
望歩の『唯一の肉親』という言葉を聞いて響彩は怯んだように俯いた。
二人のやり取りを見ていた志賀は、どちらも口を開こうとしないことを確認し声を上げた。
「では、天野君のお兄さんは参加ということで良いか?」
志賀の言葉に望歩は大きく頷き、響彩も渋々といった様子で頷いた。
「じゃあ、そういうことでな。もちろん!わしも参加じゃ」
志賀はそう言うと、一枚の紙を出してきて机に広げた。
皆が一斉にそれを覗き込むと、そこには参加と不参加の文字と表のようなものが書いてあった。
そして志賀はその参加の文字の下に自分の名前を記入すると、心奏にペンを渡して紙を心奏の方に向けた。
心奏が参加に記入し羽音や響彩、千凜と順番にその場にいる人が記入し終わると、再度羽音の前に紙が置かれた。
「なんだよ。書いたろ?」
「お主の家族の名を不参加に書いておくれ。わしらはちゃんと名前を知らんからな」
志賀の言葉に羽音は、呆れたようにため息をついて「なんでオレが……」と呟いたが渋々家族の名を記入したのだった。
 




